サフラン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 01:26 UTC 版)
利用
めしべを乾燥させて、香辛料や生薬として用いる。乾燥の際には、風通しのよい室内で陰干しにする。1グラムのサフランを採るのに160個ほどの花が必要であり、収率が低いために貴重で、1グラムあたり500 - 1,000円程度と高価である。
香辛料
めしべは独特の香りを持ち、水に溶かすと鮮やかな黄色を呈するため、南ヨーロッパ、南アジア北部、中央アジア、西アジア、北アフリカにかけて料理の色付けや風味付けのための香辛料として使用される。プロヴァンス地方の名物料理ブイヤベースやスペイン料理のパエリア、ミラノ風リゾット、モロッコ料理のクスクス、インド料理のサフランライスには欠かせない。トルコのサフランボルでは湯を注いで「サフラン・ティー」として飲まれている。
生薬
生薬としては番紅花(ばんこうか、蕃紅花とも書く)と呼ばれ、鎮静、鎮痛、通経作用がある(日本薬局方第二部に「サフラン」の名で収録)。中国では西紅花、藏紅花の名で生薬として流通している。
動物実験では、サフランの黄色色素であるカロテノイドの一種「クロシン」の摂取が大腸がん予防に効果があるとする研究もある[47]。
安全性
着色や風味付けなどの通常の用途で、食事から経口で摂取する量では安全とされている[14]。しかし、以下の場合には注意が必要である。
- 堕胎作用、子宮収縮作用、通経作用に注意が必要である。「授乳中の安全性については充分な情報がないため、避けたほうがよい」[48]、「妊婦には禁忌である」[49] との記述もみられる。
- 大量摂取は危険と言われており、5グラム以上摂取すると重篤な副作用が出る。致死量は12 - 20グラムである[48]。
- オリーブ属、オカヒジキ属、ドクムギ属の植物に過敏症がある人はアレルギー症状に注意が必要である[50]。
2016年には日本の4つの大学の研究者たちが、サフランの色素成分のクロシンには神経保護作用の性質があることを発見している。また2018年にはアテネ国立カポディストリアン大学のアティコン大学病院血管外科部門の科学者たちが、一連の臨床研究から、サフランには抗炎症物質が含まれており、この物質は高血圧や心臓病の主因となる動脈プラークの安定化に有効であることを確認した。[15]
注釈
出典
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- ^ Foe et al. 1997.
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