イランの核開発問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/13 13:55 UTC 版)
概要
イランは医療用アイソトープの生産を行う首都テヘランにある原子炉の稼働のため、20%高濃縮ウランの自国製造を進めている。通常の原子力発電では低濃縮ウランで十分であり、高濃縮ウランを用いるのは原子爆弾の製造を狙っているからではないか、とアメリカなどから疑いをかけられた。ただし原子爆弾には90%以上の高濃縮ウランが必要であるため、意見が分かれた。イランは自ら加盟する核不拡散条約(NPT)の正当な権利を行使しているのであり、核兵器は作らないと主張した。当時の第6代イラン大統領マフムード・アフマディーネジャードは『Newsweek』2009年10月7日号の取材に対して「核爆弾は持ってはならないものだ。」と否定する発言をしている。
これに対して核保有国アメリカは、イランの主張に疑念を持ち、核兵器保有に向けての高濃縮ウランであると主張して、国際的にイランを孤立化させようとする政策を取ってきた。これらには政治的思惑が見え隠れしており、疑惑段階でイランに経済制裁をとる一方で、既に核兵器を保有しているパキスタンやインドなどにはイランのようなボイコット(制裁)を行わなかった。
2015年にイランは「P5プラス1またはEU3+3」(パリ合意などでイランと交渉していた英仏独と欧州連合に、米中露が加わったもの)との協議で、核開発施設の縮小や条件付き軍事施設査察などの履行を含む最終合意を締結し、核兵器の保有に必要な核物質の製造・蓄積を制限することとなった[1]。これをイラン核合意(JCPOA)という。
国連常任理事国であり核保有国である5カ国に加えドイツがメンバーとなっている背景には、ドイツとイランの(とりわけ原子力分野における)密接な経済的結びつきがある。イランの核開発はかなりの程度ドイツの原子力技術に依存しており、シーメンスを始めとするドイツの主要企業がイランとの深いつながりを持っていた[2]。
- ^ “イラン制裁解除、世界に光と影”. 『日本経済新聞』. (2016年1月18日) 2016年1月23日閲覧。
- ^ “Germany's Pivotal Role in the Iranian Nuclear Standoff – Carnegie Endowment for International Peace”. 2013年11月26日閲覧。
- ^ “ガザ支援船をイスラエル軍が強襲、10人以上死亡 トルコ強く抗議”. AFP通信. (2010年5月31日) 2012年2月17日閲覧。
- ^ “イスラエルが破壊したシリアの核施設の手掛りは平壌との電話通話量だった”. 現代コリア. (2009年11月9日) 2012年2月16日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “北朝鮮、イランに潜水艇輸出 米韓が確認”. 『朝日新聞』. (2010年6月9日) 2012年2月17日閲覧。
- ^ “中印、物々交換で原油輸入 イラン制裁回避へ自国通貨取引も”. ブルームバーグ. (2012年3月31日) 2012年4月11日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “イランと米欧など6カ国、核協議で最終合意”. 『朝日新聞』. (2015年7月14日) 2016年1月23日閲覧。
- ^ “イラン、「外交的勝利」にわく ロウハニ政権への支持も拡大”. 『産経新聞』. (2015年7月16日) 2016年1月23日閲覧。
- ^ “IAEA、イランの核設備縮小を確認 米欧は制裁解除へ”. 『日本経済新聞』. (2016年1月17日) 2016年1月23日閲覧。
- ^ “イラン制裁解除へ、米欧など6カ国 核合意履行受け”. 『日本経済新聞』. (2016年1月18日) 2016年1月23日閲覧。
- ^ “イラン核合意に関する米国大統領の発表について(外務大臣談話)”. 外務省 (2018年5月9日). 2023年5月19日閲覧。
- ^ “イラン核問題:経緯” (PDF). 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター. 2023年5月19日閲覧。
- ^ “イラン攻撃、「真剣検討」”. 時事通信. (2009年3月5日)[リンク切れ]
- ^ http://sankei.jp.msn.com/world/america/090322/amr0903221911000-n2.htm[リンク切れ]
- ^ “イランが核燃料工場完成を発表”. 『産経新聞』. (2009年4月10日)[リンク切れ]
- ^ http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090410/mds0904100059001-n1.htm[リンク切れ]
- ^ http://jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009052500030[リンク切れ]
- ^ https://web.archive.org/web/20090607040556/mainichi.jp/select/world/news/20090606k0000e030041000c.html[リンク切れ]
- ^ http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/090615/mds0906150955004-n1.htm[リンク切れ]
- ^ http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2009080100210[リンク切れ]
