蟹江一家3人殺傷事件
(愛知県蟹江町母子3人殺傷事件 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/30 17:48 UTC 版)
蟹江一家3人殺傷事件(かにえいっかさんにんさっしょうじけん)とは、2009年(平成21年)5月1日深夜から翌5月2日昼にかけて愛知県海部郡蟹江町の民家で発生した強盗殺人・同未遂事件である[2][15][9]。
注釈
- ^ 近鉄蟹江駅から北西約300 m、蟹江町立蟹江小学校から西方約50 mの旧来からの住宅街に位置する二階建ての一般住宅[1]。なお事件現場一帯の住所は、2010年1月16日から「愛知県海部郡蟹江町城四丁目」となっている[1]。
- ^ 京都市内の日本語学校[32]。
- ^ Lが在学していた語学学校の関係者は『中日新聞』の取材に対し「授業料の約100万円は滞納せずに納めており、成績は優秀だった。三重大よりもさらに上の大学に届くぐらいの学力だったが、受験で手続き上のミスをしたため、上の大学には進学できなかった」と証言している[31]。
- ^ 奈良県奈良市[32]。
- ^ Lは当時、コンピューター専門学校では「クラスのまとめ役」と評価されていたが、奨学金を受けられないことに不満を抱いており、担任教師に対して何度も「なぜ奨学金を受けられないんだ」と詰め寄っていた[32]。また、三重大入学後も担当教師に対し、「なぜ自分は奨学金を受けられないのか。そのせいで金に困り、コンビニエンスストアの廃棄弁当を漁って食べるような生活を送っている」という内容の手紙を送っていた[26]。
- ^ 2008年には三重県の私費留学生奨学金を申請したが、成績不良などを理由に認められなかった[32]。そのため、Lは母国の両親から仕送りを受けつつ、大学付近の飲食店などでアルバイトをして生活していたが、事件前には体調を崩して働けなくなった[35]。所属ゼミの教授は「大学の会計担当者から督促依頼が来ており、会計が退学をちらつかせてようやく支払う状態だった」と証言している[32]。
- ^ 出席日数不足・成績不振などの理由から[34]、事件発生年の2009年4月には留年し、4年生に進級できなかった[19]。
- ^ 当時、Lの銀行口座の貯金残高は1,000円未満だった[37]。
- ^ モンキーレンチ(全長31.5 cm)[38]は一般家庭ではあまり使われない工業用[39](自動車整備・水道配管工事用)[40][41]で、専門業者を通じて工場に納入されており、ホームセンターなどでは販売されていなかった[41]。
- ^ 近鉄蟹江駅は近鉄名古屋線の急行電車(近鉄名古屋駅発)が最初に停車する駅[36]。
- ^ Aは三男Cが20時ごろに外出した際には在宅しており[44]、21時ごろには自宅の電話で友人と会話していた[45]。
- ^ この時Lは、全力でAから逃げようとすれば逃げることはできたが、「(金を手に入れる)最後のチャンス」と大金を手に入れることを諦めきれなかったため、Aから逃げなかった[43]。
- ^ Aはモンキーレンチで襲われた後もしばらく息があり、「誰か」と声を上げたが、Lによって首に紐を巻き付けられ、とどめを刺された[46]。Aの遺体の顔面には上顎骨の粉砕骨折を伴う挫創1か所・刺切創5か所が確認され、19か所の挫創(頭蓋骨を貫通して脳に達したものを含)も確認された[43]。
- ^ a b Bは事件の1週間前に勤務先の同僚だった女性と婚約しており、事件前日(2009年4月30日)にはこの女性を家に泊めていた[47]。事件当夜には仕事後、女性から「今日も泊まっていい?」と尋ねられたが、Bは「連続になるからやめておこう」と女性を帰宅させていた[47]。
- ^ Bの殺害に使用された包丁は血を洗い流した状態で見つかったが、その刃は柄から外れ[44]、刃全体が反り曲がっていた[49]。
