選挙ウォッチャーちだいとは? わかりやすく解説

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選挙ウォッチャーちだい

(石渡智大 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/14 08:21 UTC 版)

選挙ウォッチャーちだい1978年[1] - )は日本各地の選挙を取材・レポートする作家、著述家[2][3]。本名:石渡智大[4]

来歴・人物

東京都中野区に生まれ、千葉県柏市で育つ[1]吉本興業の東京NSC放送作家コースに1期生として入学し、卒業後は放送作家としてキー局テレビ番組ラジオ番組などを担当していた[5]

2011年東日本大震災に伴う福島第一原発事故に関心を持ったことをきっかけに[5]食品放射性物質検査結果や独自に取材した情報をブログで公開する活動を開始[6]2013年には食品の放射能汚染についてまとめた本を出版した[6]

放送作家の仕事を辞め、2013年の参議院選挙では山本太郎の選挙スタッフとして初めて選挙戦に携わった[5]2017年の参議院選挙で様々な候補者を見たことで選挙の実情に危機感を覚え、同年の越谷市長選から本格的に選挙ウォッチャーとしての活動を開始した[5][注釈 1]

2025年立花孝志及びNHKから国民を守る党(N国党)の実態を伝えた活動が評価され、「日隅一雄・情報流通促進賞」特別賞を受賞した[8]

N国党からの攻撃

2018年6月の千葉県松戸市長選挙の投票日翌日、ちだいは「『NHKから国民を守る党』議員が松戸市長選運動中に市民メディアに暴行。その顛末」と題した記事を、扶桑社ニュースサイトハーバー・ビジネス・オンライン[9]に寄稿した。N国党党首の立花孝志(当時・東京都葛飾区議会議員)は、この記事が名誉棄損に当たるとして、200万円の賠償を求め、扶桑社を提訴した。訴えは一審・二審とも棄却された[10][11]。また立花は懸賞金をかけて情報提供を呼びかけ、ちだいの本名・住所を入手し[12]、立花とN国が原告となってちだい個人も提訴した[13]。しかしこの訴えもそれぞれ棄却された[14]

2018年東京都立川市議選(6月17日投開票)において、ニコニコ生放送の人気配信者であった横山緑(久保田学)がN国党から出馬し、当選した。同年11月、久保田は前述のちだい記事のなかで「居住実態のほとんどない」などと書かれたことが名誉毀損にあたるとして、200万円の賠償を求め、ちだい個人を提訴した[15]。この訴えに対してちだいは、翌年6月、「提訴経済的、心理的な負担を課し、言論活動を弾圧する目的」の訴訟であるとして、約120万円の賠償を求める反訴を行った。立花は動画などで、この訴訟において久保田を支援していることや、自身が訴状や陳述書などを用意したこと公言していた。また、久保田ともとに行った同年5月の動画配信のなかで、立花は「(ちだいとの訴訟は)経済的ダメージを与えるためのスラップ訴訟だ」とも明言していた。これら立花の発言も踏まえ[13][15]、千葉地裁はちだいの主張を全面的に認め、「(久保田の)訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認めざるをえない」スラップ訴訟だと認定[13][15][16][17]。久保田は78万5600円の支払い命じられた[13][15][18]。久保田は控訴したが、2020年3月4日の東京高裁判決は一審判決を支持し、久保田に一審よりも16万円多い95万円の支払いを命じた[19]

これらの過程のなかでちだいの自宅兼事務所の住所等はネット上で晒され、何者かからアダルトグッズや果物などが代引きで送られたり、申し込みの覚えが無い学校やマンションや墓地などの案内資料が大量に送りつけられるようになった[13][16][注釈 2]

2019年12月、ちだいは自身への嫌がらせについて情報提供を受けて自身のnoteで発信した。立花はこの記事が名誉毀損にあたるとして、2020年3月4日にちだいを提訴したが[22]、千葉地裁は請求を棄却した[23][24][21]。また同年の足立区議選でN国党候補だった加陽麻里布(当選無効[25])は、この記事に自身についての虚偽が記載されているなどとして、2020年6月29日付で警察に告訴状を提出した。また加陽は10月5日付で記事削除の仮処分を東京地裁に申し立て[26]、ちだいは11月13日付で記事の一部について仮削除を命じられた[27]。加陽はそれらの経過をnoteやSNS上で報告するとともに、「名誉毀損で刑事告訴を行いたい方」に向けて告訴状の雛形も公開した[28]。また加陽は慰謝料220万円、自身に関わる箇所の削除、謝罪広告実施を求めてちだいを提訴したが、一審、二審とも訴えは棄却された[29][30]。また同記事について立花[31]、N国党がちだいを提訴したが、それぞれの訴訟で一審、二審ともちだいが勝訴した[32][3]

