タクシーメーター 違法行為

タクシーメーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/06 04:55 UTC 版)

違法行為

タクシーメーター使用にまつわる以下の行為は、故意・過失を問わず違法となる。

メーター不使用(不倒、エントツ)

メーターを使用しないで客扱いをすること。メーターを使用しないで客扱いをすることは、通常の商売であれば商品の横流しや闇取引のようなものであるため、厳に戒められている。もしも国土交通省地方運輸局に発覚した場合、たとえ不注意であったとしても、行政処分を受ける。

なお、業界では年配の乗務員を中心に、「メーター不倒」という言い方もある。1980年代前半頃まで使われていた機械式メーターでは、メーター本体やダッシュボード上に空車表示板(赤地に白抜きの「空車」表記)を兼ねたレバー(腕)やスイッチがあり、賃走時にこれを横倒しにする(外から見えなくする)事でメーターを作動させていた。そのため、メーターを作動させることを「メーターを倒す」と言った。すなわち「メーター不倒」とはタクシーメーターを使用しないという「ぼったくり」の意味である。

また、同様の意味で『ゲンコツ』(関東地方でよく使われる)や『エントツ』(関西地方をはじめ全国)[注 5]という隠語もある。語源は、「ゲンコツ」は倒しておらず立てたままの空車表示が拳骨に見えることから、「エントツ」は“煙の素通り”から不算入の意、あるいは、表示板が立った様を煙突に見立てた、倒していない空車表示を隠すため空き缶(たばこの缶入りピースなど)を被せた様子が円柱が立っている状態(=煙突)である、などの説がある。神戸などでは、「トンボ」と呼ばれている。

割増ボタン不正使用

夜間23時(地区によっては22時)から翌朝の5時までは割増料金を収受することになっているが、この時間帯以外で割増ボタンを操作することは違法である。メーター不倒と同様、当局に発覚すれば処分を受ける。

なお、逆に割増時間帯にボタンを操作しなかった場合も、やはり違法となる。

高速道路での『高速』ボタン不使用

高速』は賃走と異なり、もっぱら距離のみで料金を計測するモードである。別の言い方をすると、時間制運賃加算をしないという意味であり、『支払』ボタンとほぼ同様の機能である。

タクシーが高速道路を使用している間は、『賃走』から『高速』(無い場合は『支払』、後述)へ切り替えなければならないという決まりがある。高速道路上では客に他の交通機関を選択する余地が無いため、渋滞があっても時間制運賃を加算してはならない、という趣旨である。高速道路を出たら元に戻す。またすべての有料道路ということではなく、例えば神奈川県内であれば「横浜新道」等が適用除外であり、有料道路ではない「保土ヶ谷バイパス」は適用(高速ボタンを押す)である。

なお、『高速』ボタンが装備される前は『支払』ボタンで代用していたが、『支払』は深夜割増に対応していない機能だったため、乗務員は深夜の高速走行中に『支払』と『割増』をガチャガチャと切り替えるなど危険もあり、評判が悪かった。ただし、営業区域によっては『高速』を使わず『支払』で代用し続けている区域もある[注 6]

偽装迎車(回送)

年末の繁忙期など、客の選別(乗車拒否)をする目的で、無線配車などされていないのに迎車ボタンを操作すること。サインに「迎車」を掲示して一般客の乗車申込みを断る一方、長距離客などと交渉するために一目散に繁華街に向かう手段とする。

また、同様の意図でサインを「回送」にする「偽装回送」もあるが、どちらの行為も違法行為として行政処分の対象となる。

その他、期限切れや鉛玉やシール等の封印を切った状態(不正改造)で作動させた場合も違法行為となる。何らかの原因で封印が破損した場合、それが故意でなくても違法となる。


注釈

  1. ^ 介護タクシーは任意である。
  2. ^ 加算料金が加算された回数。
  3. ^ 基本的には本来の有効期限まで(毎年12月が期限の車が10月に運賃改定された場合、本来の期限である12月まで)。
  4. ^ スタッドレスタイヤの場合、ノーマルタイヤとタイヤ自体の硬さ等の特性が異なるため。
  5. ^ 種村はその著書の韓国旅行でメーターを倒さないタクシーに遭遇し「ゲンコツ営業」と表現している[1]
  6. ^ たとえば、京葉交通圏をはじめとする千葉A地区では「割増時間帯(22時〜翌5時)を除いて『支払』で走行する」としている[2]

出典

  1. ^ 種村直樹著「気まぐれ下車と途中下車」(実業之日本社刊)
  2. ^ ご利用料金 - 協進交通
  3. ^ 佐々木烈『日本のタクシー自動車史』三樹書房、2017年12月24日、3-7頁。ISBN 978-4-89522-685-1 
  4. ^ History of the Taxi - Taxicab and Taximeters”. theinventors.org. 2023年8月5日閲覧。
  5. ^ 8月5日はタクシーの日”. 一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会. 2023年8月5日閲覧。
  6. ^ 『日本のタクシー自動車史』83-86頁。
  7. ^ 渡辺清『タクシードライバーが綴るバックミラー風俗史』東京交通新聞社、1982年7月26日、56-60頁。 
  8. ^ 日本のタクシーの歴史・大阪のタクシーの歴史(昭和中期ごろまで)”. 大丸タクシー株式会社. 2023年8月5日閲覧。
  9. ^ 車屋四六. “タクシー料金1円 円タクって知ってる?”. カーアンドレジャーニュース. 2023年8月5日閲覧。
  10. ^ 『タクシードライバーが綴るバックミラー風俗史』114-116頁。
  11. ^ 東京、神奈川でメーター制実施を計画『東京朝日新聞』(昭和12年9月22日)『昭和ニュース事典第6巻 昭和12年-昭和13年』本編p358 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  12. ^ 「特定計量器」とは何か (PDF) (国立国会図書館インターネット資料収集保存事業によるオリジナルのアーカイブ)]の8ページに記載あり。
  13. ^ OKABE METER
  14. ^ 寝屋川市製造業データベース元上場の大阪メーター製造(株)/破産開始決定
  15. ^ 三和メーター[リンク切れ]
  16. ^ ニシベ計器製造所
  17. ^ 二葉計器


「タクシーメーター」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「タクシーメーター」の関連用語

タクシーメーターのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



タクシーメーターのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのタクシーメーター (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS