フードバンク 概要

フードバンク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/07 15:20 UTC 版)

概要

食品メーカー外食産業などでは、品質には問題がないものの、包装不備などで市場での流通が困難になり、商品価値を失った食品が発生する。従来は廃棄されていたこうした食品の提供を原則として無償で受け、生活困窮者を支援しているNGONPO等の市民団体を通じて野外生活者児童施設入居者DV被害者保護施設入居者低所得世帯生活保護世帯ひとり親世帯などの生活困窮者、子ども食堂に供給する。消費期限切れなど品質に問題のある食品は対象としない。提供を行う企業にとっては、廃棄に掛かる金銭的な費用を抑制できるだけでなく、食品ロスを削減しつつ福祉活動に貢献しているという面でCSRの取り組みともなり、企業価値の向上にもつながる[4]

歴史

社会学の教授、ジャネット・ポッペンディックによれば、アメリカ合衆国飢餓1960年代には既に解決されている問題であった。しかし1967年アリゾナ州フェニックスのスープキッチンでボランティア活動をしていたジョン・ヴァン・ヘンゲル英語版は、ボランティア先のシングルマザーから、まだ食べられる食品がスーパーマーケットで大量に廃棄されていることを知った。ヴァン・ヘンゲルはスーパーにこうした食品を寄附してもらうよう交渉するとともに、地元のキリスト教会に食品を備蓄する倉庫を貸してくれるよう頼んだ。こうして1967年に倉庫を提供した教会の名を採り、世界初のフードバンクである「セントメアリーズフードバンク」が誕生した。その後、農家から収穫したものの残った農作物の寄附を受け、1976年に「セカンドハーベスト」を設立。セカンドハーベストは後にフィーディングアメリカ英語版に名を変え、全米の約200のフードバンク団体を統轄する組織となっている[5]

そして早くも1980年代には、フードバンクはアメリカ合衆国から世界へと広がり始める。そのうちヨーロッパ初のフードバンクが1984年フランスにでき、1990年から2000年代前半に南アフリカ、アフリカ、そしてアジアで設立されていった[6]。2007年には The Global FoodBanking Network が組織化された[7][8]

アメリカ合衆国

イリノイ州シカゴ郊外には広大な物流センター「グレーターシカゴ・フードデポジトリー」があり、2007年実績で1万8千トン、1日あたり8万4千食分の食糧が供給された。冷蔵車を使い、レストランやホテルなどから日持ちしにくい食材の提供も受けている。連邦法であるビル・エマーソン食糧寄附法英語版により、善意で寄附した食品が元で万一トラブルが発生した場合でも、故意や重過失がない限り寄附した側は法的責任が問われない旨定められている。税法上でも、現物寄附の場合には原価の2倍までの控除が受けられる優遇策が設けられている。しかし近年[いつ?]は、以前まで寄附の対象となっていた食品が「わけあり商品」として寄附に回らずに通販などで流通したり、食料価格の変動で政府からの寄附が減るなどの問題に直面している。


  1. ^ NeighbourFood(ネイバーフード) - フードバンクとは?”. sites.google.com. 2023年7月10日閲覧。
  2. ^ フードバンク支援の取り組みについて | マルアイ”. 2023年7月10日閲覧。
  3. ^ フードドライブ実施の手引き環境省
  4. ^ 『日経スペシャルガイアの夜明け』2007年3月27日放送 テレビ東京
  5. ^ アメリカフードバンク事情 第三回 活動内容・実績 セカンドハーベストジャパン[リンク切れ]
  6. ^ アーカイブ 2010年2月4日 - ウェイバックマシン
  7. ^ アーカイブ 2011年10月15日 - ウェイバックマシン Retrieved June 20, 2012.
  8. ^ Patricia Sullivan (2005-10-08). "John van Hengel Dies at 83; Founded 1st Food Bank in 1967". Washington Post. Retrieved 2012-08-30.
  9. ^ 「もったいない」を「ありがとう」に フードバンク運動日本で広がる J-CASTニュース、2008年8月27日付、2009年8月21日閲覧。
  10. ^ 団体の歴史 セカンドハーベスト・ジャパン
  11. ^ 一般社団法人全国フードバンク推進協議会「フードバンク活動の現状と課題」令和元年11月25日 消費者庁
  12. ^ 特集・食SOS!フードバンクのいま」『ビッグイシュー日本版 第321号』p.7
  13. ^ 週刊英和新聞Asahi Weekly (朝日ウイークリー) 2023年5/21号 (発売日2023年05月19日)”. 雑誌/定期購読の予約はFujisan. 2023年7月10日閲覧。
  14. ^ #4 フードバンクが正しいというのは間違い?”. Meiji.net(メイジネット)明治大学. 2023年7月10日閲覧。
  15. ^ フードバンクかながわ/ご利用案内_お守りいただきたいこと”. www.fb-kanagawa.com. 2023年7月10日閲覧。





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