重根判定法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 01:41 UTC 版)
微分積分学におけると同様に、導函数によって重根の判定が可能である。係数環 R が体ならば A = R[x] はユークリッド環であり、この設定のもとでも「根の重複度」の概念が定義できる —任意の多項式 f とスカラー r に対して、非負整数 mr と多項式 g が一意的に存在して f ( x ) = ( x − r ) m r g ( x ) ( g ( r ) ≠ 0 ) {\displaystyle f(x)=(x-r)^{m_{r}}g(x)\quad (g(r)\neq 0)} とできる。この mr を f の根としての r の重複度と呼ぶのであった—。ライプニッツ則を用いれば、この設定においても、f を繰り返し微分して r が根に現れないようにするために必要な微分の回数が mr であることが確認できる。 この判定法の有効性というのは、「一般には A に属する n-次多項式が重複度を込めて n 個の根を持つということは言えないけれど、係数体を(なかんづく、その代数閉包まで)拡大すればそうできる」のだけれども、こうしてしまうと単に R 上で考えたのでは出てこない根が重根となるかもしれないということにある(例えば、係数環 R を三元体 F3 とするとき、多項式 f ( x ) = x 6 + 1 {\displaystyle f(x)=x^{6}+1} は R において根を持たないが、導多項式は零多項式である(R およびその任意の拡大体において 3 = 0 となるのであった)から、代数閉包に移れば R における因数分解自体からでは見つからない重根がある)。その意味において、形式微分法は重複度の効果的な概念を与えるものになっている。 ガロワ理論では分離拡大(単根しか持たない多項式によって定義される)と非分離拡大を区別するから、このような判定法は重要である。
※この「重根判定法」の解説は、「形式微分」の解説の一部です。
「重根判定法」を含む「形式微分」の記事については、「形式微分」の概要を参照ください。
- 重根判定法のページへのリンク