電信柱
★1.夜に歩く電信柱。
『月夜のでんしんばしら』(宮沢賢治) 月夜の晩、恭一が鉄道線路わきを歩いていると、シグナルの横木が下がったのを合図に、電信柱の列が軍歌とともに前進を開始した。ぼろ外套を着た電気総長の爺さんが、「お一、二(おいちに)、お一、二」と号令をかける。爺さんは恭一と握手し、恭一の身体はびりりっとしびれた。そこへ汽車が来たので、爺さんは「見つかったら大変だ」と、あわてて進軍中止を叫ぶ。電信柱は皆ぴったり止まって、すっかりふだんのとおりになった。
『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版・第26巻76ページ 昔、婚約時代のサザエとマスオは高原でデートし、2人の名前を林の木に刻んだことがあった。後にその木は伐採され、電信柱になった。ある日、サザエとマスオ夫婦は町を歩いていて、自分たちの名前が刻まれた電信柱を見かけ、たいへん驚いた。
★3.電信柱と柳の木の恋。
『若く美しい柳』(コッパード) 街道の柳の木の隣に、電信柱が設置された。電信柱は柳に求婚し、柳はそれを断るが、彼らは仲の良い友人になった。柳は成長し、その枝が電線とからみ合う。役人が「危ないな。放って置くわけにはいかない」と呟き、斧を持つ男を派遣して、柳を切り倒す。電信柱にできるのは、その場に立ち尽くして嘆くことだけだった。日は巡り、月は巡って、やがて電信柱は、若く美しい柳のことを忘れた。
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