ニコロ・パガニーニ 影響

ニコロ・パガニーニ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/23 07:36 UTC 版)

影響

ロマン派作曲家

フランツ・シューベルトはパガニーニがウィーンに来た際に、家財道具を売り払ってまで高いチケットを買って(友人の分まで奢って)パガニーニの演奏を聴き(ちなみに、この時にシューベルトが聴いたといわれているのが「鐘のロンド」を持つ『ヴァイオリン協奏曲第2番』である)、「天使の声を聞いた」と感激した。金銭に関して執着しないシューベルトらしい逸話である。この台詞は正確には「アダージョでは天使の声が聞こえたよ」と言ったものである。派手な超絶技巧よりもイタリアオペラに近い音色の美しさをとらえるシューベルトの鋭い感性も覗える。

またフランツ・リストは、初恋に破れ沈んでいた20歳の時にパガニーニの演奏を聞いて、「僕はピアノのパガニーニになる!」と奮起し、超絶技巧を磨いたという逸話もある(リストは『ヴァイオリン協奏曲第4番』を聴いたといわれている)。

その他

  • 1866年に、当時16歳で友愛数1184, 1210)を発見したニコロ・パガニーニは同姓同名の別人である。
  • 1985年に、パガニーニの子孫を名乗るスイス人のマーク・パガニーニ(ヴォーカル)によるドイツのヘヴィメタルバンド「パガニーニ」が結成されたが、音楽性は正統派のアメリカン・ロックであったという[4]

作品一覧

パガニーニは作曲家としても活躍し、数多くのヴァイオリン曲を残したが、極めて速いパッセージのダブルストップや左手のピチカートフラジョレット奏法などどれも高度な技術を必要とする難曲として知られている。パガニーニ自身は技術が他人に知られるのを好まなかったため、生前はほとんど自作を出版せず自分で楽譜の管理をしていた。

その徹底ぶりは凄まじいもので、自らの演奏会の伴奏を担当するオーケストラにすらパート譜を配るのは演奏会の数日前(時には数時間前)で、演奏会までの数日間練習させて本番で伴奏を弾かせた後、配ったパート譜はすべて回収したというほどである。しかも、オーケストラの練習ではパガニーニ自身はソロを弾かなかったため、楽団員ですら本番に初めてパガニーニ本人の弾くソロ・パートを聞くことができたという。その背景として、パガニーニ自身が無類の“ケチ”だったと言う事の他に、この時代は、著作権などがまだ十分に確立しておらず、出版している作品ですら当たり前のように盗作が横行していた為、執拗に作品管理に執着するようになったとする説もある。

このようにパガニーニ自身が楽譜を一切外に公開しなかったことに加えて、死の直前に楽譜をほとんど焼却処分してしまった上、彼の死後に残っていた楽譜も遺族がほぼ売却したため楽譜が散逸してしまい、大部分の作品は廃絶してしまった。現在では、無伴奏のための『24の奇想曲』や6曲のヴァイオリン協奏曲(元々は全部で12曲あったといわれ、第3番から第6番が見つかったのは20世紀に入ってからである)などが残されている。現存している譜面は、彼の演奏を聴いた作曲家らが譜面に書き起こしたものがほとんどだと言われている。また、同じ理由から弟子をカミッロ・シヴォリ一人しかとらず、そのシヴォリにも自分の持つ技術を十分には伝えなかったため、演奏の流派としてはパガニーニ一代で途絶えることとなってしまった。

パガニーニは、1800年から1805年にかけて表立った活動をやめ、ギターの作品を数多く作曲している。これは、フィレンツェの女性ギター奏者を愛人としていたためといわれている。

ヴァイオリン協奏曲

ヴァイオリンと管弦楽のための作品

  • ナポレオン・ソナタ 変ホ長調 MS 5 (1805-09年)
  • 魔女たちの踊り(ジュースマイヤーのバレエ『ベネヴェントのくるみの木』のアリアによる変奏曲) ニ長調 作品8, MS 19 (1813年)
  • ヨーゼフ・ヴァイグルの主題による変奏付きソナタ ホ長調 MS 47 (1818年頃)
  • ロッシーニのオペラ『シンデレラ』の「悲しみよ去りゆけ」による序奏と変奏曲 変ホ長調 作品12, MS 22 (1818-19年)
  • モーゼ幻想曲(ロッシーニのオペラ『エジプトのモーゼ』の「汝の星をちりばめた王座に」による序奏と変奏曲) ハ長調 MS 23 (1818-19年)
  • ロッシーニのオペラ『タンクレーディ』の「こんなに胸騒ぎが」による序奏と変奏曲 イ長調 作品13, MS 77 (1819年)
  • ヴァイオリンと管弦楽ためのポプリ MS 24 (1819年または1831年頃、紛失?)
  • 感傷的な堂々たるソナタ MS 51 (1828年)
  • ヴェニスの謝肉祭(ナポリの歌「いとしいお母さん」による変奏曲)イ長調 作品10, MS 59 (1829年)
  • 常動曲 ハ長調 作品11, MS 72 (1835年)
  • ヴァイオリンと管弦楽のための変奏付きソナタ イ長調『春』 MS 73 (1838年頃)

