朝鮮の民間療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/22 03:33 UTC 版)
患部に鎌を突き立てれば治るとされる。
朝鮮の民間療法(ちょうせんのみんかんりょうほう)とは、朝鮮半島において民間に伝承されてきた治療行為である。
李氏朝鮮の医療・疫病史をみると、迷信に基づいた治療が一般的であり、たとえばアーソン・グレブストの『悲劇の朝鮮』[1]によれば、「牛糞を塗る」「ヒマワリの種を湯がいて食べる」「患者がモモの種を二つに割り、一方に『日』の字、もう一方に『月』の字を書いて一気に飲み込む」「小さな蛙を三匹生きたまま丸飲みする(腹痛に即効)」「重症の場合は焼いた犬の足を四本食べる」「じっくり沸かしたお湯に四十歳の女性の頭髪を入れて飲む」といった方法が採られており、大韓帝国の最後の皇太子(純宗)の妃・純明孝皇后は、腹が腫れる病気にかかったため、国内一の名医の診察を受け、腹に悪霊が棲みついたと診断され、城門の戸板をはがして煎じて飲まされ、死亡した[2]。
多くの国での民間療法と同様、科学的根拠が不明なまじない的なものが多く、現在ではほとんど行われていない。
なお本記事は民俗史的記事であり、朝鮮半島の伝統医学である韓医学とは異なる。
『朝鮮民俗集:全』に収集された民間療法
身不足(栄養不良、身体衰弱、身体発達不充分を言う)[3]
- 松の木に「寄生する木を」煎じて服する
- 「南瓜の上に止まった」青蛙の後ろ足2本を食べる
- 12、3歳の童の小便を服用する
気不足(神経衰弱等精神の衰弱したものを言う)[3]
肺病(気不足に含む)[3]
- 人肉の粥を食べる
精神病(狂症)[3]
- 美人の経水を飲む。
内腫症[4]
- 犬の糞水を1日2 - 3回飲む
- 農家で長年使った小便溜桶を煎じて飲む
疝気[4]
- 青蛙の卵10胞を4、5日に食べる
足の麻痺[5]
- 鼻の頭に唾を塗る
瘧(二日瘧)[5]
- 人糞を黒飴に包み3日間夜露を受けて丸薬にして呑む
- 古い人頭骨を焼き粉にして水で飲む
- 患者が男なら牝牛と、女なら牡牛と接吻する
シャックリ[6]
- 冷水を3度飲む
タンコリ(体の一部が急に痛む病)[6]
- 蝿3匹を生で呑む
眼病[7]
- 自分の尿で洗えば再発しない
- 黄連を母乳に混ぜ、あるいは母乳のみを目に射す
ものもらい[7]
- 乳児の亀頭で患部をこする
齲歯[8]
- 人糞を焼いて歯に含む
歯痛[8]
- 古墓の人骨を歯につけ噛みしめる
- 松の枝を油で煎じて口に含む
咽頭病[8]
- 犬の頭の煮汁を飲む
咽頭病[8]
- 松の花粉を白清に含煮して飲む
赤痢(白痢・痢疾)[9]
- 松の樹皮を干して粉にし蜜に混ぜて食べる
チフス(熱病)[9]
- 人糞を瓦石に塗って熱し、水に入れてその水を飲む
冷水の滞り[10]
- ドジョウを生で呑む
豚肉の滞り[10]
- 干柿を食べる
干柿の滞り[10]
- 豚肉を食べる
癩[11]
- 人肉または人の陰茎を食べる
- 数百年の古い人頭骨で水を飲む
各種腫物[12]
- トカゲの卵4 - 50個を3 、4日に分けて飲む
- 人糞に塩を混ぜて貼る
浮皮腫(小児の陰茎の腫れる病)[13]
- ミミズに尿をかけたためだという。甘草を煎じて局部を洗う
幼児衰弱[14]
- どこで何を盗んだのかと大喝する
漆毒瘡(漆中毒)[15]
- 溝を越えて自分の大便を塗り、また溝を越えて戻る
骨折・脱臼・捻挫[15]
- 松葉を熱して温める
死人を蘇す方法[15]
- 父には子が夫には妻が薬指を切り、血を死人の頭上にそそぎかける
淋病[16]
- 松葉を煎じて飲む
- 雌犬と交接するか女性に吸わせる
その他の民間療法
身不足(栄養不良)
高熱
精力強化
- 薪割りをする(薪割りは腰を丈夫にして、性器の血液循環を円滑にすると考えられていた)。
産後の滋養
- わかめスープを産後の女性に食べさせる。造血、血の浄化作用があり滋養があると言われている。
その他
- 『生肝取りが流行 癩患者の迷信から残虐な殺人をする朝鮮』 名古屋新聞 1923/8/11
- 『吾子の腹を割き生肝を夫に食はす/亭主の長患ひに/鮮女凶行後に自首』 神戸新聞 1930/8/16
- 『朝鮮料理屋の正体は魔窟/誘惑した女の生血を絞り己れは豪奢な暮し(葺合)』 大阪朝日新聞 1932/12/9
- 『殺して生血啜る/業病治りたさの半島人/名古屋で少年を殺い自殺』 北國新聞 1938/6/6 夕
註
- ^ 訳書は『悲劇の朝鮮』(河在龍・高演義訳、白帝社、1989年)
- ^ 黄文雄『日本の植民地の真実』扶桑社、2003年10月、146頁。ISBN 978-4594042158。
- ^ a b c d 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、420ページ
- ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、421ページ
- ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、422ページ
- ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、423ページ
- ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、424ページ
- ^ a b c d 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、425ページ
- ^ a b 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、426ページ
- ^ a b c 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、427ページ
- ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、428ページ
- ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、429ページ
- ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、430ページ
- ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、431ページ
- ^ a b c 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、433ページ
- ^ 今村鞆『朝鮮風俗集:全』斯道舘、1914年、434ページ
- ^ “世宗大王は肉食がお好き…肥満に糖尿病”. 東亜日報. (2005年8月22日) 2008年10月7日閲覧。
関連項目
参考資料
外部リンク
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