2020年、ちだいは自身のnoteにおいて10記事で1320円の有料記事を販売した。立花はそのなかの1つの記事を問題視し、ちだいの自宅に赴き動画を撮影した者には10万円の懸賞金を出すとYouTubeで発信した。呼びかけに呼応した2人組が自宅付近に現れ、立花と電話をしながら、たまたま自宅近くの路上にいたちだいを撮影するなどして、警察が呼ばれる騒動となった[3]。また同日、当時N国党の副代表[注釈 3]だった大橋昌信柏市議(当時[35])も小型カメラで撮影しながら自宅前に現れ、再び警察が呼ばれる騒動となった。また大橋が撮影した動画は立花のYouTubeチャンネルで公開され、大橋に抗議するちだいの姿などが拡散された[36]。また立花はこの有料記事についてちだいを提訴する支援者を募り、記事代金や慰謝料など約33万円の支払いを求める民事訴訟が開始された[3]。この請求は控訴審まで争われた結果、ちだいに購読料132円と弁護士費用13円の支払いを命じる判決となった[3]

2024年、ちだいは同年の東京都知事選挙に24人の候補者を擁立するなどして批判が高まっていたN国党について、「反社会的カルト集団」などと動画配信やSNS投稿で発信した[37]。N国党は名誉を傷つけられたとして、損害賠償を求めてちだいを提訴した[37][4]。同年11月27日、東京地裁は「公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあり、その前提としている事実が重要な部分について真実であると認められるものであり、かつ、意見あるいは論評としての域を逸脱したものとはいえないことから、違法性を欠く」などとして、N国党の請求を棄却した[37][4][38]。その後、N国党は提訴したが、東京高裁はこれを棄却し、判決が確定した[39][40]

受賞歴

著作

  • ちだい 著『食べる?: 食品セシウム測定データ745』新評論、2013年12月、ISBN 978-4794809445
  • 選挙ウォッチャーちだい 著『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』新評論、2022年1月、 978-4794811974

脚注

注釈

  1. ^ 選挙ウォッチャーを名乗りだした後に始まった『ハーバー・ビジネス・オンライン』での連載は本名名義で行なっていた[7]
  2. ^ ちだいによれば、郵便物や宅配ピザなどの嫌がらせは2019年5月末に始まり、2021年4月までで総数は7000通を超えたという[20][21]、その後も断続的に続いているという。またちだい以外にも、立花とN国党を批判する者が同様の被害を受けたという[21]
  3. ^ 2022年に除籍[33][34]

