無リスク資産がある場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/17 21:32 UTC 版)
「投資信託定理」の記事における「無リスク資産がある場合」の解説
もし、無リスク資産が利用可能であるならば、再び2-ファンド分離定理を適用することができる。しかし、この場合、ファンドの一つは無リスク資産のみを含む非常に単純なファンドとして選ぶことが可能であり、他のファンドは無リスク資産を含まないものとして選ぶことができる(無リスク資産を"資金"とするならば、この形での分離定理は資金分離定理と呼ばれる)。つまり、平均分散的に効率的なポートフォリオは単純に無リスク資産と、リスク資産のみを含むある特定の効率的なファンドによって作られる。無リスク資産がある際には上の全ての資産の収益率の共分散行列 V {\displaystyle V} の一つの行と列が0となるために、可逆でなくなるため、上の導出法を使うことはできない。代わりに以下のように問題をセットアップすることができる。 Minimize σ 2 {\displaystyle \sigma ^{2}} subject to ( W − X T 1 ) r f + X T r = μ , {\displaystyle (W-X^{T}1)r_{f}+X^{T}r=\mu ,} ここで r f {\displaystyle r_{f}} は既知の無リスク資産の収益率であり、 X {\displaystyle X} はリスク資産の保有量を表すベクトル、そして r {\displaystyle r} はリスク資産の期待収益率のベクトルである。最後の方程式の左辺はポートフォリオの期待収益率であり、 ( W − X T 1 ) {\displaystyle (W-X^{T}1)} は無リスク資産の保有量なので、初めの問題で分けられて導入されていたラグランジュ関数の制約を一つにまとめることができる。目的関数は σ 2 = X T V X {\displaystyle \sigma ^{2}=X^{T}VX} と書くことができ、 V {\displaystyle V} はリスク資産のみからなる共分散行列である。この最適化問題はリスク資産の保有量の最適ベクトルを導出することで示される。 X o p t = ( μ − W r f ) ( r − 1 r f ) T V − 1 ( r − 1 r f ) V − 1 ( r − 1 r f ) . {\displaystyle X^{\mathrm {opt} }={\frac {(\mu -Wr_{f})}{(r-1r_{f})^{T}V^{-1}(r-1r_{f})}}V^{-1}(r-1r_{f}).} もちろん、 μ = W r f {\displaystyle \mu =Wr_{f}} ならば、この解はゼロベクトルであり、このとき、全ての富を無リスク資産に投資する。無リスク資産へまったく投資しないポートフォリオは μ = W r T V − 1 ( r − 1 r f ) 1 T V − 1 ( r − 1 r f ) {\displaystyle \mu ={\tfrac {Wr^{T}V^{-1}(r-1r_{f})}{1^{T}V^{-1}(r-1r_{f})}}} の時に得られ、解は X ∗ = W 1 T V − 1 ( r − 1 r f ) V − 1 ( r − 1 r f ) {\displaystyle X^{*}={\frac {W}{1^{T}V^{-1}(r-1r_{f})}}V^{-1}(r-1r_{f})} である。また、(上の2投資信託の場合で行った類推で)全てのリスク資産のポートフォリオベクトル(つまり、あらゆる μ {\displaystyle \mu } についての X o p t {\displaystyle X^{\mathrm {opt} }} )は後のベクトルとゼロベクトルの加重平均和として作られる。幾何学的な解釈については、現代ポートフォリオ理論を参照。
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