貞-宗とは? わかりやすく解説

さだむね【貞宗】

読み方:さだむね

南北朝時代相模刀工通称彦四郎正宗併称される名工正宗養子ともいう。生没年未詳


貞宗

名字 読み方
貞宗さだむね
名字辞典では、珍しい名字を中心に扱っているため、一般的な名字の読み方とは異なる場合がございます。

貞宗

読み方
貞宗さだむね

貞宗

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/18 03:29 UTC 版)

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短刀 無銘貞宗(寺沢貞宗)文化庁保管 国宝

貞宗(さだむね(生没年不詳:元応元年(1319年(3月11日[1]、一説に貞和5年(1349年) [2] 没か))は、鎌倉時代末期の相模国(神奈川県)の刀工で、正宗の子、または養子と伝えられ、現存在銘刀はないが相州伝の代表的刀匠とされている。

系譜

貞宗の名は最古の刀剣書である観智院本『銘尽』に初めて現れる(同書は応永30年(1423年)の写本だが、本文には正和5年(1316年)に記載された内容を含む)[3])。 そこには「正宗五郎入道 貞宗 彦四郎左衛門尉ニにんす」とあり、直接の親子関係は示されていない。 正宗との系譜は注1[1]、注2[3]以外に、文明15年(1483年)に書かれた 『能阿弥本銘尽』に「江州高木ニ住間号高木彦四郎、五郎入道子」と記され[4][5])、現存在銘刀はないが、実在の刀匠である。 また、文亀元年(1501年)の『宇都宮銘鑑』に次のように記される[6]

正宗┬広光 九郎次郎─秋広 貞治頃
  └貞宗 彦四郎

また、「天正7年(1579年)竹屋理庵本」には次のように記される[6]

正宗┬貞宗 正宗長男彦四郎
  ├広光 同弟子九郎次郎

『能阿弥本』以下3つの系図は貞宗在世時の150-200年後のもので貞宗に在銘刀がないので傍証になるが、正宗の弟子であり、子、または養子と伝えられる。 貞宗の鑑定は正宗や、その師新藤五国光や、貞宗子とされる秋広、あるいは特に初代信国(上記刀剣鑑定書に記されないが貞宗弟子とされる刀匠)などの刀や刀銘年記により行われている。

作風

貞宗の作刀は、元来長寸の太刀であったものを後世に磨上(すりあげ)とした刀のほか、短刀、平作りの脇差がある。刀は亀甲貞宗のような身幅、切先とも尋常な作と、切先の延びたものがあり、後者は南北朝時代に入っての作と思われる。短刀はやや寸延びで重ね薄く、わずかに反りのついた、時代の特色を示すものが多い。 作風は正宗の風を継いだ沸(にえ)の美を追求したもので、典型的な作風は次のようなものである。地鉄は小板目肌つみ、地沸(じにえ)よくつき、地景しきりに入る。刃文は湾れ(のたれ)を主体に互の目(ぐのめ)を交えるものが典型的で、刃中に金筋(きんすじ)、砂流(すながし)などの働きが盛んであり、匂口深く、小沸つき、地刃ともに明るく冴えるものである。全般に正宗に似るが、穏健な作風で、正宗ほどには地景や金筋の目立たないものである。 無銘短刀「物吉貞宗」や無銘伝貞宗脇指(久能山東照宮)に見られる不動明王薬師如来種子や蓮台などの彫り物(画像典拠[7])は、正宗の伯父大進房や正宗の師新藤五国光の系統につながり、弟子とされる信国 (初代)に受け継がれる[8]

刀剣用語の補足説明

  • 沸(にえ) - 刃文を構成する鋼の粒子が肉眼で1粒1粒見分けられる程度に荒いものを沸、1粒1粒見分けられず、ぼうっと霞んだように見えるものを匂(におい)と称する。沸も匂も冶金学上は同じ組織である。沸と同様のものが地の部分に見えるものを地沸と称する。沸の美を追求するのが正宗をはじめとする相州伝の特色である。
  • 金筋(きんすじ)、地景(ちけい) - 刃中に沸が線状に連なって光って見えるものを金筋といい、同様のものが地の部分に見えるものを地景と称する。このように地刃にさまざまな変化を見せることを「働きがある」と言い、「砂流」(すながし)、「稲妻」、「地斑」等と称するものも「働き」の一種である。
  • 匂口 - 刀剣の地と刃の境目をなす部分を匂口といい、これが細く締まっているものを「匂口締まる」、幅広いものを「匂深い」などと表現し、その他作風によって「匂口沈む」「匂口うるむ」等と表現する。

