エチゾラム 適応

エチゾラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/21 02:37 UTC 版)

適応

日本での承認された適応は以下である。

物性

胃内のような酸性環境下において、エチゾラムの7員環が開環した時の極限構造式。

エチゾラムは、常温常圧において固体であり、常圧における融点は、146 ℃から149 ℃である。光に対して不安定であり、光に当たると徐々に分解することが知られている。pH4.0以下の酸性水溶液(胃液)では開環体へと変化し効力が減弱するものの、アルカリ性の小腸に達すると再び閉環体に戻り、活性を持って小腸で吸収される。アルカリ水溶液中では37℃で4時間は安定である。

禁忌・一般的注意

年齢、症状により適宜増減する。体内に残存しやすい高齢者は1日1.5mgまでとする。眠気を催したり、注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こることがあるので、自動車の運転や危険をともなう機械の操作は控える。自分の判断で勝手に服用を中止したりしない。エタノール)との併用は、神経抑制作用によりエタノールの酩酊作用を増強することから、推奨されない。

使用禁忌

併用注意

  • 中枢神経抑制剤 - 両薬剤が相加的に作用を発現する。
  • MAO阻害剤 - 同剤は肝臓でのエチゾラム代謝を競争的に阻害するため、作用強度が増大したり持続時間の延長がみられる。
  • フルボキサミン - 同剤は肝臓でのエチゾラム代謝を競争的に阻害するため、作用強度が増大したり持続時間の延長がみられる。

これらの薬剤と併用する場合は、投与量を適宜減量する必要がある。

慎重投与

  • 心障害、肝障害、腎障害のある患者
  • 脳に器質的障害のある患者(作用が強く現れる)
  • 小児および高齢者
  • 中等あるいは重篤な呼吸障害を持つ患者

副作用

  • 精神神経系副作用
    ときに眠気、ふらつき、めまい、歩行失調、頭痛・頭重、言語障害、また、まれに不眠感、興奮、焦燥、振戦、眼症状(霧視、調節障害)が現れることがある。
    統合失調症等の患者で逆に刺激興奮、錯乱等が現れることがある。
  • 肝機能障害
    黄疸あるいは血清中の酵素指標の上昇など肝機能障害を示すことがある。
  • 長期間の使用では眼瞼痙攣[10]

また、以下の少数の副作用が報告されている。

  • 呼吸抑制、炭酸ガスナルコーシス
    呼吸抑制が現れることがある。中等あるいは重篤な呼吸障害を持つ患者では炭酸ガスナルコーシスが現れることがある。
  • 悪性症候群
    発熱、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗、白血球の増加、血清CK(CPK)の上昇等、悪性症候群の症状が現れることがある。
  • 横紋筋融解症
    筋肉痛、脱力感、CK(CPK)値上昇、血中および尿中ミオグロビン上昇など横紋筋融解症が現れることがある。
  • 間質性肺炎
    発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等、間質性肺炎の症状が現れることがある。この薬剤に対するアレルギー反応が原因と考えられている。
  • 遠心性環状紅斑 skin lesions [11]

眼瞼痙攣はエチゾラムを扱う製薬会社のみから副作用掲載のための問い合わせがあったため掲載されているが[12]、ベンゾジアゼピン系など同類の薬剤で起こる可能性があり、ベンゾジアゼピン眼症として提案されている[13]

依存性

日本では2017年3月に「重大な副作用」の項に、連用により依存症を生じることがあるので用量と使用期間に注意し慎重に投与し、急激な量の減少によって離脱症状が生じるため徐々に減量する旨が追加され、厚生労働省よりこのことの周知徹底のため関係機関に通達がなされた[3]奇異反応に関して[14]、錯乱や興奮が生じる旨が記載されている[3]医薬品医療機器総合機構からは、必要性を考え漫然とした長期使用を避ける、用量順守と類似薬の重複の確認、また慎重に少しずつ減量する旨の医薬品適正使用のお願いが出されている[15]。調査結果には、日本の診療ガイドライン5つ、日本の学術雑誌8誌による要旨が記載されている[14]


