玉ノ段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/18 05:06 UTC 版)
「空はひとつに雲の波、煙の波を凌ぎつつ、海漫々と分け入りて」やっと竜宮につくと、三十丈の宝塔の頂にその珠がまつられていた。まわりには八大竜王や悪魚、鰐(わに)がとりまいている。志度の観音菩薩たすけたまえと、剣を手に竜宮に飛び入ると、竜たちはぱっと退いた。その隙に宝珠を盗み取って逃げようとするのを竜が追ってくる。竜宮では死人を忌むということなので、海女は自分の乳の下を掻き切って、珠を押し込め海底に倒れると、近づくものもない。そのとき力をこめて命綱をひけば、海上の人々によって命綱がひきあげられ、海女は海上に浮かび上がった。大臣は傷つき息もたえだえになった海女をみて嘆き悲しむが、海女の「わが乳のあたりを御覧ぜ」との末期の言葉に傷跡をみると面向不背の珠がある。こうして海女は命を落としたが、その子は房前の大臣となったのだ。 こう語った海女は「われこそあなたの母、海人の幽霊です。この手紙を御覧になってわが菩提を弔ってください」と、房前に手紙をわたし朝の海に消えていった。
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