独奏曲

室内楽曲

  • ヴァイオリンとギターのための大ソナタ イ長調 MS 3 (1803-04年)
  • ヴァイオリンとギターのための6つのソナタ 作品2, MS 26 (1805-09年)
    • 第1番 イ長調
    • 第2番 ハ長調
    • 第3番 ニ短調
    • 第4番 イ長調
    • 第5番 ニ長調
    • 第6番 イ短調
  • ヴァイオリンとギターのための6つのソナタ 作品3, MS 27 (1805-09年)
    • 第1番 イ長調
    • 第2番 ト長調
    • 第3番 ニ長調
    • 第4番 イ短調
    • 第5番 イ長調
    • 第6番 ホ短調
  • ギター四重奏曲 (1806-20年、全15曲)
    • 第1番 イ短調 作品4-1, MS 28
    • 第2番 ハ長調 作品4-2, MS 29
    • 第3番 イ長調 作品4-3, MS 30
    • 第4番 ニ長調 作品5-1, MS 31
    • 第5番 ハ長調 作品5-2, MS 32
    • 第6番 ニ短調 作品5-3, MS 33
    • 第7番 ホ長調 MS 34
    • 第8番 イ長調 MS 35
    • 第9番 ニ長調 MS 36
    • 第10番 ヘ長調 MS 37
    • 第11番 ロ長調 MS 38
    • 第12番 イ短調 MS 39
    • 第13番 ヘ長調 MS 40
    • 第14番 イ長調 MS 41
    • 第15番 イ短調 MS 42
  • 3つの弦楽四重奏曲 MS 20 (1815年頃)
    • 第1番 ニ短調
    • 第2番 変ホ長調
    • 第3番 イ短調
  • ジェノヴァの歌『バルカバ』による60の変奏曲 イ長調 作品14, MS 71 (1835年)
  • カンタービレ ニ長調 作品17, MS 109 (1822-24年頃)

録音

20世紀前半の巨匠と呼ばれるヴァイオリニストでは、

などがラ・カンパネッラなどの作品を録音している。また、ウィリアム・プリムローズがヴィオラ奏者としてパガニーニ作品の録音を残している。

20世紀に「ヴァイオリニストの王」と称されたヤッシャ・ハイフェッツは、パガニーニの作品を全く演奏、録音しようとしなかった。その理由については諸説あるが、ハイフェッツ自身が明確な理由を公にしなかったので、現在もその真意は不明なままである。例外として、師であるレオポルト・アウアーによって演奏会用に編曲[5]された『24の奇想曲』の第13番、第20番、第24番と、若い頃に録音した『無窮動』の音源が現存している。

現在では『24の奇想曲』や『ヴァイオリン協奏曲第1番』、『ヴァイオリン協奏曲第2番』の「ラ・カンパネッラ」は、数多くのヴァイオリニストが録音をしている。なお、サルヴァトーレ・アッカルドが、ヴァイオリン協奏曲の第1番から第6番を始め、譜面が現存するヴァイオリンのための作品のほぼ全てを録音している。


  1. ^ 中野京子『中野京子と読み解く 名画の謎 対決篇』文藝春秋、2016年、84頁。ISBN 978-4-16-390308-8 
  2. ^ 『音楽と病 病歴に見る大作曲家の姿』、ジョン・オシエー著、法政大学出版局、ISBN 4-588-02178-8
  3. ^ Paloma Valeva (フランス語) https://palomavaleva.com/jean-baptiste-vuillaume-luthier-francais/
  4. ^ ロッキンf(立東社) 1986年3月号 87p
  5. ^ Leopold Auer, Violin Playing as I Teach It (1920)
  6. ^ (2859) Paganini = 1973 AT1 = 1978 RW1 = 1980 DU5”. MPC. 2021年10月2日閲覧。






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