代表作

刀 無銘貞宗(切刃貞宗) 重要文化財(東京国立博物館)
短刀(または脇指) 無銘貞宗(石田貞宗) 重要文化財(東京国立博物館)
国宝
重要文化財
  • 刀 無銘貞宗(切刃貞宗)(東京国立博物館)
  • 刀 無銘貞宗(二筋樋貞宗)(個人蔵)
  • 刀 無銘伝貞宗(幅広貞宗)(法人蔵)
  • 刀 無銘伝貞宗(個人蔵)1952年指定
  • 刀 無銘伝貞宗(刀剣ワールド財団蔵[9])1954年指定
  • 短刀 無銘貞宗(池田貞宗)(所在不明)
  • 短刀 無銘伝貞宗(斎村貞宗)(個人蔵)
  • 短刀 無銘貞宗(石田貞宗)(東京国立博物館) ※「脇指」と呼称する場合もある(重要文化財指定名称は「短刀」)。
  • 短刀 朱銘貞宗 本阿(花押)(朱判貞宗)(ふくやま美術館蔵)
  • 短刀 無銘貞宗(物吉貞宗)(愛知・徳川美術館
  • 短刀 無銘貞宗(太鼓鐘貞宗)1938年指定、伊達家伝来
  • 脇指 無銘伝貞宗(久能山東照宮

貞宗の現存作刀には在銘物は皆無である。「朱銘貞宗」とあるのは、生ぶ茎(うぶなかご)無銘の短刀に本阿弥家が朱漆で鑑定銘を入れたもので、貞宗本人の銘ではない。

文化庁による所在確認調査の結果、所在不明とされた物件については「所在不明」とした[10]

脚註

  1. ^ a b 本覚寺過去帳から、 正宗二十二世孫の山村綱広が記した「刀匠の秘密厳守」(日本刀講座 ; 9)p.28 NCID BN03943899
  2. ^ 仰木弘邦; 田中汲古齋, 今井喜兵衞 : 齋藤庄兵衞 : 勝村治右衞門 『古刀銘盡大全』、1792年。 NCID BA7015971X 
  3. ^ a b 国立国会図書館の貴重書、応仁30年(1423年)の写本 http://rarebook.ndl.go.jp/
  4. ^ 『能阿弥本銘尽』刀剣博物館蔵
  5. ^ 以上の刀剣古伝書に関する記述は、小笠原信夫「正宗弟子説の成立過程--「古今銘尽」開版の諸条件」『東京国立博物館研究誌』第497巻、東京国立博物館、1992年8月、 28頁、 NAID 40000022445、による。
  6. ^ a b 小笠原信夫 1992, p. 23.
  7. ^ 解説版新指定重要文化財6 工芸品III』、毎日新聞社、1982, p.391-393
  8. ^ 伊藤満 『刀剣に見られる梵字彫物の研究 : 刀工と修験道の関係』 大塚巧藝社、1989年。 NCID BA43308351 
  9. ^ ウェブサイト「刀剣ワールド」に「一般財団法人刀剣ワールド財団(東建コーポレーション)にて保有の日本刀」として収録されている。
  10. ^ 国指定文化財(美術工芸品)の所在確認の現況について(平成29年5月27日)国指定文化財(美術工芸品)の所在確認の現況について(平成30年6月7日)国指定文化財(美術工芸品)の所在確認の現況について(令和元年7月16日)

参考文献

  • 文化庁編『国宝事典 新増補改訂版』、便利堂、1976
  • 『解説版新指定重要文化財6 工芸品III』、毎日新聞社、1982
  • 『週刊朝日百科 日本の国宝』31号、45号、100号、朝日新聞社、1997・1999

関連項目




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