出典

  1. ^ a b 選挙ウォッチャーちだい「選挙の候補者に取材をかけてみると、意外とポンコツな人が多い」全国の選挙から見えてきた候補者の裏の顔”. 双葉社 THE CHANGE (2025年4月4日). 2025年5月9日閲覧。
  2. ^ 「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?”. 新評論. 2024年12月2日閲覧。
  3. ^ a b c d e 「お前もとっとと自殺しろ」兵庫県議らに大量の脅迫メール 激化する“言論への攻撃”の実態「フラグを立てられたら終わり」【報道特集】”. TBS NEWS DIG. TBS (2025年4月5日). 2025年4月5日閲覧。
  4. ^ a b c 「NHK党は反社会的カルト集団」名誉毀損に当たらず 投稿のインターネット記者に賠償責任なし 東京地裁判決”. 東京新聞. 中日新聞社 (2024年11月27日). 2025年5月9日閲覧。
  5. ^ a b c d 選挙ウォッチャーちだいの考え方が変わったきっかけ「東日本大震災で原発問題が起こるまでは、国の偉い人に全部任せておけばいいと思っていた」当事者として問題を見つめる人間力”. 双葉社 THE CHANGE (2025年4月4日). 2025年5月9日閲覧。
  6. ^ a b 食べる?新評論”. 新評論. 2025年5月9日閲覧。
  7. ^ 石渡智大|記事一覧”. ハーバー・ビジネス・オンライン. 2025年4月24日閲覧。
  8. ^ a b 日隅一雄・情報流通促進賞2025大賞決定”. 日隅一雄・情報流通促進基金 (2025年5月7日). 2025年5月9日閲覧。
  9. ^ 「NHKから国民を守る党」議員が松戸市長選運動中に市民メディアに暴行。その顛末”. ハーバー・ビジネス・オンライン. 扶桑社 (2018年6月11日). 2024年12月2日閲覧。
  10. ^ 産経新聞 (2019年11月16日). “N国党首の請求棄却 「立花氏が暴行」は真実”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年3月29日閲覧。
  11. ^ 二審もN国党首の請求棄却 ネット記事巡り、東京高裁”. 産経新聞. 産業経済新聞社 (2020年7月1日). 2024年12月2日閲覧。
  12. ^ N国・立花孝志党首 書類送検以外にもあった“暴言&恫喝動画””. FRIDAYデジタル (2019年10月3日). 2025年4月1日閲覧。
  13. ^ a b c d e 共同通信スラップ訴訟取材班 (2019年10月31日). “N国の危険な戦術、その先にあるもの ある日突然訴えられる、「スラップ」の脅威 | 47NEWS”. 47NEWS. 共同通信. 2025年3月29日閲覧。
  14. ^ 東京高等裁判所判決2020年9月1日
  15. ^ a b c d 池垣完 (2019年9月29日). “N国市議「居住実態ほぼナシ」判決から2週間。今度はスラップ訴訟か否かを巡って延長戦か |”. HARBOR BUSINESS Online. 扶桑社. 2024年12月27日閲覧。
  16. ^ a b N国市議に勝訴したライター「スラップ訴訟は民主主義をぶっ壊す」”. 弁護士ドットコム. 弁護士ドットコム株式会社. 2024年12月27日閲覧。
  17. ^ N国党立川市議に賠償命じる判決”. NHK 首都圏のニュース. NHK (2019年9月24日). 2019年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月1日閲覧。
  18. ^ N国市議敗訴で注目「スラップ訴訟」って何? 立花党首「相手にダメージ」公言”. 毎日新聞 (2019年9月26日). 2025年3月30日閲覧。
  19. ^ N国党「スラップ訴訟」は二審も返り討ち ライターを訴えたら逆に95万円の支払い命令”. 弁護士ドットコム (2020年3月4日). 2025年3月28日閲覧。
  20. ^ 千葉地裁松戸支部令和2年ワ1066号 令和4年1月14日判決
  21. ^ a b c 選挙ウォッチャーちだい『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』新評論、2022年1月。 
  22. ^ 立花孝志 (2010年10月26日). “選挙ウォッチャーちだい君が反省してないので、新たな裁判【訴訟】を東京簡易裁判所に明日提起します。”. 選挙ドットコム. 2025年3月24日閲覧。
  23. ^ 東京地裁 令和2年ワ317183 令和4年2月16日判決
  24. ^ 千葉地裁松戸支部 令和2年ワ129 令和3年12月13日判決
  25. ^ 足立区. “令和元年5月26日執行の足立区議会議員選挙にかかる選挙争訟の判決について”. 足立区. 2025年3月29日閲覧。
  26. ^ 加陽麻里布 (2020年10月5日). “投稿記事削除仮処分命令申立書”. 2025年4月1日閲覧。
  27. ^ 処分決定(2020年11月13日)
  28. ^ かようまりの (2020年10月16日). “1.7追記【ご報告】名誉毀損「ちだい氏」に対する法的措置について【11/13仮処分決定】【9/16刑事告訴】”. note(ノート). 2025年3月29日閲覧。
  29. ^ 千葉地裁松戸支部 令和2年ワ1066 令和4年1月14日判決
  30. ^ 東京高等裁判所 令和4年6月7日判決
  31. ^ 選挙ウォッチャーちだい君が反省してないので、新たな裁判【訴訟】を東京簡易裁判所に明日提起します。 - 立花孝志(タチバナタカシ) | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム (2020年10月26日). 2025年4月1日閲覧。
  32. ^ 「真実かどうかよりも、極端なコンテンツほどたくさん見られる」選挙期間中に拡散される誹謗中傷や虚偽を含む動画 作成に報酬も…背景を取材【報道特集】 |”. TBS NEWS DIG (2025年3月15日). 2025年4月1日閲覧。
  33. ^ 「ガーシーは論外」…NHK党を離党したアイドル議員が、今だから話す「NHK党の離党者続出」の真相(今川 芳郎) @moneygendai”. マネー現代. 講談社 (2023年2月8日). 2025年4月5日閲覧。
  34. ^ 浜田聡 (2022年6月16日). “NHK党長年の功労者 大橋昌信議員除名⁉ 6月末に議員辞職の方針とのこと | 参議院議員 浜田聡のブログ”. 浜田聡. 2025年4月5日閲覧。
  35. ^ N国副党首を不起訴 コンビニ店員にけが負わす”. カナロコ. 神奈川新聞 (2020年10月29日). 2025年4月5日閲覧。
  36. ^ 石渡智大 (2020年10月30日). “「仮処分決定前」に示談交渉!? N国『誹謗中傷示談金ビジネス』の問題点”. ハーバー・ビジネス・オンライン. 扶桑社. 2025年4月24日閲覧。
  37. ^ a b c 「N国党は反社会的カルト集団」とSNS投稿 名誉毀損で訴えられたライター勝訴 東京地裁”. 弁護士ドットコムニュース. 弁護士ドットコム (2024年11月27日). 2024年12月2日閲覧。
  38. ^ 「N国は反社会的カルト集団」の投稿、違法と認めず 東京地裁判決:朝日新聞”. 朝日新聞 (2024年11月27日). 2025年4月1日閲覧。
  39. ^ N国党の「名誉毀損」の訴え、二審・東京高裁も“棄却”…度重なる「敗訴」でも訴訟提訴が繰り返されてきた“理由”とは?”. 弁護士JP (2025年3月19日). 2025年3月24日閲覧。
  40. ^ 一審、二審ともNHK党に勝訴した「選挙ウォッチャー」ちだい氏が警鐘をならす「立花孝志という存在」”. FRIDAYデジタル (2025年3月25日). 2025年4月1日閲覧。

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