40-40クラブ
(4040 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/27 23:25 UTC 版)

40-40クラブ(40-40 club)は、MLBにおいて1シーズンに40本塁打以上と40盗塁以上を同時に達成した選手たちのことを指す。
概要

40-40クラブのメンバーになることは、現代のアメリカ野球ではなかなか達成できない偉業である。1つのシーズン中に40本のホームランを打つパワーと40個の盗塁をこなすスピードの両方を兼ね備えた選手はほとんどいないためである。一般的に、40本のホームランを打てるパワーのある選手は40個の盗塁に必要なスピードを持っておらず、その逆もまた同様である。これは、MLBの統計的傾向が変化しても同じで、1980年代の盗塁数は異常に多かったものの、40本のホームランに到達した選手はほとんどいなかった。1990年代後半にはホームラン数は非常に多くなったものの、盗塁という戦術があまり使われなくなったため、盗塁数はより稀になった。しかし、2023年シーズンから導入されたベースサイズ拡大や牽制球制限の新ルールによってMLB全体の盗塁数が急増し[1]、2023年から2年連続で達成者が現れた。
MLB史上で40-40達成者は6人であり、複数回達成した選手はいない。ホセ・カンセコが1988年に初めて達成[2][3]。達成者にはラテン系や黒人選手が名を連ね、白人選手の達成者はいない。アジア人選手としては2024年に日本人選手の大谷翔平が初めて達成した[4]。
達成した6人のうち、4人は右打者、2人は左打者だった。バリー・ボンズとアレックス・ロドリゲスは通算600本塁打達成者であり[5]、カンセコ、ロナルド・アクーニャ・ジュニア、大谷は達成した年にMVPに選出され(ボンズは5位、ソリアーノは6位、ロドリゲスは9位)、またカンセコ、大谷はワールドシリーズに進出した[6]。なお40-40を上回る記録としては、アクーニャ・ジュニアはMLB史上初となる40-70(41本塁打・73盗塁)、大谷はMLB史上初となる50-50(54本塁打・59盗塁)を達成している。
ソリアーノは40-40の他に41二塁打を記録している[7][8]。ロドリゲス(遊撃手)と大谷(指名打者)以外の達成者はいずれも外野手である[注 1]。現役でない達成者はすべて通算400本塁打かつ通算200盗塁を達成している。カンセコ、ボンズ、ソリアーノは40本塁打のあとに40盗塁を達成し、ロドリゲスとアクーニャ・ジュニアは40盗塁のあとに40本塁打を達成した。大谷は同じ試合中に両方を達成した唯一の選手であり、4回に40個目の盗塁、9回裏に40本目となるサヨナラ満塁本塁打を放ち達成した[10]。
これまで、複数回達成者はいないが、アクーニャ・ジュニア(2019年 41-37)、ソリアーノ(2002年 39-41) 、ボンズ(97年 40-37)が複数回達成に近い記録を残し、カンセコが40-40に近づいたのは1998年(46-29)だった。ロドリゲスは他に40本塁打を7回記録したが、いずれの年も24盗塁を超えたことはなかった。
ボビー・ボンズ (1973年 39-43) 、前述のソリアーノ、ブラディミール・ゲレーロ (2002年 39-40) 、マット・ケンプ (2011年 39-40) 、ホセ・ラミレス (2024年 39-41) はいずれも39本塁打に終わり、あと1本塁打で達成だった。なお盗塁があと1つで40-40達成となる例はこれまでない。
40-40達成の最速は2024年大谷による126試合目である[10]。以下、ソリアーノ147試合、カンセコ151試合、アクーニャ・ジュニア152試合、ロドリゲス153試合、ボンズ158試合となっている。
達成者
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殿堂入りした選手 |
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現役選手 |
達成年月日 | 選手名 | 達成時の所属球団 | 本塁打 | 盗塁 | 出典 |
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1988年9月23日 | ホセ・カンセコ | オークランド・アスレチックス | 42 | 40 | [11] |
1996年9月27日 | バリー・ボンズ | サンフランシスコ・ジャイアンツ | 42 | 40 | [12] |
1998年9月19日 | アレックス・ロドリゲス | シアトル・マリナーズ | 42 | 46 | [13] |