- ^ 被害者Bの遺体の左背部には刺創・刺切創が合計4か所確認され、うち最も深いもの(深さ約11.5 cm・長さ約4.9 cm)左肺・左主気管支後面・左主肺動脈を損傷していた[49]。
- ^ a b Cは事件発生数時間前にいったん帰宅していたが、同僚との飲み会に参加するため外出し、2日未明に帰宅した[50]。
- ^ Cは当時の状況について、公判で「玄関でブーツを脱いでいたら、背後の廊下を勢いよく走る足音が聞こえた直後、後頭部に強い衝撃が2,3回走り、振り返ると暗がりに人影があった」と証言している[50]。
- ^ その理由について、Lは取り調べで「Cから『殺さないでくれ』と命乞いされたため、殺害を躊躇した」と話した[51][52]。しかしその一方、A宅を離れるまでにCを救助するような行動(解放したり、怪我を治療したりするなど)は一切取らなかった[53]。
- ^ 被害者Cの後頸部・背部にはそれぞれ3か所ずつ刺創が認められ、5月2日12時55分ごろの時点でもわずかに出血が続いていた[49]。その中でも最も重篤な後頸部の刺創(正中線のほぼ真上)は傷口の長さ約2.7 cm、深さ約 6cmとかなり深く、頸椎にまで達しており、少し受傷部がずれていれば頸動脈などの重要器官を損傷して致命傷となっていた可能性が高かった[49]。
- ^ その後もLは、Cから「早く出て行け」と迫られると「俺もそうしたいが今は無理だ。(自分も)怪我をしていたから、(傷口からの出血が止まるまでに)時間がかかる」「逃げてもすぐに見つかる。服も着替えないといけない」という趣旨の発言をし、これを拒否していた[55]。また、逮捕後には「証拠隠滅作業の間に最終電車を逃したため、現場に留まって始発電車を待った」[35]「朝になってBの勤務先から通報を受けた蟹江署員が駆け付けたが、無線連絡のために現場を離れた隙に勝手口から逃走し、電車で津市に戻った」と供述した[32]。
- ^ 腕時計は事件前年(2008年)のクリスマス、Bが婚約者の女性からプレゼントされたもので[38]、中近東からの逆輸入品だった[56]。事件後、この腕時計は長らく犯人Lが持っており、Bの婚約者は第3回公判(2015年1月23日)で「事件直後は形見として持っていたいと思ったが、ずっと犯人の下にあったことがわかった今はいらない」と発言している[47]。
- ^ 愛知県警が現場検証を行ったところ、一家3人それぞれの預金通帳・財布が発見された[57]。当初は「財布にはいずれも紙幣は入っていなかった」と発表された[58][59][60]が、後日2階で改めて現場検証を行ったところ、次男Bの部屋にはBの部屋には現金が手つかずで残されていた[61]。また、玄関には11,000円分の紙幣が落ちていた[39]。
- ^ Cは事件発覚直後、捜査本部からの事情聴取に対し「抵抗していたが、飲酒していたために酔いが回って意識を失った」と証言している[15]。
- ^ 蟹江署員が訪問した際、1階北東側の勝手口が施錠されていることが確認されていた[58]。
- ^ その後、被害者Cから「襲ってきた男が自分に対し『金はないか』と聞いてきた」と証言したため、容疑を強盗殺人に切り替えた[44]。
- ^ 和室は物的証拠・微物の収集を優先していた[44]。
- ^ 現場検証は5月17日夜まで続いた[64]。
- ^ a b Aの遺体は毛布をめくれば簡単に発見できる状態で、負傷した三男Cは助けを求めた際に「中で2人死んでいる」と発言していたため、『中日新聞』に情報をリークした捜査関係者は「殺人事件の現場に立つ経験が長ければ、大量の血痕を見て『もう1人遺体がある』と思うはずだ」と苦言を呈していた[63]。
- ^ これらの遺留品のうち、東海3県で当該するパーカーと手袋が両方とも販売されていた地域は三重県四日市市周辺・名古屋市都心部(名古屋駅・金山駅周辺)および愛知県豊田市周辺に限定されていた[40]が、実際に逮捕されたLは三重県津市内で生活していた。ただし津駅から四日市市・名古屋駅までは、いずれも近鉄名古屋線(近鉄四日市駅)か、JR東海関西本線・伊勢鉄道伊勢線(四日市駅)の快速「みえ」を利用すれば乗り換えなしで移動できた。
