ノルム線型空間 線型写像と双対空間

ノルム線型空間

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/23 05:08 UTC 版)

線型写像と双対空間

ノルム空間の間の写像で最も重要なのは、連続線型写像である。すべてのノルム空間とそれらの間のすべての連続線型写像を成す。

ノルムはそのベクトル空間上の連続函数であり、また有限次元線型空間の間の任意の線型写像は連続である。

二つのノルム空間の間の等距写像 (isometry) は、線型写像 f でノルムを保つものを言う(すなわち、‖ f(v) ‖ = ‖ v ‖ (∀vV))。等距写像は常に連続かつ単射である。ノルム空間 VW の間の全射等距写像は等距同型写像と言い、VW とは互いに等距同型であると言う。等距同型なノルム空間は実用上は同じものと考えられる。

ノルム空間について考えるとき、双対空間の概念に関する議論はそのノルムも勘案した意味で言う。すなわち、ノルム空間 V の双対空間 V′V から係数体(それは普通実数体 R または複素数体 C)への連続線型写像(この場合、線型写像のことを(線型)汎函数と言う)。汎函数 φ のノルムは、V の全ての単位ベクトル(ノルム 1 のベクトル)v に亙って取った |φ(x)|上限上限ノルム)として定義される。これにより双対空間 V′ はノルム空間となる。ノルム空間上の連続線型汎函数に関する重要な定理に、ハーン–バナッハの定理がある。

半ノルム空間の商

多くのノルム空間(特にバナッハ空間)の定義として、まずベクトル空間上に半ノルムを定義して、それから半ノルム 0 の元の成す部分空間による商空間としてノルム空間を作るという方法が見られる。例えば、Lp-空間

で定義される函数を半ノルムとする、右辺のルベーグ積分が定義されて有限となる函数全体の成す線型空間である。ただし、ルベーグ測度に関する零集合上にを持つ任意の函数は、半ノルム 0 である。そのような函数の全体は部分空間を成すが、その部分空間で「割って」しまえば、それらの函数は全て零函数に同値とすることができる。

ノルム空間の有限直積

n 個の半ノルム空間 (Xi, qi) が与えられたとき、ノルム空間としての直積空間は、ベクトル空間としては

は元ごとの和

とスカラー倍

で与えられる直積である。さらにその上に函数

を例えば

.

と定めれば、この qX 上の半ノルムとなる。これがノルムとなるための必要十分条件は、任意の qi がノルムとなることである。

より一般に、任意の実数 p ≥ 1 に対して半ノルム

を得ることができる。どの p についてもこの半ノルムから得られる位相空間は同じである。

初等的な線型代数学の直接的な議論により、自明な半ノルムを備えたノルム空間の直積空間として生じるノルム空間は有限次元半ノルム空間に限ることが示せる。その帰結として、半ノルム空間のより興味深い例や応用の多くは無限次元線型空間に対して起きる。


  1. ^ Callier, Frank M. (1991). Linear System Theory. New York: Springer-Verlag. ISBN 0-387-97573-X 
  2. ^ Kedlaya, Kiran S. (2010), p-adic differential equations, Cambridge Studies in Advanced Mathematics, 125, Cambridge University Press, ISBN 978-0-521-76879-5 , Theorem 1.3.6


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