  1. ^ a b c d e 世界保健機関薬物専門委員会 (16 November 2015). Etizolam (INN) : Pre-Review Report Agenda item 5.7 - (PDF) (Report). Expert Committee on Drug Dependence Thirty-seventh Meeting. p. 6-8,17. 2016年11月5日時点のオリジナル (pdf)よりアーカイブ。2024年4月21日閲覧
  2. ^ 奈女良, 昭、牧田, 亨介、長尾, 正崇「ベンゾジアゼピン系薬物とその代謝物の検出における4種類の薬物検査デバイスの比較--主としてチエノジアゼピン系薬物エチゾラムの検出について」『中毒研究』第24巻第1号、2011年、27-34頁、NAID 40018756121 
  3. ^ a b c 厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長『催眠鎮静薬、抗不安薬及び抗てんかん薬の「使用上の注意」改訂の周知について (薬生安発0321第2号)』(pdf)(プレスリリース)https://www.pmda.go.jp/files/000217230.pdf2017年3月25日閲覧 、および、使用上の注意改訂情報(平成29年3月21日指示分)”. 医薬品医療機器総合機構 (2017年3月21日). 2017年3月25日閲覧。
  4. ^ a b 世界保健機関 (1989). WHO Expert Committee on Drug Dependence - Twenty-sixth Report / WHO Technical Report Series 787 (pdf) (Report). World Health Organization. pp. 10–11. ISBN 92-4-120787-6
  5. ^ a b 松本俊彦「処方薬乱用・依存からみた今日の精神科薬物治療の課題:ベンゾジアゼピンを中心に」『臨床精神薬理』第16巻第6号、2013年6月10日、803-812頁。 
  6. ^ a b 日本薬剤師会. 全国統一調剤事故防止研修:患者さんの命と健康を守るために (pdf) (Report). 2015年3月1日閲覧
  7. ^ a b 新体制期」『日本病院薬剤師会創立50周年 日本病院薬剤師会の歴史』日本病院薬剤師会、2005年、119頁http://www.jshp.or.jp/gaiyou/50nenshi.html  平成17年度事業報告 (PDF) によれば、『日病薬誌』平成17年2月~平成18年1月に連載された。
  8. ^ a b 主任研究者、齋藤壽一 (30 March 2005). 平成17年度厚生労働科学研究費補助金 特別研究事業 処方せんの記載方法に関する医療安全対策の検討 報告書 (pdf) (Report). 2015年3月1日閲覧"議事次第". 第1回 内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会. 25 May 2009.における資料。
  9. ^ 日本精神科救急学会『精神科救急医療ガイドライン 2011年版―規制薬物関連精神障害』へるす出版、2012年。ISBN 978-4-89269-766-1 
  10. ^ Wakakura M, Tsubouchi T, Inouye J (March 2004). “Etizolam and benzodiazepine induced blepharospasm”. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatr. 75 (3): 506-7. doi:10.1136/jnnp.2003.019869. PMC 1738986. PMID 14966178. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1738986/. 
  11. ^ Kuroda K, Yabunami H, Hisanaga Y (January 2002). “Etizolam-induced superficial erythema annulare centrifugum”. Clin. Exp. Dermatol. 27 (1): 34-6. doi:10.1046/j.0307-6938.2001.00943.x. PMID 11952667. 
  12. ^ 若倉雅登 (2017年10月5日). “薬の副作用 不十分な報告制度”. 読売新聞. https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171003-OYTET50050/ 2018年3月1日閲覧。 
  13. ^ 若倉雅登「快適な視覚とそれを乱すもの」『化学教育』第65巻第3号、2017年、142-143頁、doi:10.20665/kakyoshi.65.3_142NAID 130006038453 
  14. ^ a b 医薬品医療機器総合機構『調査結果報告書』(pdf)(プレスリリース)医薬品医療機器総合機構、2017年2月28日http://www.pmda.go.jp/files/000217061.pdf2017年3月25日閲覧 
  15. ^ 医薬品医療機器総合機構 (2017-03). “ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について” (pdf). 医薬品医療機器総合機構PMDAからの医薬品適正使用のお願い (11). https://www.pmda.go.jp/files/000217046.pdf 2017年3月25日閲覧。. 
  16. ^ Nakamae T, Shinozuka T, Sasaki C, et al. (November 2008). “Case report: Etizolam and its major metabolites in two unnatural death cases”. Forensic Sci. Int. 182 (1-3): e1-6. doi:10.1016/j.forsciint.2008.08.012. PMID 18976871. 
  17. ^ 『読売新聞』2000年6月3日朝刊39面。
  18. ^ エチゾラムおよびゾピクロンの向精神薬指定に伴う投薬量の制限について”. www.ssk.or.jp. 保険請求の基礎知識. 社会保険診療報酬支払基金 (2016年12月). 2019年1月17日閲覧。
  19. ^ 新たに向精神薬に指定される内服薬の投薬期間について(案)”. www.mhlw.go.jp. 厚生労働省. pp. 9-10 (2016年9月28日). 2019年1月17日閲覧。
  20. ^ Woolverton WL, Nader MA (December 1995). “Effects of several benzodiazepines, alone and in combination with flumazenil, in rhesus monkeys trained to discriminate pentobarbital from saline”. Psychopharmacology (Berl.) 122 (3): 230-6. doi:10.1007/BF02246544. PMID 8748392. 
  21. ^ 世界保健機関 (2019). WHO Expert Committee on Drug Dependence - Forty-second Report / WHO Technical Report Series 1026 (Report). World Health Organization. pp. 27–29. ISBN 978-92-4-000185-5
  22. ^ Shimane T, Matsumoto T, Wada K (October 2012). “Prevention of overlapping prescriptions of psychotropic drugs by community pharmacists”. 日本アルコール・薬物医学会雑誌 47 (5): 202–10. PMID 23393998. https://europepmc.org/article/med/23393998. 
  23. ^ デパスの取り締まりが「遅すぎた」と言われる訳 | 「合法薬物依存」の深い闇”. 東洋経済オンライン (2019年12月31日). 2020年5月22日閲覧。
  24. ^ World Health Organization (6 December 2017). ETIZOLAM Critical Review Report Agenda Item 4.13 : Expert Committee on Drug Dependence Thirty-ninth Meeting (pdf) (Report). 世界保健機関. 2017年12月5日閲覧
  25. ^ Hirase M, Ishida T, Kamei C (November 2008). “Rebound insomnia induced by abrupt withdrawal of hypnotics in sleep-disturbed rats”. Eur. J. Pharmacol. 597 (1-3): 46-50. doi:10.1016/j.ejphar.2008.08.024. PMID 18789918. 
  26. ^ Kawajiri M, Ohyagi Y, Furuya H, et al. (February 2002). “A patient with Parkinson's disease complicated by hypothyroidism who developed malignant syndrome after discontinuation of etizolam” (Japanese). Rinsho Shinkeigaku 42 (2): 136-9. PMID 12424963. 
  27. ^ 戸田克広「ベンゾジアゼピンによる副作用と常用量依存」『臨床精神薬理』第16巻第6号、2013年6月10日、867-878頁。 






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