政治における活動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 06:13 UTC 版)
アーレントは人間とは「条件づけられた存在」とする。つまり「人間とは、自然のものであれ人工的なものであれ、すべてのものを自己の存続の条件にするように条件づけられ」ている(邦訳 p.237)。本書の中心的なテーマは、そのような条件を踏まえた上で「人間の条件から生まれた人間の永続的な一般的能力の分析」(同上)を行うことである。 次に人間の活動的生活(vita activa)からそれを構成している労働、仕事、活動という3つの能力が分析の対象となっている。ここでの労働(labor)とは日常的に行われる生命を維持するための自然に対する行動であり、著作では「労働は人間の肉体の生物学的過程に対応する活動力である」とされている。 労働とは区別される仕事(work)は、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}ある程度の耐久性を持つ消費の対象を作る行動であり、「人間存在の非自然性に対応する活動力である」と位置づけられる。[要出典] 最後に、活動(action)は「ものや物質の介入なしに直接人と人との間で行われる唯一の活動力であり」、他者同士の人間が言語によって協力または対立する行為である。これこそが政治に他ならないとアーレントは強調している。そもそも人間は個々人が異なっているために同一な人間は存在せず、それにもかかわらず自己と他者は言語で共同して何かの行為を行う。したがって活動にこそ政治の契機を見出すことができる。 したがってアーレントにとって言語行為は単なる情報伝達ではなく、言語による他者への働きかけを指すものであり、口調や評定なども含めた行為である。それらは自身が何者であるのかを他者が認識させることであり、その意味で活動を行う者(actor)は演劇における役者の意味合いがある。つまり政治的行為者とは自己が誰であるのかを他者に対して示さざるを得ない役者である。
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