銃さげし少年匂ふ冬の磯
作 者 |
|
季 語 |
冬の磯 |
季 節 |
冬 |
出 典 |
|
前 書 |
|
評 言 |
作者は犬吠埼の近くで空気銃をもった少年に出会った。 「その服装から新鮮な野性味を感じ、磯の香にまぎれず強い体臭を放つのを知った」と解説している。 私はこの句を現代の風潮への警鐘として読みたい。 「匂ふ」という表現にこめられたもの・・それは少しずつ濃くなりつつある「きな臭さ」と無縁ではない。 いまも戦さの止まぬ国の少年たちは、生まれた時から玩具のかわりに銃をさげている。生まれた時から周りには「戦争」しかない。 かつてわが国にも「軍国少年」という言葉があった。猟をする少年の銃が人に向けられ、血の臭いを放つ日が二度とあってはならない。 ・・・モノクロの冬の海のざわめきを聞き落としてはならぬ。 原 裕 は原石鼎の没後に養子入籍し、結社「鹿火屋」を引き継ぎ主宰。現在の主宰は四代目の和子夫人。 裕には印象的な父母の句が多い。 二房の葡萄あり父母のなきこの地 杉山に父かと思う滝こだま 秋深し父の影踏む思ひして 母一人子一人の冬門に牛 涅槃図の裏よりとどく母のこゑ 牡丹の一つ一つに父の空 ちちははの魂あそぶ蓬かな その一句一句にまぎれもない裕の少年の心が・・・。 |
評 者 |
|
備 考 |
- 銃さげし少年匂ふ冬の磯のページへのリンク