センチメンタルグラフティ 概要

センチメンタルグラフティ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 14:33 UTC 版)

概要

ゲーム本編ではプレイヤーの分身である「少年」本人の視点で物語が進行するが、小説版やアニメではヒロインの視点で物語が進行する。少年でもヒロインでもなく、第三者の視点で物語が進行するのは、アニメ『センチメンタルジャーニー』の第3話「七瀬優 -星降る夜の天使-」[注釈 2]。ゲーム本編における、杉原真奈美が住む高松でのBGM小柳ルミ子の『瀬戸の花嫁』を基に作ったものである。実際、JR高松駅では発着メロディに『瀬戸の花嫁』が採用されている。

ゲーム発売以前

1994年に発売された『ときめきメモリアル』が爆発的なヒット作となり、コンシューマーゲームにおいて恋愛ゲームというジャンルが広く認知されるに至った。それを受けて、『卒業』シリーズの主力スタッフだったNECインターチャネルの多部田俊雄とゲーム制作会社マーカス窪田正義が、『ときメモ』に続く新しいブランド(「ネクスト『ときメモ』」と銘打っていた)とするべく共同考案したのが本作である。

脚本や文章を大倉らいた、キャラクター原案(イメージイラスト)を甲斐智久が担当[1]。ヒロイン役の声優の内6人は青二プロダクションの新人を中心に起用。残りの6人は当時珍しかった一般公募による選考で揃えている。いずれのスタッフも当時は知名度が低く、その分メディアへの露出も少なかったが、強力な販促活動でバックアップすることによって独自のブランドを作り出すという販売戦略だった。

なお、大倉は本作に関わる前に『卒業第1弾のヒロイン5人組の卒業後の生活を描いた作品『結婚 いつかあなたと...』を執筆していた関係で『卒業』シリーズとは間接的に繋がりがあった。この縁故により、当作にも『卒業』シリーズの舞台となる清華女子高等学校が登場し、ヒロインの内の1人である星野明日香が在籍する学校として設定されているほか、ゲーム本編でも清華女子高校の制服を着た明日香のアイコンが採用されている[注釈 3]。このため、当作は『卒業』シリーズの関連作品、またはシリーズ作品として位置付けられている。

それだけに当初から活発な宣伝がなされており、『電撃G'sマガジン』における連動小説の掲載を始めとして各ゲーム雑誌で多くの特集記事や広告が掲載された。1997年からはTBSラジオにて『センチメンタルナイト』が放送され、声優による本格的なプロモーションを開始。「SGガールズ」と名付けられたユニットを組んでイベントやコンサートが精力的に行われた。関連グッズの発売も積極的に行われ、中でもプレディスクとして制作され3万枚限定で出荷された『センチメンタルグラフティ ファーストウィンドウ』は予約が殺到したため入手困難となり、最大で1万5千円前後ものプレミアム価格で取引されるほどだった[1]

1997年11月には三一書房から『センチメンタルグラフティ攻略読本』(ISBN 4-380-97294-1)という書籍がゲーム発売に先行して発売された[1]。ゲーム発売元から許可を得ずに執筆されたためゲームキャラクターのイラストは一切使用せず、公開されているキャラクター設定から勝手にゲーム内容を予想して「攻略」するという内容で、攻略本ではなく謎本に分類される書籍である。

ゲーム発売前からキャラクターグッズやドラマCDなどや小説が「それまでの印税だけで数億円は下らない」という説が出るほどの高い売上を記録し、中には「そんなに儲かったのなら、もうゲームを発売しなくてもいいのでは?」と言い出す者もいた[1]

こうして発売前から大きな話題を呼んでいたが、本編の発売は当初予定の1997年11月から遅れて1998年1月22日に発売され、販売本数は上々だった。

以降の展開

本編発売後も積極的な営業活動が引き続き行われ、メディアミックスの一環として制作されたTVアニメ『センチメンタルジャーニー』の放送やコンサートツアーなど新しい展開が見られた。これはPlayStation用ソフト『センチメンタルジャーニー』の発売を睨んでのものであり、この販売はNECインターチャネルではなくバンプレストによって行われている。ゲーム本編は『センチメンタルグラフティ』の時と同様、発売延期となった。発売延期の影響もあり『センチメンタルジャーニー』の売上が低調に終わると、その後は『センチメンタルグラフティ』全体の人気が急速に下降していく。

