超フィルター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/30 07:45 UTC 版)

数学において、超フィルター(ちょうフィルター、英: ultrafilter)または極大フィルター(きょくだいフィルター、英: maximal filter)とは順序集合上で定義されたフィルターの中で極大なものをいう。特にブール代数上では超フィルターは素フィルターに一致する。 超フィルターは位相空間論や集合論における最も基本的な概念の一つであり、また多くの分野に応用を持っている。 冪集合は包含関係で自然に順序集合となる。 集合 X の冪集合 P(X) 上の超フィルターは単に X 上の超フィルターとも呼ばれる。X 上の超フィルターは X 上ですべての集合に対して定義された非自明な二値有限加法的測度と同一視することが出来る。この時 X 上の集合は測度の意味で殆ど全体(測度が 1)か殆ど元を含まない(測度が 0)のいずれかに分けられる。
定義と存在
(P, ≤) を順序集合とし F を P の部分集合とする。
- この時、以下の3つの条件を満たすとき F をフィルターという。
- F ≠ ∅。
- 任意の x, y ∈ F に対し、ある z ∈ F が存在して、z ≤ x かつ z ≤ y が成り立つ。
- 任意の x ∈ F, y∈ P について「x ≤ y ならば y ∈ F」が成り立つ。
更にフィルター F が P の真部分集合のとき真のフィルターという。極大な真のフィルターを超フィルターという。つまり
- P 上の真のフィルター U が次を満たすとき超フィルターという。
- U を部分集合に含む P 上の真のフィルター F は U 自身ただひとつ。
以下順序集合 P 上の超フィルター全体を Ult(P) と書く。
- 存在
L を最小元 0 を持った順序集合、F を L 上の有限交叉族とする。このとき F を含む超フィルターが存在する。 実際 F を L 上の有限交叉族としたとき、(L 上のフィルターが真のフィルターとなる必要十分条件は 0 を含まないことから、)F を含む真のフィルター全体は包含関係で帰納的順序集合となる。この集合族はツォルンの補題から極大元を持つ。この極大元は F を含む超フィルターである。
任意のブール代数上での(勝手な有限交叉族を含む)超フィルターの存在はブールの素イデアル定理と呼ばれ、ZF集合論では証明できず、選択公理を弱めた原理であることが知られている。
ブール代数上の超フィルター
B を最小元 0 を持った束、U を B 上の真のフィルターとする。このとき U が超フィルターとなることと次が同値。
- x ∉ U ならば、ある y ∈ U が有って、x ∧ y = 0。
更に、B がブール代数のとき、以下ふたつの条件も超フィルターであることとそれぞれ同値である。
- x ∨ y ∈ U ならば、x ∈ U または y ∈ U (素フィルター)。
- x ∈ B ならば、x ∈ U または ¬x ∈ U。
A, B をブール代数、Φ: A → B をブール代数の準同型、U を B 上の超フィルターとする。U の Φ による逆像 Φ−1(U) = {x ∈ A : Φ(x) ∈ U}(≕ StΦ(U))は A 上の超フィルターとなる。ブール代数 B に空間 Ult(B) を、準同型 Φ に写像 StΦ を対応させる対応はブール代数の圏から位相空間の圏への関手を与える(詳しくはストーンの表現定理を参照)。
逆にブール代数 B 上に超フィルター U が与えられたとき、μU: B → 2 ≔ {0, 1} を
-
出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
- Bridson, Martin R.; haefliger, André (1999), Metric Spaces of Non-positive Curvature, Springer
- Comfort, W.W.; Negrepointis, S. (1974), The Theory of Ultrafilters, Springer; 特に §7. Basic Fact on Ultrafilters: p.144,p.156,p.196,など
- 江田勝哉『数理論理学』内田老鶴圃、2010年。ISBN 978-4-7536-0151-6 。
- 児玉之宏; 永見啓応『位相空間論』岩波書店、1974年。
関連項目
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