IS-MP-IAモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/12 18:36 UTC 版)
「IS-MPモデル」の記事における「IS-MP-IAモデル」の解説
ここまでIS-MPモデルによって、ある時点における産出量、金利、為替レート、純輸出に関する短期変動を分析した。このIS-MPモデルは、産出量が財の総需要によって決定されるという考え方に基づいている。ここで分析を拡張してインフレの動向をモデルに組み込む。インフレの動向は、企業が財やサービスの需要にどのように反応するかによる。したがって、インフレは総供給の問題である。 インフレの動向について次のように仮定する。 ある時点のインフレ率は所与である。したがって同じ時点の産出量の影響を受けない。 産出量が自然産出量を上回るとインフレ率が上昇する。 産出量が自然産出量を下回るとインフレ率が低下する。 ここで自然産出量というのは、価格が完全に伸縮的に動く場合の産出量である。しかし、短期的には価格が完全に伸縮的に動かないので、産出量が自然産出量に等しいとは限らない。 中央銀行の金融政策ルールに関する仮定を拡張して次のように仮定する。 中央銀行が選択する実質金利は、産出量だけでなくインフレ率にも依存する。 インフレ率が上昇すると中央銀行は実質金利を引き上げる。 インフレ率が低下すると中央銀行は実質金利を引き下げる。 以上の仮定にもとづきAD-IA図をつかってインフレの動向を説明する。AD-IA図は縦軸にインフレ率をとり横軸に産出量をとる。 まずは総供給を考える。ある時点におけるインフレ率が与えられている。これは横線で示される。この横線は、ある時点のインフレ率がその時の産出量に依存しないことを示している。むしろ産出量は時間の経過とともにインフレに影響を与える。つまり、産出量が自然産出量より多いか少ないかに応じて、横線が上下にシフトする。この横線はインフレ率が時間の経過でどよのうに変化するかを決定するため、これをIA線(インフレ調整線)と呼ぶ。 つぎに総需要を考える。インフレ率が高いほど中央銀行は実質金利を引き上げる。つまりインフレ率の上昇はMP曲線を上にシフトさせる。経済はIS曲線に沿って左上に移動し、産出量は減る。したがって、総需要の面からいうとインフレと産出量の間には負の関係がある。これをAD曲線(総需要曲線)と呼ぶ。 総供給と総需要を組み合わせて、インフレ率と産出量の変化の仕方を記述しよう。まずAD-IA図に自然産出量を示す縦線を追加する。産出量はAD曲線とIA曲線の交点によって決定される。したがって、この交点が自然産出量の縦線より右か左かを調べれば産出量が自然産出量よりも多いか少ないか分かる。たとえば、交点が縦線より右にある場合は、産出量が自然産出量を上回っている。このことはIA線が上にシフトすることを意味する。IA線が上にシフトするにつれて、交点はAD曲線に沿って左上に移動する。したがってインフレ率が上がり産出量が減る。その背後では、中央銀行がインフレ率の上昇に反応して実質金利を引き上げている。
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