『センチメンタルジャーニー』の販売に携わったバンプレストが撤退し、代わって再び販売事業に乗り出したNECインターチャネルが後に続編『センチメンタルグラフティ2』を発売したが、その際にはこれまでのような大規模な宣伝は見られなかった。「前作主人公が交通事故で死んだという設定」について、前作のシナリオ担当だった大倉も続編のシナリオを担当しなかった理由について、「前作の主人公が死ぬ、という設定の変更が不可能で、書きたくても書けなかった」と語っている。脚本は結果的に、有限会社クリエイターズプロデュースユニットゴー(C.P.U. GO)が担当することになった。売上・評価・人気などすべての面で不振だった。なお、脚本を手掛けたライターの一人(役職上はシナリオ監督)は後にライトノベル作家として有名になる松智洋である。また、『2』を企画した窪田が率いるマーカスは『2』の制作中に倒産し、同社が所有していた『センチメンタルグラフティ』関連の権利はNECインターチャネルに譲渡されているため、『2』の著作権表記にはマーカスの名前は入っていない。

その一方で、2001年3月29日には『電撃G's』連載小説の上巻を元にしたノベルゲーム『センチメンタルグラフティ〜約束』がPlayStation向けに、本編のPlayStation移植版と同時に発売された。また、小説版の下巻を元にしたノベルゲーム『センチメンタルグラフティ〜再会』も発売する予定だったが、発売中止となっている。

不評に終わった『2』を立て直すべく、センチメンタルシリーズの最新作として2004年10月28日PlayStation 2用ソフト『センチメンタルプレリュード』が発売された。『2』との物語的関連性を断ち切り、大倉をライターとして復帰させるなど、ユーザーが抱いていた『2』への不満を一掃しての仕切り直しを計ったものの、売上・評価・人気などすべての面で『2』以上の不振を極め、この作品を最後にセンチメンタルシリーズに終止符が打たれた。

その後、原作者の大倉らいたは当作に間接的に関係する『坂物語り』を執筆する。それなりに人気が在り、グッズが発売されるなどしたが、ゲーム化やアニメ化などはされず、ささやかに終了している。その後は『リリカルレストラン あした天使の翼をかりて・・・』の執筆を最後に消息不明となり、現在に至っている。一方、ヒロイン役を務めた声優陣は殆どがその後も芸能活動を続けている。当作における直接の関連プロジェクト自体は前述のように『センチメンタルプレリュード』が最後となっているが、当作がデビュー作であった西口有香は当作に対して強い想い入れがあるらしく、時折当作について触れることがあり、またネット中継で当作を実況プレイするという企画に何度も出演したりしている。2018年1月22日には発売20周年記念を迎え、それに合わせて本作の発売20周年記念プロジェクトが行われた[2]