2006年9月16日 | アルフォンソ・ソリアーノ | ワシントン・ナショナルズ | 46 | 41 | [8] |
2023年9月22日 | ロナルド・アクーニャ・ジュニア![]() |
アトランタ・ブレーブス | 41 | 73 | [14] |
2024年8月23日 | 大谷翔平![]() |
ロサンゼルス・ドジャース | 54 | 59 | [15] |
MLB以外
- NPB(日本プロ野球)において40-40を達成した選手はいない。近い記録としては秋山幸二が1987年に43本塁打38盗塁、1990年に35本塁打51盗塁を記録した。異なるシーズンで40本塁打と40盗塁を記録した選手も、秋山と別当薫しかいない[16]。
- KBO(韓国プロ野球)においては、エリック・テームズが唯一の40-40達成者である。NCダイノスに在籍した2015年に47本塁打40盗塁を記録した[17]。
50-50クラブ
50-50クラブ(50-50 club)は、野球リーグにおいて、1シーズンに50本塁打以上と50盗塁以上を同時に達成した選手達を指す。2025年時点で、メジャーリーグベースボール (MLB) で50-50を達成した人物は大谷翔平のみである。MLB以外のプロリーグにおいては現在、達成者は存在しない。
MLBの歴史上、シーズン50本塁打以上は32人の選手が合計50回しか記録していない[18]。
大谷が50-50を達成するまで、MLBでシーズン50本塁打に到達した選手のうち同じシーズンの盗塁数が最も多かったのは、1955年のウィリー・メイズと2007年のアレックス・ロドリゲスのそれぞれ24盗塁であった[19]。「同一シーズンでなくても50本塁打と50盗塁をそれぞれ達成したことのある選手」に基準を緩めても、該当者はバリー・ボンズ(2001年に73本塁打、1990年に52盗塁)、ブレイディ・アンダーソン(1996年に50本塁打、1992年に53盗塁)および大谷(2024年に54本塁打59盗塁)の3人しかいない[20]。
大谷は2024年9月19日のマイアミ・マーリンズ対ロサンゼルス・ドジャース戦で6打数6安打2盗塁3本塁打10打点を記録し、MLB史上初めて50-50を達成した[21]。大谷は最終的に54本塁打・59盗塁まで記録を伸ばした[22]。
大谷が50-50を達成した2024年は日本ではユーキャン新語・流行語大賞のベストテンに「50-50」[23]、日経MJヒット商品番付の東の横綱に「大谷50-50」が選出された[24]。
達成選手
達成年月日 | 選手名 | 達成時の所属球団 | 本塁打 | 盗塁 | 達成時試合数 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|---|
2024年9月19日 | 大谷翔平 | ロサンゼルス・ドジャース | 54 | 59 | 150 | [25] |
脚注
注釈
出典
- 全般
- “40–40 Club”. Baseball-Almanac.com. Baseball Almanac. 2024年9月23日閲覧。
- Ed Eagle (2024年9月19日). “40-40 club: 40 steals, 40 homers in a season”. MLB.com. 2024年9月23日閲覧。
- 個別
- ^ “ピッチクロックがもたらす盗塁増加 影響は日本でも?”. 日本経済新聞 (2023年9月10日). 2024年9月22日閲覧。
- ^ Eskenazi, Gerald (1988年10月5日). “Canseco Facing High Expectations”. The New York Times 2012年6月17日閲覧。
- ^ THOMAS BOSWELL (1988年8月19日). “Jose Canseco's 40-40 Vision Starting to Come Into Focus”. Los Angeles Times. 2013年3月26日閲覧。
- ^ 福島良一「大谷翔平、前人未到の「50-50」に迫れるか 偉業達成のカギはホームラン - 福島良一の大リーグ It's showtime!」『日刊スポーツ』2024年8月26日。2024年8月26日閲覧。
- ^ “Career Leaders & Records for Home Runs”. Baseball-Reference.com. 2012年5月8日閲覧。
- ^ “Most Valuable Player MVP Awards & Cy Young Awards Winners”. Baseball-Reference.com. 2012年5月24日閲覧。
