パルムの樹
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/11 00:31 UTC 版)
概要
本作は、『AKIRA』などの作画監督で知られるアニメーター・なかむらたかしが監督を担当したオリジナル長編アニメ映画である[1][4]。
構想に7年、制作に3年半をかけて長編アニメ映画として完成した[5]。当初はテレビシリーズ用として企画されたが、諸事情でタイトル変更を余儀なくされるなど、紆余曲折を経て劇場公開にこぎつけた[2][5]。
異世界を舞台に、人間になりたいと願うロボット人形の少年の揺れ動く感情を丁寧に描いた長編ファンタジーで、彼と他のキャラクター達によるドラマが重層的に展開される[1][2]。一見するとキャラクターや美術設定などからファミリー向けの冒険ファンタジーのエンターテインメント作品のように思われるが、実際は異なる。なかむらが「最初はアクションあり冒険ありの楽しいエンターテインメントを作るつもりで始めても、きれいにまとまっているものよりもたとえ荒削りでも中心に何か本質を掴むようなものがある作品を選んでしまう」と語っているように、本作の描写に甘さは一切なく、彼は「生きることの辛さ」「満たされない想い」「エゴ」といったものと正面から向き合って物語を紡いでいる[1][2]。しかし、単純に悲惨な話でもなければ徹底したペシミズムで作られているわけでもない[1]。むしろ悲惨なだけの悲劇の物語であったなら、逆に観客にも容易に受け入れられたであろうが、それほど単純な作品ではない[1]。「観客が作品世界に行って、登場人物と何かを解決することによって、現実世界で立ち直ることができる。そういったものとして、ファンタジーをとらえたい」と語っているように、なかむらはファンタジー作品を病気になって休む体験に近いものとして考えて「ファンタジーこそが現実と向き合っていくための精神的な支えになる」という発想で作っている[1]。
エンターテインメントに収まらず、深いテーマを追求した内容は、大きく評価が分かれた[2]。個性あるキャラクターデザインや作画、背景美術のレベルの高さにより、一部ファンの間では根強い支持があったものの、公開当初はさほど話題にならなかった[4]。しかし、公開から2年半後の2004年11月に米・サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)の注目の映像を取り上げる企画『The Seventh Art』で上映されたり、2005年1月14日からテキサス州ヒューストンのライス・シネマでのプレミア公開を皮切りにボストン、サンフランシスコ、ナッシュビル、ハートフォード、ポートランド、オースティンといった都市部を中心とした限定公開が行なわれる[注 1]など、作品そのものの評価は高い[2][4]。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g “010 なかむらたかし監督の『パルムの樹』と『寫眞館』”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2013年10月15日). 2022年2月15日閲覧。
- ^ a b c d e f “ジャパン・アニメーションの旗手たち⑧なかむらたかし”. ファンタジックチルドレン公式サイト. 日本アニメーション (2005年1月31日). 2022年2月15日閲覧。
- ^ “パルムの樹”. ジェンコ. 2022年2月15日閲覧。
- ^ a b c “パルムの樹 米国で劇場公開”. アニメ!アニメ!. イード (2005年1月7日). 2022年2月15日閲覧。
- ^ a b “『パルムの樹』”. 『パルムスタジオ』公式サイト. 2008年1月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月15日閲覧。
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