融通手形の抗弁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/01/17 08:10 UTC 版)
融通手形の最初の被裏書人は、金融目的に協力するものであるため、その手形が融通手形であると知っていること(悪意であること)が多い。しかし、その者が手形の満期に支払を求めた際に、融通手形であることについて、悪意の抗弁を主張することを振出人に認めると、融通契約の目的を達成することができなくなってしまう。そこで、手形の取得者が融通手形であると知っていただけでは、手形債務者は悪意の抗弁を主張して支払を拒むことはできないと解されている。この結論を導くために、融通手形の抗弁が、手形抗弁のうちの通常の人的抗弁とは異なる特殊なものであると解するべきか否か等、法的構成について学説に争いが存在する。 生来的な人的抗弁とする見解(通説) この見解は、融通手形の抗弁を、他の人的抗弁とは異なり、手形の受取人(被融通者)にのみ成立し、手形の転得者には引き継がれないという特殊な性質を有する生来的な人的抗弁と解する。抗弁が引き継がれない以上、善意か悪意かで抗弁が切断するか否かという問題は生じないとする。 確実との認識がある場合に悪意の抗弁を認める見解有力説 この見解は、悪意の抗弁が成立するために必要な手形法17条但書の「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタル」とは、手形の取得者が権利行使をする際に債務者が人的抗弁を主張することが確実である、との認識を持って手形を取得したことが必要であることから、融通手形であると知っていただけでは、悪意の抗弁は主張できないとする。 融通契約違反の認識がある場合に悪意の抗弁を認める見解 被融通者が支払い資金を提供しないなどの融通契約違反があった場合に、悪意の抗弁が主張できるのであり、単に融通手形であると知っていただけでは、悪意の抗弁は主張できないとする。
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