2,4,6‐トリクロロアニソールとは? わかりやすく解説

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2,4,6‐トリクロロアニソール

分子式C7H5Cl3O
その他の名称チレン、Tyrene、2,4,6-Trichloroanisole、1-Methoxy-2,4,6-trichlorobenzene、1,3,5-Trichloro-2-methoxybenzene
体系名:2-メトキシ-1,3,5-トリクロロベンゼン、2,4,6-トリクロロ-1-メトキシベンゼン、2,4,6-トリクロロアニソール、1-メトキシ-2,4,6-トリクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2-メトキシベンゼン


2,4,6-トリクロロアニソール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/31 05:48 UTC 版)

2,4,6-トリクロロアニソール
2,4,6-Trichloroanisole
Chemical structure of 2,4,6-trichloroanisole
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.001.585
KEGG
RTECS number
  • MFCD00000588
CompTox Dashboard (EPA)
性質
C7H5Cl3O
モル質量 211.47 g·mol−1
外観 白色の結晶
匂い カビ臭
嗅覚閾値 10ppt[1]
融点 60℃
沸点 240℃
不溶
有機溶媒への溶解度 メタノールベンゼンジオキサンに可溶[2]
関連する物質
関連物質 2,4,6-トリクロロフェノール
2,4,6-トリブロモアニソール
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
N verify (what is  N ?)

2,4,6-トリクロロアニソール: 2,4,6-Trichloroanisole)は、アニソール塩素化された有機塩素化合物の一種。TCA2,4,6-TCAと略記される。強いカビ臭を持つ。木材防腐剤などとして使われる物質が微生物に代謝されることによって発生し、しばしばワインなどの異臭の原因となる。

発生

木材保存剤殺菌剤などとして利用されているペンタクロロフェノール(PCP)は、光やカビなどの作用により2,4,6-トリクロロフェノール(2,4,6-TCP)に分解される。2,4,6-TCP自体もまた木材保存剤などとして添加される。2,4,6-TCPはストレプトマイセス属等の微生物の代謝作用によりメチル化され、2,4,6-TCAとなる[3]。毒性の低さから2,4,6-TCPに代えて2,4,6-トリブロモフェノールが使われることがあるが、その場合にも同様に2,4,6-トリブロモアニソール(2,4,6-TBA)が発生する。

パルプの塩素漂白の際に、リグニンの分解生成物のフェノールが塩素化されて2,4,6-TCPが生じ、これが微生物により2,4,6-TCAとなる経路もある[4]

TCAはワインのみならず、劣化した食品やミネラルウォーター、梱包材などからも検出されており、食品の風味劣化の新たな元凶として注目されている[5]

臭気

強いカビ臭を持つ。PCPの嗅覚閾値ppm、2,4,6-TCPがppbの単位であるのに対し、2,4,6-TCAの嗅覚閾値は10ppt(1pptは一分の一)と、ごく低濃度でも匂いを感じる。これは、25mプール(500トン)の水に2,4,6-TCAを0.005g溶かした場合に10人中9人が匂いを感じ取ることができる程度の値である[6]。しばしば、この物質で汚染されたコルクを使用したワインに臭気が移り、コルク臭 (cork taintとして品質劣化の要因となる。このことから、合成樹脂や金属製の栓を使うことが増えている[7]。脂溶性であり、卵黄やパンに含ませた場合には油脂に成分が封じ込められ揮発しにくくなるため、嗅覚閾値が上がり、水やワインに溶いた場合に比べ匂いを感じにくくなる[8]

異性体の2,3,6-TCAおよび2,3,4,6-テトラクロロアニソールもカビ臭を持つが、嗅覚閾値はそれぞれ2ppb、1ppbと、2,4,6-TCAに比べるとやや弱い[1]。2,4,6-TBAもppt単位のカビ臭を持つが、2,4,6-TCAの方が気化しやすく、比較的匂いが付着しやすい[3]

2013年大阪大学大学院生命機能研究科・竹内裕子助教、倉橋隆教授らにより、TCAは鼻に入ると嗅細胞線毛にある匂い情報を変換するチャネルの一つである環状ヌクレオチド依存性チャネル(CNGチャネル)の活性を極低濃度で抑制することが判明した[5]。つまり、TCAはそれ自身の臭気だけでなく、嗅覚そのものを低下させることにより、混入した食品の食味の劣化をヒトに知覚させるのである。

参考文献

  • 加藤寛之・渡辺久夫『食品の匂いと異臭』幸書房、2011年。ISBN 978-4-7821-0352-4 

脚注

  1. ^ a b 『食品の匂いと異臭』 p30(缶詰時報 Vol.74 1995 より)
  2. ^ 製品情報(2,4,6-Trichloroanisole)東京化成工業
  3. ^ a b 『食品の匂いと異臭』 p110-111
  4. ^ 日本食品分析センター「カビ臭の原因物質」(PDF)『JFRLニュース』第4巻第5号、一般財団法人日本食品分析センター、2012年2月。 
  5. ^ a b “ワインのブショネ(コルク汚染)の生態機構解明―ワインのみではなかった、飲食品のおいしさ破壊の原因は、「匂いを感じさせなくする物質・TCA」―”. 大阪大学. (2013年9月17日). http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/ResearchRelease/2013/09/20130917_1 2013年10月10日閲覧。  {{cite news}}: |accessdate=|date=の日付が不正です。 (説明)
  6. ^ 『食品の匂いと異臭』 p12-13
  7. ^ 『食品の匂いと異臭』 p117-118
  8. ^ 『食品の匂いと異臭』 p14-15


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