トンガリロ国立公園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/04 08:39 UTC 版)
生態系
植物相
トンガリロ国立公園の植物相は、高度、降水量や温度などの気候、および火山の噴火の影響もあり、多様である。
公園の北側から西側にかけての高度1,000メートル未満(およそ3,000ヘクタール)は、マキ科の森林が広がる[12]。また、森林内は、シダ植物や菌類が生い茂る[12]。国立公園の火山群の頂上は、タスマン海から西風が吹き付けるとともに、大量の雨がもたらされる。その結果、ニュージーランドを象徴する木性シダは、高さが6メートルにまで成長する[13]。
高度が上がるにつれ、およそ、1,530メートルの高度までは、ブナ林が広がる[12]。ただし、ルアペフ山麓は、度重なる噴火の影響が残り、焼けたブナ林が展開している[12]。さらに、高度が上がると、森林限界になってしまうため、草本植物が展開することとなる[12]。
動物相
トンガリロ国立公園には、56種類の鳥類がいる。その中でも、ノースアイランドブラウンキーウィ、カカ、アオヤマガモ、ニュージーランドシダセッカ 、チャオビチドリ、ニュージーランドファルコンが絶滅の危機に瀕している。アオヤマガモは公園内の急流に生息し[14]、キーウィは国立公園内の森林に生息している[14]。それ以外の鳥類で、公園内に生息しているのは、ニュージーランドヒタキ、ニュージーランドロビン、トゥイ、ハイイロゲリーゴーン、ミドリイワサザイ、ニュージーランドミツスイ、ニュージーランドオウギヒタキである[14]。
生態系への脅威
トンガリロ国立公園もほかの自然遺産の例に漏れず、生態系の撹乱が常に危惧されている。
トンガリロ国立公園内で、既存の生態系を脅かす代表例として、ロッジポールパイン[15]、カルーナ属[15]、エニシダ[15]、鹿[15]、ポッサム[15]、ヤギと豚[15]が挙げられる。
ロッジポールパインがニュージーランドに移入したのは、ヨーロッパ人が入植した時期とほぼ等しい。ヨーロッパ人は、ロッジポールパインを木材として利用することを考えていた。ロッジポールパインは、公園内のいたるところに生育しており[15]、公園の地主及び管理者-この管理者には、自然保護省や地方公共団体、軍隊、マオリ族も含む-は、すべてのロッジポールパインを伐採、駆除することで合意しており[15]、除去プログラムも1年単位で更新されている[15]。
カルーナ属(ギョリュウモドキ、heather)は1910年ごろに、公園の周囲のキジやライチョウの食料として移入されたものである[15]。狩猟のために、キジやライチョウも同時に移入されたがトンガリロ国立公園の厳しい自然環境では行きぬくことができなかった。しかし、カルーナ属だけは、生き延びることができた。現在では、公園内のいたるところに生育している。カルーナ属は、土から引き抜いたとしても、駆除と同時に種を地面に散らばらせるため、駆除が非常に難しい[15]。そのため、1995年、スコットランドから、ヘザービートルを導入し、駆除に乗り出している[15]。
エニシダもまた、トンガリロ国立公園のみならず、ニュージーランド全域に移入した外来種である[15]。エニシダを駆除するために、カルーナ属と同様に、害虫を散布することで、拡大の阻止に努めている[15]。
鹿は、狩猟をするために、1900年代の早い時期に移入された[15]。鹿は、公園内の森林に深刻なダメージを与えてしまった[15]。その結果、公園内の狩猟は免許制となっている[15]。ポッサムの移入は、毛皮のためである[15]。ポッサムもニュージーランド全域に広がった[15]。ポッサムを捕獲するために、毒餌や罠が試されてきたが、ポッサムの生息地である森林に開く背することは容易ではない[15]。ポッサムも鹿、ヤギ、豚と同様に、ハンターによっての捕獲が、現状では生態系の維持のために期待されている。
- ^ IUCN 1990, p. 58.
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- ^ “Lord of the Rings Locations”. Virtual Oceania. 2013年9月5日閲覧。
固有名詞の分類
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