- ^ John Bolton: Israel will attack Iran by end of 2009 - YouTube 2009/08/06 RT
- ^ “「イラン核兵器開発の脅威は誇張」IAEA事務局長”. 『日本経済新聞』. (2009年9月2日)[リンク切れ]
- ^ “オバマ大統領、軍事手段も排除せず イラン核施設問題”. 『産経新聞』. (2009年9月25日)[リンク切れ]
- ^ “イラン、2カ所のウラン濃縮施設認める 米などは非難”. 『産経新聞』. (2009年9月26日)[リンク切れ]
- ^ http://jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009092600113
- ^ “イラン、新核施設の査察を容認 月内に次回協議”. 『産経新聞』. (2009年10月2日)[リンク切れ]
- ^ “イラン核で決議採択 施設建設停止を要求”. 『産経新聞』. (2009年11月27日)[リンク切れ]
- ^ “イラン、国際圧力に態度を硬化 ウラン施設新設表明”. 『朝日新聞』. (2009年11月30日)[リンク切れ]
- ^ “ウラン濃縮率20%を命令=IAEA案拒否”. 時事通信. (2010年2月7日)[リンク切れ]
- ^ “イラン:ウラン濃縮を開始 制裁への流れに抵抗”. 『毎日新聞』. (2010年2月9日). オリジナルの2010年2月18日時点におけるアーカイブ。 2010年2月9日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “イラン核問題、米大統領が「制裁体制つくっていく」”. 『朝日新聞』. (2010年2月10日)[リンク切れ]
- ^ “自国でのウラン交換を支持=トルコ首相”. 時事通信. (2010年2月15日) 2011年7月19日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “イラン大統領、「核燃料を提供なら高濃縮ウラン製造中止も」”. サーチナ. (2010年2月17日)
- ^ “イランが核弾頭を開発か IAEA報告書”. CNN.co.jp. (2010年2月19日) 2010年2月19日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “イラン:低濃縮ウランの搬出 トルコ、ブラジルと合意”. 『毎日新聞』. (2010年5月17日). オリジナルの2010年5月19日時点におけるアーカイブ。 2010年5月18日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “「制裁は無価値」=ウラン濃縮活動継続を表明-イラン大統領”. 時事通信. (2010年6月10日) 2010年6月10日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “核交渉の9月再開表明=EU独自制裁には反発-イラン大統領”. 時事通信. (2010年7月27日) 2010年7月27日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “サウジ、エジプトも核開発着手 イラン成功ならと首脳警告”. 47NEWS. (2010年12月3日) 2010年12月3日閲覧。
- ^ “イラン核問題:6カ国と協議終了「数年で重大局面」”. 『毎日新聞』. (2011年1月23日) 2011年1月23日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “Former State Department spokesman: Israel will not attack Iran anytime soon”. ハアレツ. (2011年7月18日) 2011年7月19日閲覧。
- ^ “イスラエル、4〜6月にイラン攻撃も 米国防長官危惧と米紙”. 『産経新聞』. (2012年2月3日) 2012年2月16日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “イラン 国産の核燃料棒装墳”. 『東京新聞』. (2012年2月15日) 2012年2月16日閲覧。
- ^ “イラン「新型遠心分離器開発」 米欧、イスラエルの反発必至”. 『産経新聞』. (2012年2月16日) 2012年2月16日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 「イスラエル、イランが核兵器を追求していないことを認める」 IRIB, 2012年3月20日16時25分配信[リンク切れ]
- ^ ““イランと戦闘30日間続く””. NHK NewsWeb. (2012年8月16日) 2012年8月16日閲覧。[リンク切れ]
- ^ Saudi Arabia to help Israel in possible Iran attack: reportALALAM 2013年11月17日
- ^ “イラン核協議:「第1段階の措置」で合意”. 『毎日新聞』. (2013年11月24日) 2013年11月24日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “イラン外相が中国を訪問 イラン核合意の当事国歴訪スタート”. 産経ニュース. (2018年5月13日) 2018年5月28日閲覧。
- ^ “核合意5カ国に貿易保護策要求 米離脱後初協議”. 『毎日新聞』. (2018年5月26日) 2018年5月28日閲覧。
- ^ 「核合意存続へ経済支援/EU イランとの仲介組織」『読売新聞』朝刊2019年2月13日(国際面)。
- イランの核開発問題のページへのリンク