異常な性比
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 07:32 UTC 版)
「ウィリアム・ドナルド・ハミルトン」の記事における「異常な性比」の解説
ハミルトンがブラジルで発見したイチジクコバチ(Blasophaga psenes)や寄生性の狩りバチでは性比がオス:メス=1:10ほどにも偏っている。これは性比がおおむね1:1になる説明であるフィッシャーの原理を覆す。イチジクコバチはイチジクの中で孵化する。生まれたオスは後から生まれるメス(妹)たちと近親交配し、イチジクの中で生涯を終える。つまりイチジクコバチではフィッシャーの原理の前提である自由交配が成立していない。自由交配が成り立つ環境では子の性比を約1:1とする親が孫の数を最大化でき、そのような形質が進化するが、自由交配の行われない環境では自分の孫の数を最大化するためには「できる限り多くのメスと、そのメスを受精させられるだけの最低限のオス」を生んだ方がよい。ハミルトンはこれを局所的配偶競争と呼んだ。さらに重複寄生がおきる種では、一つの宿主に多くの母バチが産卵するほど自由交配にちかづく。そのため重複寄生が起きれば起きるほど、後から産卵する母バチの産卵性比は(先にどれだけ寄生が行われているか知ることができるなら)フィッシャー性比(1:1)に近づくと予想される。ハミルトンは母バチの数がnであるとき、次の産卵性比が安定であると考えた。 ( n − 1 ) / 2 n {\displaystyle (n-1)/2n} nが増大するほど性比は1/2、つまり1:1に近づくはずである。これは後にキョウソヤドリコバチなどで確認された。 この論文では、性比の均衡理論に基づいて、進化ゲーム理論のさきがけである「打ち負かされない戦略」も提唱された。このアイディアはジョージ・プライスが一般化し、メイナード=スミスが数学的に定式化した。これが進化的に安定な戦略(ESS)である。打ち負かされない戦略は常にESSである。ESSは打ち負かされない戦略であることを必要としない。ESSは打ち負かされない戦略と違い、大規模な侵略を想定していない。
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