Cowan のモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 08:27 UTC 版)
「ワーキングメモリ」の記事における「Cowan のモデル」の解説
Cowan (2005) では、ワーキングメモリを独立したシステムではなく、長期記憶の一部と見なしている。このモデルでは、ワーキングメモリの内容は長期記憶の内容の一部であるとする。長期記憶は3つの状態をとることができ,ワーキングメモリはそのうち2つの状態から構成される。ワーキングメモリに含まれないのは、長期記憶の活性化していない部分である(通常の意味での長期記憶に相当する)。ワーキングメモリに含まれる第1の状態は活性化した長期記憶の一部に対応する。長期記憶の活性化は量的には限界がなく、同時的に多数の情報が活性化することがある。ただし、情報の活性化には時間限界があり、リハーサルしない限りは時間とともに活性化の程度が低くなっていく。第2の状態は注意の焦点(focus of attention)と呼ばれる。注意の焦点の容量には限界があり、同時に注意を向けることができるのは、活性化した長期記憶の構成要素のうち最大で4つのチャンクである。Cowanのモデルでは、情報を注意の焦点に持ってくることがリハーサルに相当する。これらの状態は入れ子状になっており、長期記憶の活性化していない部分、長期記憶の活性化している部分、注意の焦点の順に階層が深くなっていく。そのため、ある情報を注意の焦点に持ってくるには、いったんその情報を活性化させねばならない。 Oberauer (2002) は、Cowan のモデルを拡張して、1つのチャンクにだけより大きな注意を向ける第3の状態を導入した。このモデルの利点は、以下のように説明できるだろう。例えば、Cowan のモデルによれば人間は同時に4つの数字に注意を向けることができる。しかし、それら4つの数字にそれぞれ同時に 2 を足すことはできないだろう。ほとんどの人間は数学的な処理を並行して行うことは出来ず、順番に1つずつ足し算するしかない。Oberauer のモデルでは、4つの数字から1つだけを高次レベルの焦点に選んで処理を行っていくとすることでこのことを説明する。
※この「Cowan のモデル」の解説は、「ワーキングメモリ」の解説の一部です。
「Cowan のモデル」を含む「ワーキングメモリ」の記事については、「ワーキングメモリ」の概要を参照ください。
- Cowan のモデルのページへのリンク