クマバチ 人間との関わり

クマバチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/12 00:14 UTC 版)

人間との関わり

都市伝説

クマバチとマルハナバチ類に関しては「航空力学的に飛べるはずがない」という類の都市伝説が20世紀から流布しているが、これは誤りである[7]。主に航空機を対象とする従来の航空力学において昆虫の飛行一般の原理は大きな謎とされていたが、1980年代ごろから[8]昆虫の飛行に関して前縁渦(leading-edge vortex)が果たす役割が明らかとなって原理の解明が進み[9]、今日では工学的な再現や応用も視野に入れた研究が盛んに行われている[10]

熊蜂の飛行

リムスキー=コルサコフの楽曲 "Полёт шмеля" は邦題『熊蜂の飛行』として知られるが、ロシア語の "Шмели" や英題にある英語の "Bumblebee" はマルハナバチを指す。ただし、英語圏においてもクマバチとマルハナバチは混同されることが多い[11]

クマンバチ

「クマ」は哺乳類になぞらえ、大きいもの、強いものを修飾する語として用いられる。このため、日本各地の方言において「クマンバチ」という地域が多数あるが、クマンバチという語の指す対象は必ずしもクマバチだけではない場合(クマバチ[12]スズメバチ[12][13]マルハナバチ・ウシアブほか)があり、多様な含みを持つ語である。クマバチとクマンバチでは別のハチを指す場合もある[13]。「ン」は音便化用法であり、方言としても一般的な形である。

スズメバチとの誤解

本種は大型ゆえにしばしば危険なハチだと解されることがあり、スズメバチとの混同がさらなる誤解を招いている。主に長崎県においてスズメバチのことを「クマバチ(熊蜂)」と呼ぶことがあり[12][13]、これが誤解の原因のひとつと考えられる。花粉を集めるクマバチが全身を軟らかい毛で覆われているのに対し、虫を狩るスズメバチ類はほとんど無毛か粗い毛が生えるのみであり、体色も大型スズメバチの黄色と黒の縞とはまったく異なるため、外見上で取り違えることはまずない。

ハチ類の特徴的な「ブーン」という羽音は、人間にとって「刺すハチ」を想像する危険音として記憶しやすく、特にスズメバチの羽音とクマバチの羽音は良く似た低音であるため、同様に危険なハチとして扱われやすい。

かつて、児童文学作品の『みつばちマーヤの冒険』において、蜜蜂の国を攻撃するクマンバチの絵がクマバチになっていたものがあったり、『昆虫物語 みなしごハッチ』のエピソード(第32話)で略奪を尽くす集団・熊王らがクマバチであった。少なくとも日本において、ミツバチのような社会性の巣を集団で襲撃するのは肉食性のスズメバチ(特にオオスズメバチ)であり、花粉や蜜のみ食べるクマバチにはそのような習性はない。童話の中であれば、ミツバチとは仲良しと扱われてもおかしくはない。このように、本種が凶暴で攻撃的な種であるとの誤解が多分に広まってしまっており、修正はなかなか困難な様子である。


  1. ^ 日本産昆虫学名和名辞書(DJI)”. 昆虫学データベース KONCHU. 九州大学大学院農学研究院昆虫学教室. 2013年5月8日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 森林生物データベース 00051 クマバチ”. www.ffpri.affrc.go.jp. 森林研究・整備機構. 2020年5月15日閲覧。
  3. ^ "クマバチ類",日本動物大百科10 昆虫III,平凡社,1998年9月20日,P.62
  4. ^ 岡本素治(2016).ヒラズゲンセイの生活史(1)~羽化から1齢幼虫の花上待機まで~.Nature Study 62(8).2016.pp6-9.
  5. ^ 研究の森からNo.110”. www.ffpri.affrc.go.jp. 森林研究・整備機構. 2020年5月16日閲覧。
  6. ^ 日本のクマバチの多様性 - 外来種タイワンタケクマバチの最前線”. sites.google.com. 川添和英. 2020年5月16日閲覧。
  7. ^ Karl Smallwood (2013年). “BUMBLEBEE FLIGHT DOES NOT VIOLATE THE LAWS OF PHYSICS”. Today I Found Out. 2021年1月13日閲覧。
  8. ^ Charles P. Ellington (1995). “Unsteady aerodynamics of insect flight”. Symposia of the Society for Experimental Biology 49: 109-129. PMID 8571220. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8571220/. 
  9. ^ Charles P. Ellington; Coen van den Berg; Alexander P. Willmott; Adrian L. R. Thomas (1996). “Leading-edge vortices in insect flight”. Nature 384: 626–630. doi:10.1038/384626a0. https://www.nature.com/articles/384626a0. 
  10. ^ 中田敏是 (2017年). “なぜ昆虫は飛べるのか? – 蚊の特殊な飛行メカニズムが明らかに”. academist journal. 2021年1月13日閲覧。
  11. ^ Xylocopa Latreille Large Carpenter Bees”. Discover Life. 2021年1月13日閲覧。 Sourced from Mitchell, T.B. (1962). Bees of the Eastern United States, Volume II. North Carolina Agricultural Experiment Station. Tech. Bul. No.152, 557 p.
  12. ^ a b c “くまんばち”, 新明解国語辞典 (第4版小型 ed.), 三省堂, (1989年12月10日), p. 345, ISBN 4-385-13142-2 
  13. ^ a b c "くまんばち". 日本語大辞典 (初版 ed.). 講談社. 6 November 1989. p. 556. ISBN 4-06-121057-2


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