スペースオペラ 日本でのスペースオペラ

スペースオペラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/03 04:57 UTC 版)

日本でのスペースオペラ

古くは海野十三星新一などに宇宙戦争ものの試みが見られる。日本にスペースオペラを受容させる土壌を作り上げた最大の功労者は、戦後のSF開拓期からSF作家・翻訳家として活動し海外SFコレクターでもあった野田昌宏である。『SF英雄群像』などで紹介された海外スペースオペラ作品が、日本のSFファンの間で受け入れられる作品と重なるほどの影響力を持った。野田が直接スペースオペラを語った本として『愛しのワンダーランド スペース・オペラの読み方』『スペース・オペラの書き方 宇宙SF冒険大活劇への試み』がある。

一方で、『銀河乞食軍団』に代表される、「野田節」とも言われる野田自身の作品の独特の世界は、後の多様化の第一歩だったとも言える。

日本では、スペースオペラはすぐに多様化した(日本ではアメリカとは異なり、本格SFとスペースオペラが、そしてSF全般と漫画や特撮番組が峻別されたり定義争いが生じることはほとんどなかった)。まず、ビジュアル作品による人気の主導があげられる。順番に挙げると(これ以前の特撮作品にも宇宙は出てくるが)『スタートレック』の第1作が『宇宙大作戦』として日本でも放映され(1970年前後)、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)はブームとなった。続いて1977年に『スター・ウォーズ』、1979年の『機動戦士ガンダム』と続く。漫画では『宇宙海賊キャプテンハーロック』『銀河鉄道999』『クイーン・エメラルダス』といった松本零士の諸作品がある。

小説に話を戻すと、その第1作は『スター・ウォーズ』に発奮し一気に書き上げられた、という高千穂遙の『クラッシャージョウ』が1977年、ソノラマ文庫に登場した。イラストが(『ガンダム』にも関与した)安彦良和ということで話題になるなど、レーベルのその後と共に後のライトノベルに至る過程の通過点となった。同じ作者で1979年に始まる『ダーティペア』はアニメ作品が世界的に人気となり、アメコミ版まで存在する。高千穂のこれらのシリーズは、後のライトノベルで多用される完全一人称視点など、新しい試みもあったが、スペースオペラとしては後の多くの作品が「拡散」していったのに対し、ある意味ストレートな作品である。

1980年代に入って、田中芳樹は『銀河英雄伝説』(1982年 - )を、スペースオペラ的な艦隊戦も交えながらも、宇宙や銀河系架空の星系という舞台設定を背景とした政治・戦略・権謀術数や人間関係・権力の変遷などに重きを置いた重厚なSF史劇として書き上げた。これもアニメ化が「銀河声優伝説」という語を残すなど映像と縁が深い。1980年代の漫画作品には『マップス』(本編完結は1994年)などがある。また1990年代の作品であるが例えば野尻抱介の『クレギオン』シリーズは、作者がこの作品をスペースオペラと捉えているとしている[12]が、他作品同様の科学的考証もしっかりと入っており、ハードSF作品にもなっている。といったように、本格(ないし変格?)SFとして通用するスペースオペラが誕生していった。TRPGの『トラベラー』が日本に紹介されたのも1980年代である。

また、コンピュータゲームでも、アドベンチャーゲームロールプレイングゲームといった物語性のあるゲームの他、シューティングゲームでしばしば見られる「驚異的な機動力と火力を誇る小型戦闘機が、敵の大部隊や巨大要塞を薙ぎ倒してゆく」というモチーフはスペースオペラ的であり、作品内の世界の言語など多数の設定を付け、後に小説まで出版されている『ゼビウス』以降、「銀河暦1万??年、帝国の圧政は……」といったストーリー付けはよく見られるものとなった。また、『ゼビウス』に出てくる「シオナイト」や『ボスコニアン』といった名前に見られる『レンズマン』からの影響や『スターフォックスシリーズ』など、海外スペースオペラからの影響も見られる。

1990年代のビジュアル作品では『機動戦艦ナデシコ』が、メディアミックス作品に『サイバーナイト』がある。またこの前後で挙げた小説を原作として作られたアニメ作品も多い。

一方で、ライトノベルでもSFが書かれるようになったが、ブーム的なものに左右されやすい中でスペースオペラも書かれており、20世紀の作品には(「シリーズ」と特に付けているのは、タイトルとシリーズ名に全く一致のない作品)『無責任艦長タイラー』(1989年 - )、『ロスト・ユニバース』(1992年 - )、『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』(1993年 - )、『星くず英雄伝』(1996年 - )、『バウンティハンター・ローズ』シリーズ(1996年 - )、『ミリー・ザ・ボンバー』シリーズ(1996年 - )、『星方遊撃隊エンジェルリンクス』(1998年 - )、『カウボーイビバップ』(1998年 - )、『スカーレット・ウィザード』(1999年 - )、などがある。1990年代には『スペオペヒーローズ』というスペースオペラの世界を遊ぶためのTRPGルールセットも生まれた。

21世紀の作品では、『トラブルシューター シェリフスターズ』(2000年 - )、『でたまか』(2001年 - )、『スターシップ・オペレーターズ』(2001年 - )、『宇宙捜査艦《ギガンテス》』(2002年)、『ウェスタディアの双星』(2008年 - )、『ミニスカ宇宙海賊』(2008年 - )、『無限航路』(2009年 - )、『覇道鋼鉄テッカイオー』(2011年 - )、などがある。


  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o Hartwell & Cramer 2006, pp. 10–18, Introduction
  2. ^ Tucker 1941, p. 8
  3. ^ Langford 2005, pp. 167–168
  4. ^ a b c d Dozois & Strahan 2007, p. 2, Introduction
  5. ^ Bleiler & Bleiler 1990, pp. 147–148
  6. ^ Bleiler & Bleiler 1990, p. 147
  7. ^ Clarke 1997
  8. ^ Hardy 1994, p. 56
  9. ^ Bleiler & Bleiler 1990, "Schlosser, J."
  10. ^ a b c McAuley 2003
  11. ^ Levy 2008, pp. 132–133
  12. ^ あとがきにて本人が発言。野尻はその理由について、作品の主題を科学的論理の提示に留まらず人間関係にあるからだとする。
  13. ^ SF Citations for OED, "Planetary romance"
  14. ^ バローズが生きている頃には数百人の模倣者がいて、その模倣者の中でも有力な者にはさらに数百人の模倣者がいたという伝説があるほどである。参考:リチャード・A.ルポフ『バルスーム』厚木淳訳、東京創元社、1982年
  15. ^ E・E・スミス宇宙のスカイラーク』に以下のような登場人物たちのやりとりがある。
    「三億五千マイルだ。太陽系からちょうど半分でかかっている。ということは毎秒一光速の加速度ということだ」
    「そんな速度で走れるはずはないよ、マート。E=mc²だよ」
    「アインシュタインの理論はしょせん理論に過ぎんのだよ、ディック。この距離は観察された事実じゃないか」
  16. ^ Hartwell & Cramer 2006, p. 251
  17. ^ Lilley, Ernest (2003年8月). “Review”. SFRevu. http://www.sfrevu.com/ISSUES/2003/0308/Space%20Opera%20Redefined/Review.htm 2009年2月28日閲覧。  より正確にはロバート・A・ハインライン宇宙の戦士』のパロディである


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