滝を流れる水の成因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/07 10:27 UTC 版)
血の滝を流れる塩水は、元々、中新世(約2300万年前〜約500万年前)に、南極海の海水が、氷河の影響で、当時存在していた窪みに取り残されたもの、すなわち、古代の海水であったと考えられている。(なお、約500万年前の海水面は現在の海水面よりも高かった。) ところで、テイラー氷河は、基盤岩に凍り付いていないという点で、南極に存在する一般的な氷河とは違っている。テイラー氷河が基盤岩に凍り付いていない原因は、この氷河の下に存在する古代の海水が、さらに塩分が濃縮された状態で存在しているため、十分に水の凝固点降下が起こったからだと考えられている。 この塩分濃度の高い水の成因としては、次の2つが挙げられる。まず1つ目の成因として、海水が凍る時に海水中の塩分は水の氷の結晶から排出されるため、塩分濃度は元々の2倍〜3倍に濃縮される。またもう1つの成因として、マクマードドライバレーの非常に乾燥した気候に曝されることで水分が蒸発した結果、相対的に塩分濃度が上がった、つまり、蒸発濃縮されたとも言われる。 この2つの方法で塩分濃度が上がるためには、非常に長い期間に渡って海水が閉じ込められている必要があるわけだが、安定同位体と放射性同位体との存在比から、ここの海水が、非常に長い期間、外部の水と混じっていないことは証明されている。 このような成因でできたと考えられている、酸素を含まないFeSO4(2価の鉄の硫酸塩)を多く含んだ高い塩分濃度の水が、偶然に氷の割れ目を通り抜けて湧出して、それが血の滝の水となっているとされる。なお、この硫酸塩は、氷河の下の酸素の無い環境で微生物の活動によって、基盤岩が溶け出していることによって生成されていると考えられている。
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