シアン化水素 検知法

シアン化水素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 07:47 UTC 版)

検知法

空気中のシアン化水素の検出には、ピクリン酸ナトリウムや塩化水銀(II)などを詰めたガス検知管が使われる。

解毒法

シアン化水素を始めとするシアン化物の解毒方法は、幾つかの方法が知られている。

例えば、ヘモグロビンメトヘモグロビンに故意に酸化させ、 シアン化物イオンをメトヘモグロビンの Fe3+ に配位させて、 酸化型シトクロムの Fe3+ へのシアンの配位を妨げる方法がある。 ただし、この方法は酸素運搬能力の無いメトヘモグロビンを増やすため、諸刃の剣とも言える。

また例えば、ヒドロキソコバラミンを注射して使用する方法もある。 シアン化物イオンはコバルトにも極めて配位し易いため、 ヒドロキソコバラミンのコバルトに配位している水酸化物イオンが、シアン化物イオンに取って代わられ、 シアノコバラミンに変換されるため、シアン化物イオンを封じ込める方法である。 ただし、大過剰のシアノコバラミンが体内に有る状態に陥るため、 腎機能が正常でないと大過剰のシアノコバラミンの排泄が滞り、問題を引き起こす可能性もある。

このように、それぞれの方法には、それぞれに利点と欠点が挙げられる。 いずれにしても、意識が戻る程度にまで解毒できれば、その後は急速に回復する。

製法

工業的にシアン化水素は、ソハイオ法によるアクリロニトリル製造の際の副産物として得られる。

また、アンドルソフ法と呼ばれる、メタン、アンモニア、空気の混合ガスを、 高温下で白金触媒に通す方法も知られる。

BMA法(Degussa法)と呼ばれる方法もある。こちらは酸素を用いずメタンやアンモニアに含まれる水素を回収することが出来るが、その代わりに大きな熱エネルギーが必要なのであまり使われていない。

なお、燻蒸などの目的で、装置の無い場所でシアン化水素を発生させたい場合には、 シアン化ナトリウムのようなシアン化物イオンの塩に、強酸を加える方法が一般的である。つまり、揮発性の弱酸が、 強酸によって遊離してくる性質を利用した方法である。

廃棄処理

廃棄処理業者にシアン化合物である旨を伝えて委託し、シアン化物イオンの分解処理を依頼する方法が安全である。 通常は、塩基性条件下で、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を用いて、 シアン化物イオンを酸化する方法で分解する。


注釈

  1. ^ この値は、炭酸よりも弱い酸である事を示す。
  2. ^ なお、コンクリート漆喰の部屋の燻蒸にシアン化水素を用いると、 水分の影響でシアン化水素酸が生じ、さらに、これが壁材に含まれていた鉄分と反応した結果、 壁が青くなる場合もある。つまり、鉄との錯化合物が生成された例である。
  3. ^ シアン化水素を化学兵器としての毒性発現の分類で見た場合、 数百ppmの濃度では肺から吸収されて循環器に回り、 血液中のヘモグロビンや細胞内のミトコンドリアと結合して、機能を停止させる血液剤として働く。 一方で、数千ppm以上の濃度では肺に直接作用し、肺の機能を麻痺させて呼吸ができなくなる窒息剤として働く。
  4. ^ ただし、青酸塩で中毒死した場合は、そうならない場合もある。
  5. ^ なお、シアン化物イオン以外では、硫化水素一酸化炭素も、このミトコンドリアの電子伝達系の複合体IVを阻害する。

出典

  1. ^ a b 新村 芳人 『興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~ 遺伝子が解き明かす匂いの最前線』 p.77 技術評論社 2012年4月15日発行 ISBN 978-4-7741-5013-0
  2. ^ 新村 芳人 『興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~ 遺伝子が解き明かす匂いの最前線』 p.78 技術評論社 2012年4月15日発行 ISBN 978-4-7741-5013-0
  3. ^ 新村 芳人 『興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~ 遺伝子が解き明かす匂いの最前線』 p.79 技術評論社 2012年4月15日発行 ISBN 978-4-7741-5013-0
  4. ^ 裁判所 労働事件裁判例 日本計算器峰山製作所懲戒解雇(2017年9月20日時点の裁判所 - 裁判例情報)
  5. ^ Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.108 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3
  6. ^ Robert K. Murray・Daryl K. Granner・Victor W. Rodwell(編集)、上代 淑人(監訳)『Illustrated ハーパー・生化学(原書27版)』 p.121 丸善 2007年1月30日発行 ISBN 978-4-621-07801-3
  7. ^ a b 幸田 泰則・桃木 芳枝(編著)『植物生理学 - 分子から個体へ』 p.75 三共出版 2003年10月25日発行 ISBN 4-7827-0469-0
  8. ^ 幸田 泰則・桃木 芳枝(編著)『植物生理学 - 分子から個体へ』 p.76 三共出版 2003年10月25日発行 ISBN 4-7827-0469-0
  9. ^ アメリカの死刑囚が「最後の晩餐」に選んだものはライブドアニュース、2014年11月23日。2015年10月24日閲覧。
  10. ^ 遺棄化学兵器等(内閣府大臣官房遺棄化学兵器処理担当室)
  11. ^ 陸奥屋(2009年7月3日時点のアーカイブ
  12. ^ 厚生労働省 平成11-12年度たばこ煙の成分分析について(概要)(2017年9月20日時点の厚生労働省 - たばこと健康に関する情報ページ)
  13. ^ 環境省 PRTRインフォメーション広場 届出外排出量 10.たばこの煙に係る排出量(2017年9月20日時点の環境省 - PRTRインフォメーション広場)


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