注釈

  1. ^ SGガールズや製作スタッフなどの間でも呼称されていた略称。
  2. ^ 第10話「永倉えみる -果てしない物語-」では青野武演じるラムネ瓶が進行ナレーションを務めているが、物語自体は永倉えみる本人の視点で進行している。
  3. ^ 裏設定ではあるが、星野明日香と『卒業III 〜Wedding Bell〜』のヒロイン5人組はクラスメイトであり、5人と一緒に描かれている公式イラストも存在する。
  4. ^ 正確には休日の前日22時から東京でコマンド入力の実行が可能。
  5. ^ 4月29日(みどりの日・水)・5月4日(憲法記念日振替休日・月)・5月5日(こどもの日・火)・9月15日(敬老の日・火)・9月23日(秋分の日・水)・11月3日(文化の日・火)・11月23日(勤労感謝の日・月)・1月15日(成人の日・金)・2月11日(建国記念の日・木)
  6. ^ 3月21日(土)から4月5日(日)まで。
  7. ^ 7月19日(土)から8月31日(火)まで。
  8. ^ 12月23日(火)から1月11日(日)まで。
  9. ^ ゲーム開発をしていた1997年から1998年までは携帯電話PHSを含む)を所持率が増えている過渡期であり、高校3年生が携帯電話(PHSを含む)を所持することが当然視されるような社会環境ではなかった。なお、各地方都市からヒロインの自宅へ公衆電話で電話することは考慮されていない模様。
  10. ^ 具体的な所属自治体は不明だが、東京都内に「緑が丘3丁目」が実在するのは目黒区のみである。「緑丘」は他にも武蔵村山市に存在するが、武蔵村山市の「緑丘」は丁目制度を実施していない。また、羽村市には「緑ヶ丘3丁目」が存在するが、表記が「緑丘」であるため、一致しない。以上のことから、完全に一致するのは目黒区のみである。
  11. ^ 本作のファンから「主人公の父親はどんな職業?」との質問が原作者である大倉らいたのもとに多く寄せられたが、制作サイドから非公表にするよう指示が出されたため、公表できない旨を大倉自身がファンクラブ向けCD会報内のインタビューで回答している。後の20周年記念プロジェクトの際に、多部田俊雄が「主人公の祖父は大物政治家であり、主人公の父親はその議員秘書である」と発表し、度重なる転勤は全国に地盤を広げるための拡充行脚であった旨を合わせて発表したことで父親の職業が明らかにされた。
  12. ^ 実在する青垣中学校(兵庫県丹波市)とは無関係。
  13. ^ なお、1男2女の兄妹構成は演者の牧島も同様である。
  14. ^ 実際には一卵性双生児の性別が男女別性で生まれてくることは極めてまれ。詳細は双生児を参照。
  15. ^ 小説版では、杉原真奈美も学校生活は共にしておらず、自宅での交流のみだったという設定。
  16. ^ アニメでは優本人が主人公と出逢った年はスイフト・タットル彗星が現れた年であると語っているが、これを天文史に当てはめると彼女が中学2年で主人公に出逢った年の計算になる。
  17. ^ 『センチメンタルグラフティ ファーストウインドウ』に収められているオーディション時の映像において、今野宏美が七瀬優役のオーディションを受けている映像が収録されており、その時の優の一人称が「ボク」となっている。
  18. ^ 「サウザン」は名前の「恵」から、「ブラック」は彼女のイメージカラーとして設定された黒(ブラック)から、それぞれ付けられた。
  19. ^ アニメではリーダーも担当しているという設定。
  20. ^ 「不良娘」などと自称することもあるが、これはぶっきらぼうな態度の彼女を周囲が一方的に敬遠していることによるものであり、素行自体は不良でもなんでもない、ごく普通の少女である。
  21. ^ OP曲とED曲を収録したシングルCDが発売された当初はTears名義であった。
  22. ^ 角川スニーカー文庫『センチメンタルグラフティ 〜再会〜』の七瀬優篇において、坂井良太が小学五年であるにもかかわらず「五歳」と表記されており、この部分が『センチメンタルグラフティ 〜再会+』にて「小学五年」に修正されている。
  23. ^ 2018年7月現在、米本千珠・鈴木麻里子・豊嶋真千子・前田愛・岡田純子・鈴木麗子・西口有香の7人がtwitterを利用すると共に公式アカウントと相互フォローしている。満仲由紀子と今野宏美はプロジェクトには参加しているが、twitterは利用していない。小田美智子・岡本麻見・牧島有希は2018年8月現在、プロジェクトへの参加を表明していない。有島モユは続編『センチメンタルグラフティ2』からの加入であり、twitterも利用していないことからプロジェクトには不参加だと考えられていたが、『帰ってきたセンチメンタルナイト 20』の第4回配信に出演している。
  24. ^ a b プロジェクトの最初は2018年3月22日からの『センチメンタルジャーニー』の配信開始であるが、8月2日に配信が開始された『帰ってきたセンチメンタルナイト 20』の配信開始を正式なプロジェクト開始の起点としている。
  25. ^ 当日は西口有香ら、メンバー数人が劇場に足を運んだ。
  26. ^ 第2回配信では、甲斐智久による新作の永倉えみるの絵が公開され、甲斐からのメッセージも紹介された。
  27. ^ 安達妙子と森井夏穂の浴衣姿が、韓国の民族衣裳であるチマチョゴリに差し替えられている。

出典

  1. ^ a b c d e f 太田出版『超クソゲーVR』(多根清史、阿部弘樹、箭本進一著)64-67ページ
  2. ^ 『センチメンタルグラフティ』20周年イベントのフォト到着。1,500人が来場!、電撃オンライン、KADOKAWA
  3. ^ 小説版「センチメンタルグラフティ 〜約束〜」第一話 安達妙子篇にて記述が在る[要ページ番号]
  4. ^ 『TOMOHISA KAI Sentimental Graffiti Image Artworks』(ISBN 4-7973-0456-1)170ページ。同書の解説によると、当初は特に左利きという設定ではなかったが、キャラクターデザインの甲斐が妙子のイラストを描いている途中で左利きのような特徴で描いていることに気付き、試しに過去のデザインを調べてみると過去のデザインも左利きを匂わせる特徴で描いていたことが判ったため、これを機に左利きという設定にしたという。
  5. ^ a b c Windows版『センチメンタルグラフティ』同梱プロフィールより。
  6. ^ センチメンタルグラフティ~約束~,公式PlayStation™Store 日本”. SONY (2019年1月22日). 2019年1月25日閲覧。






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