ウォール・オブ・デス (曲芸) ウォール・オブ・デス (曲芸)の概要

ウォール・オブ・デス (曲芸)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/04 17:45 UTC 版)

典型的な会場の外観「Wild Wheels Thrill Arena」。2016年、アメリカ合衆国で撮影。
曲乗りを見せるライダーが近くを通るのを見る観衆。2009年、イギリスで撮影。

日本では、オートバイサーカスと称して興行されている。

4つのオートバイの同時レース。2017年、ドイツで撮影。

観衆は、円筒の上部から、中を見下ろす。ライダーたちは、円筒の底の中央からスタートし、底に近い傾斜のついた部分を登りながら、やがて床と平行な水平状態での走行が可能になるまでスピードを上げ、通常は反時計回りに周回する(この技の物理的な説明については、バンク・ターン英語版遠心力を参照)。

アメリカ合衆国

1920年代に、ヘイガーズ・ウォール・オブ・デス (Hager's Wall of Death) で活用した女性ライダー、ヘイゼル・ワトキンス (Hazel Watkins)。

1900年代始めのアメリカ合衆国におけるオートバイボードトラックレース英語版(モータードローム)から直接派生したもので、最初の見世物としてのモータードロームは、1911年ニューヨークコニーアイランドの遊園地に登場した。翌年には、各地を巡業する移動遊園地に、移動可能なトラックを設ける見世物が登場し始めた。1915年には、垂直の壁面を備えた最初のサイロドロームが登場し、程なくしてウォール・オブ・デスとも称されるようになったが、そのように呼ばれた最初の見世物は、ニューヨーク州バッファローで興行していたブリッドソン・グリーン (Bridson Greene) の一座だった[3]。また、直立した壁で囲まれたサイロ状の走路ではなかったが、1915年サンフランシスコ万国博覧会に出展された大規模なモータードロームの走路の一部には、頂頭部が垂直に直立した部分が組み込まれており、オートバイだけでなく、自動車によっても走行された[4]

当時、最も広く使用されていたのは、第一世代のインディアンスカウト英語版のモデル(1928年以前)で、排気量は37立法インチ(およそ600cc)であった。この見世物は、アメリカ合衆国における、屋外興行の事業にとって重要な柱の一つとなり、1930年代には全盛期を迎え、百を超えるモータードロームが、移動遊園地や、通常の遊園地で興行していた。

アメリカ合衆国では、アメリカン・モーター・ドローム・カンパニー (the American Motor Drome Company) が1920年代製のビンテージのインディアン・スカウトを数台用いて、全盛期の様子を再現している。アメリカン・モーター・ドローム・カンパニーは、スタージス・モーターサイクルの殿堂 (the Sturgis Motorcycle Hall of Fame) に入ったライダーを2人擁している唯一の団体であり、ジェイ・ライトニン (Jay Lightnin') が2014年に、サマンサ・モーガン (Samantha Morgan) が2006年に殿堂入りを果たしている。2015年、インディアン・モーターサイクル社 (the Indian Motorcycle company) は、新モデルのインディアン・スカウトのお披露目の場にアメリカン・モーター・ドローム・カンパニーを選び、通常のショーで使用されている1926年製と1927年製のモデルとともに、新モデルを壁面走行させた。アメリカ合衆国における最新のウォール・オブ・デスのショーは、ワイルド・ホイールズ・スリル・アリーナ (Wild Wheels Thrill Arena) で、伝統的なカーニバル・ミッドウェイ・ショーズ (the Carnival Midway Shows) のスタイルで開催されている。

イギリス

この見世物は、イギリスでも人気を博し、様々な催しの際に披露されるようになった。

イギリスにおける最初のウォール・オブ・デスは、1929年6月にサウスエンド=オン=シーにあった世界最古の遊園地のひとつカーサル英語版に登場し、高さ20フィート (6.1 m) の木製の壁をバイクが走った。最初のライダーとなったのは、南アフリカ連邦でショーをしていたところをマルコム・キャンベルに見出されたビリーとマージョリーのウォード夫妻 (Billy and Marjorie Ward) であった。イギリスでは、カーサルとジョージ・"トルネード"・スミス (George 'Tornado' Smith) が、この見世物の代名詞となった。1930年代半ばには、50ほどの団体が全国で興行しており、アーサー・ブラノン (Arthur Brannon) のようなライダーが登場し、サイドカーに動物を乗せて走行するといった芸も見せるようになって、雌ライオンを乗せて走ったこともあったが、第二次世界大戦の勃発によってこうした見世物はいったん休止に追い込まれた。戦後に、再開した団体は少数であったが、トッド・ファミリー・ウォール・オブ・デス (the Todd Family Wall of Death) は、1951年フェスティバル・オブ・ブリテン英語版にも登場し、フランク・シニア (Frank Senior)、ジョージ (George)、ジャック (Jack)、ボブ (Bob)、フランク・ジュニア (Frank Junior) らが出演した。この興行には女性ライダーが参加することもあり、イングランド初の女性ライダーと考えられているグラディス・サッター (Gladys Soutter) や、遅れて加わったその妹ウィニフレッド(ウィン)・サッター (Winniefred (Wyn ) Soutter) が出演し、後者は後に同僚ライダーであったジョージ・トッドと結婚した。女性ライダーたちはその後も現在まで活動し続けている[5][6]

