ハナ子さん ハナ子さんの概要

ハナ子さん

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/02 04:13 UTC 版)

ハナ子さん
監督 マキノ正博
脚本 山崎謙太
小森静男
原作 杉浦幸雄
製作 東宝
出演者 轟夕起子
灰田勝彦
高峰秀子
音楽 鈴木静一
主題歌 轟夕起子『お使ひは自転車に乗つて』
撮影 木塚誠一
編集 畑房雄
配給 映画配給社紅系
公開 1943年2月25日
上映時間 71分
製作国 日本
言語 日本語
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原作は杉浦幸雄が雑誌『主婦之友』に連載していた漫画『ハナ子さん一家』。

概要

『ハナ子さん一家』は1938年9月号より『銃後のハナ子さん』のタイトルで連載開始[1]した、中流家庭の夫婦・ハナ子と五郎を主人公とする家庭漫画で、夫の両親や、出征した夫の兄の妻との共同生活をほがらかに描き、『主婦之友』を発行部数160万部超[1]の人気雑誌にすることに貢献した。ストーリー上でハナ子が出産したのを期に、『ハナ子さん一家』へ改題。原作は1944年に一旦終了したのち、戦後に再開し、映画と同じタイトルの『ハナ子さん』と改題して1949年まで続いた。

主演の轟夕起子は、もともと原作のハナ子のキャラクター造形のモデルだった。轟主演の『爆音』を観た原作者が、轟のもんぺ姿に強い印象を感じ、婦人雑誌の漫画の主人公に、その「いかにも楚々とした姿[1]」が適任と考えたためである。

戦意高揚映画の要素があり、軍歌・戦時歌謡の替え歌が多数登場する。多数の女性ダンサーによるレビューシーンなどに、当時の敵国・アメリカ合衆国のバーレスク映画の影響がある。当時の広告コピーには「明朗闊達な現代女性ハナ子さんとその一家を中心に銃後の女性の心意気を音楽―歌と踊り―と共に明るく描いた音楽喜劇[1]」と紹介されている。

一家が住む住宅は、原作の描写よりも豪華に造形され、「ご主人がサラリーマンなのに(略)とても豪邸[1]」となっている。原作者・杉浦は、当時の日本映画が海外占領地でも上映されていた事情を念頭に、「宣撫班がこういう映画を利用していたので、日本という国がとてもいい暮らしをしているように見せかけるため故意に立派な造りにしたようです[1]」と推測している。また、メインキャラクターのうち五郎の両親と兄の妻は、ストーリー展開上ハナ子の両親と兄の妻に設定が変更されている。

ラストシーンには原作のエピソード(『主婦之友』1941年9月号)である夫・五郎の出征が描かれた。監督のマキノ正博(マキノ雅弘)が戦後に原作者に語ったところによると、おかめの面をかぶったハナ子が、涙を隠して夫におどけてみせる、という原作のシークエンスをどうしても映像化したいために映画化を企画したものであったという[1]が、この部分は検閲のためカットされ、BGMが不自然に切れてしまっている。

ストーリー

東京郊外。ハナ子は馬術を趣味とするサラリーマン・桜井五郎と結婚。五郎の賞与日、夫妻は丸の内へ夕食へ出かけたが、五郎は賞与が現金でなく戦時債券で支払われたことを明かし、「お国のために無駄遣いはやめよう」と、外食を断念。その日以降、夫妻は食事や映画に出かける代わりに、隣組の少女たちとかくれんぼで遊んで時間をつぶす「かくれんぼつもり貯金」を考案して家計を節約し始めた。

そのうち、チヨ子の恋人・勇が復員。隣組の人達は、勇を祝って海岸へハイキングへ出かけ、ふたりのためにささやかな結婚式を開いた。そこへ、日独伊三国同盟締結を伝える新聞の号外が届く。参列者が「どうか『産めよ殖やせよ』で子宝部隊を作ってください」と挨拶すると、チヨ子は顔を覆って恥ずかしがった。

隣組が防空訓練を行った日の夜、敵機が来襲し、空襲警報が発令された。そんな中、ハナ子が男児を出産。隣組の人々が桜井家を取り囲み、万歳三唱で祝福した。

やがて、五郎に召集令状が届いた。思い出の馬術場で、五郎はハナ子におかめの面を見せ、冗談交じりに「お前だと思って戦地に持っていく」と告げた。ハナ子が「あなたに何かできることはあるかしら?」と問うと、五郎は「何でも好きなことをやりゃあいい」と言った。ハナ子は後頭部におかめのお面をかぶって踊り、五郎を笑顔で送り出した。


  1. ^ a b c d e f g 杉浦幸雄『わが漫画人生 一寸先は光』(東京新聞出版局、1995年)pp.103-109
  2. ^ 『わが漫画人生 一寸先は光』p.115
  3. ^ 「ビデオコレクション1982」1981年、東京ニュース通信社、「週刊TVガイド」臨時増刊12月2日号


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