シャーロキアン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/14 13:38 UTC 版)
特徴
シャーロック・ホームズら作中の登場人物たちを実在の人物と見なし、『シャーロック・ホームズ』シリーズを正典 (Canon、Conanのアナグラムでもある) または聖典と呼んで、各種の研究を行う。これはキリスト教における聖書研究を意識的にパロディ化した行動様式である。これに限らず、シャーロキアンの使う用語には宗教用語をもじった言葉が多い。『シャーロック・ホームズ』シリーズの多くはホームズの相棒であるジョン・H・ワトスンが執筆したという設定でドイルが書いたが、シャーロキアンはワトスンを実際の執筆者と見なし、本来の執筆者であるドイルはワトスンの出版エージェントもしくはゴーストライターと位置づける。
シャーロキアンは事情を良く知らない部外者に対し、自分たちがホームズを実在の人物であると本当に信じ込んでいるかのように装ってからかう傾向がある。
研究ごっこ
シャーロキアンの研究テーマは多岐にわたる。「事件関係者のプライバシーやスキャンダル性を考慮して、日付・地名・人物名を変更している」もしくは「ホームズが何らかの理由で事件の真相を伏せ、ワトスンに偽の真相を教えた」と考え、事件の真相を探り出そうとする研究が多い。これは通常の文学研究における登場人物のモデル探しとは異なり、空想と現実を意図的に混同した研究ごっこである。
おそらくはドイルのミスによって発生した矛盾(『唇のねじれた男』で、ワトスン夫人がなぜか夫を「ジェームス」と呼んだ事など、ちなみにドイルはあえて訂正しなかった)を合理的に解釈する試みも行われている。ここでは「いかに斬新な新解釈を打ち出すか」「いかに自説が正しいと巧みにこじつけるか」が求められる。まじめ一辺倒の研究は敬遠される傾向があり、発想の柔軟さと屁理屈とユーモアが求められる一種の知的パズルである。決して実際の文学研究と同一視してはならない。あくまでそのスタイルを借りて遊んでいるだけである。ただし、日本シャーロック・ホームズクラブでは、文学社会学など「大真面目な」研究が多い。
中にはそのような研究を潔しとせず、全てが書かれた通りに起きたとするシャーロキアンもいる。この一派はファンダメンタリストを自称する場合があるが、これには宗教的な意味は全くない。
このようなシャーロキアンの活発な研究成果によって、ホームズは架空の人物でありながら、伝記が何冊も出版される異例の地位を得ている。
団体
シャーロキアンの組織は世界中にあり、最も古いのは1934年にアメリカ合衆国のニューヨークで設立されたベイカー・ストリート・イレギュラーズである。イギリスのロンドンにはシャーロック・ホームズ協会がある。日本には日本シャーロック・ホームズ・クラブがあり、論文集『ホームズの世界』を発行している。
- ^ “130年前から「名探偵といえばホームズ」と言われる本当の理由 現代にも通用するキャラクター造形”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2020年11月20日). 2020年11月24日閲覧。
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