しかし、2000年代には、ごく少数の団体が興行するだけとなっており、「ザ・デモン・ドローム (The Demon Drome)」[7]、「メッシャムズ・ウォール・オブ・デス (Messhams Wall of Death)」、「ケン・フォックス・トゥループ (Ken Fox Troupe)」が知られている[8]。これらの団体は、1920年代以来使用され続けている、オリジナルのインディアンのバイクを使用している。

2016年3月28日マン島TTレースでも活躍したレーサー、ガイ・マーティン英語版は、ウォール・オブ・デスの世界記録を樹立した。マーティンは、イギリスのテレビ局チャンネル4で放送された『Guy Martin's Wall of Death』という番組の生放送中に、78.150 mph (125.770 km/h)の速度に達した。


  1. ^ The Harley-Davidson Reader. Jean Davidson, Hunter S. Thompson, Sonny Barger. MotorBooks International, 15 Aug 2006
  2. ^ Mahanakorn's Physics Magic: The Wall Of Death. Retrieved on 2015-10-12.
  3. ^ "The Pictorial History of the American Carnival - Volume 1" by Joe McKennon
  4. ^ d’Orléans, Paul (2015年11月4日). “1915 'RACE FOR LIFE' - THE FIRST 'WALL OF DEATH'?”. Paul d’Orléans. 2017年8月15日閲覧。
  5. ^ The Kursaal Flyers, Nick Corble, Essex Life, February 2007
  6. ^ Ken Fox Hellriders: a Journey With the Wall of Death Gary Margerum, The History Press April 1, 2012. ISBN 0752465732
  7. ^ Demon Drome Wall of Death”. 2017年2月1日閲覧。
  8. ^ new home page”. 2017年2月1日閲覧。
  9. ^ Neena Sharma, Well of Death faces extinction, The Tribune, Chandigarh, India - Dehradun Plus
  10. ^ S. Harpal Singh (2005年12月15日). “Defying death in `maut ka kuan'”. The Hindu. 2017年8月18日閲覧。
  11. ^ 'Well of Death' carnival show in India at PoeTV.com
  12. ^ ਸਾਂਝਾ ਪੰਜਾਬ ਕਿਸ਼ਤ-26, Punjabi Newspaper Ajit
  13. ^ India's 'well of death', Reuters
  14. ^ 手塚耕一郎 (2016年9月11日). “フォトスクランブル:ワールドオートバイサーカス 樽の中の妙技に歓声”. 毎日新聞・北海道: p. 26  - 毎索にて閲覧:手塚耕一郎 (2016年9月10日). “オートバイサーカス たるの中で曲芸、見る絶叫マシン!”. 毎日新聞社. 2017年8月19日閲覧。
  15. ^ a b 宮﨑健太郎 (2015年4月23日). “ケリさんの職場は「ウォール・オブ・デス」なのdeath!!”. ロレンス. 2017年8月20日閲覧。
  16. ^ a b オートバイサーカス〜21世紀に残る見世物興行の世界〜”. ジェイ・ブイ・ディー. 2017年8月20日閲覧。
  17. ^ 塚田敏信 (2016年11月4日). “(まち歩きのススメ)神仏編 栗山天満宮例大祭の露店 心躍る、ずらり300店”. 朝日新聞・夕刊・北海道: p. 6  - 聞蔵IIビジュアルにて閲覧
  18. ^ 第33作 男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎”. 松竹. 2017年8月19日閲覧。
  19. ^ ecofilms web site, Thessaloniki Documentary Film Festival web site
  20. ^ ΠΡΟΓΡΑΜΜΑ 5ου FESTIVAL CULT ΕΛΛΗΝΙΚΟΥ ΚΙΝΗΜΑΤΟΓΡΑΦΟΥ”. 2017年2月1日閲覧。
  21. ^ Richard & Linda Thompson – Shoot Out The Lights - Discogs (発売一覧)
  22. ^ Richard Thompson's website
  23. ^ Shirley, Chris (2016年12月14日). “Daredevil, India”. Photo of the Day (National Geographic). http://www.nationalgeographic.com/photography/photo-of-the-day/2009/12/daredevil-india-pod-best09/ 


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