- ^ “Soriano first ever to reach 40–40–40 mark”. Associated Press. (2012年5月24日). オリジナルの2007年11月2日時点におけるアーカイブ。 2007年7月31日閲覧。
- ^ a b “Alfonso Soriano Statistics and History”. Baseball-Reference.com. 2012年5月10日閲覧。
- ^ “Soriano's first game in left field goes smoothly”. ESPN (Associated Press) (2006年4月3日). 2012年6月25日閲覧。
- ^ a b 「【詳報:一問一答】ドジャース・大谷翔平、史上最速で「40本塁打&40盗塁」達成 試合後も大興奮「50&50? 数字が上がれば勝つ確率が高くなるということ」」『サンスポ』2024年8月24日。2024年8月26日閲覧。
- ^ “Jose Canseco Statistics and History”. Baseball-Reference.com. 2012年5月10日閲覧。
- ^ “Barry Bonds Statistics and History”. Baseball-Reference.com. 2012年5月10日閲覧。
- ^ “Alex Rodriguez Statistics and History”. Baseball-Reference.com. 2012年5月10日閲覧。
- ^ “Ronald Acuña Jr. Statistics and History”. Baseball-Reference.com. 2023年10月2日閲覧。
- ^ 「大谷翔平、「54-59」でトリプルスリー 三冠王は逃す」『日本経済新聞』2024年9月30日。2024年9月30日閲覧。
- ^ 福島良一「日本のプロ野球では前人未到の40―40 最も惜しかったのは43本塁打38盗塁」『スポーツ報知』2024年8月25日。2024年8月26日閲覧。
- ^ “Eric Thames becomes first with 40–40 in S. Korean baseball; Park Byung-ho sets RBI mark”. Yonhap. (2015年10月2日) 2015年10月2日閲覧。
- ^ “Single-Season Leaders & Records for Home Runs”. Baseball-Reference.com. 2025年7月28日閲覧。
- ^ Ramon Padilla (2024年9月19日). “Shohei Ohtani the first MLB player to hit 50 home runs and steal 50 bases” (英語). USA Today 2025年7月28日閲覧。
- ^ Mike Axisa (2024年9月20日). “Shohei Ohtani records first 50-50 season in MLB history: Dodgers superstar slugs 50 homers, steals 50 bases” (英語). CBS Sports 2025年7月28日閲覧。
- ^ “大谷翔平、おめでとう! 「50-50」達成 2発&2盗塁で一気に決めた”. 日刊スポーツ. (2024年9月20日) 2024年9月20日閲覧。
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: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ RotoWire Staff (2024年9月29日). “Dodgers' Shohei Ohtani: Finishes with 59 steals” (英語). CBS Sports 2025年7月28日閲覧。
- ^ “「50-50」まさかの『新語・流行語』年間大賞逃す ここ10年で「神ってる」や「村神様」など野球関連が5度受賞も”. ORICON NEWS (2024年12月2日). 2024年12月3日閲覧。
- ^ “「大谷50-50」「新NISA」が横綱 24年ヒット商品番付”. 日本経済新聞 (2024年12月3日). 2024年12月3日閲覧。
- ^ “Tracking Shohei Ohtani's quest for 50 home runs, 50 stolen bases”. 2025年2月24日閲覧。
関連項目
- 40-40クラブのページへのリンク