- ^ 夕食の食べ残しがあった食器(廊下に落ちていた味噌汁の椀)に付着した唾液から検出されたDNA型を鑑定したところ、被害者3人 (A・B・C) や別居中のAの長男・四男のいずれとも異なるDNA型が検出された[69]。
- ^ この点について、特捜本部は『中日新聞』の取材に対し「近年は現場保存が重視され、物的証拠・遺留品に神経質になっている」とコメントしている[63]。
- ^ 現場検証の結果、濡れたウィンドブレーカー(サイズは家族の衣服より大きく、三男Cも「見覚えがない」と証言していた)が玄関付近で発見された[77]。
- ^ その後、2010年[83]。・2011年にはそれぞれ1年ずつ期間が延長された[84][85]。
- ^ 豊田警察署管轄。
- ^ 本事件の翌年(2010年)には再び万引きをして罰金刑に処された[8]。
- ^ 卒業間際、Lは急に「大学院に行きたい」と所属ゼミの教授に頼み込んだが、教授から断られた[32]。
- ^ また、内定を得た際には中国に一時帰国し、家族に日本での就職を報告していた[36]。
- ^ 当時Lは日本語検定一級の資格を持っており、メーカーの社長は『毎日新聞』の取材に対し「面接時、真面目な印象だったので採用を決意した。コンビニでのアルバイトの話などをしており、『学生時代はあまりお金がなかったようだな』という印象を持っていた」と証言していた[36]。
- ^ 当時の月給は手取り約20万円で、Lは「ずっと日本で働き続けたい」と言っていた[36]。そのため、「大事に育てたい」と思った社長は、工場のラインではなく技術・製品検査の仕事をさせており[36]、将来的には母国・中国にある工場の幹部に登用しようと考えていた[88]。
- ^ a b Lは2012年10月に逮捕された際、窃盗の被害者に捕まらないよう、凶器となりえる6本のナイフを持ち歩いていた[8]。
- ^ 当時、被疑者Lは鈴鹿署の取り調べに対し「移動手段として車を盗んだ」と供述した[9]。また、同事件の捜査中には鈴鹿署の留置場で手首を傷つけ自殺を図った[37]。
- ^ 当時は津地方裁判所に起訴されていたが[91][30][89]、後に本事件とともに名古屋地裁にて一括で審理された[4]。
- ^ 特に初公判直前の2014年(平成26年)11月には、靴下を首に巻き付けて自殺を図り、低酸素脳症で意識障害を負った[37]。
- ^ Lの両親は事件後、借金をして被害者遺族に500万円の被害弁償を申し出ていた[13]。
- ^ 犯罪被害者・遺族の救済支援のため、重大事件の刑事裁判の有罪判決後、同じ裁判官が公判記録を使って賠償額などを審理する制度[144][145]。
- ^ 原告Cの代理人弁護士は判決後、「請求を認容する判決をいただいたが、実際にLから履行される可能性がないに等しいことを考えると、誠に遺憾でならない」とコメントしている[14]。
- ^ その後、「あまロータリークラブ」は防犯対策強化の一環として2011年5月23日、新たに近鉄蟹江駅前駐輪場に防犯カメラ1台を増設している[150]。
出典
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- ^ 『中日新聞』2010年2月16日朝刊尾張版16頁「殺傷事件二度と起きぬよう 市民が防犯カメラ寄贈 蟹江町と弥富市に」(記者:伊藤隆平)
- ^ 『中日新聞』2010年3月13日朝刊尾張版18頁「『あ』空き巣狙い、対策講じて安心我が家 安全な街へ「防犯標語」 蟹江の住民パト隊5周年 頭に『あ』から『ん』45文字 隊長・○○さんが考案」(記者:伊藤隆平。見出し内に事件関係者ではないが、一般人の実名が含まれていたため、その箇所を伏字とした)
- ^ 『中日新聞』2011年4月22日朝刊愛知県内総合面19頁「防犯ブザーでSOSを 近鉄蟹江駅 無料で10個貸し出し 通り魔事件などで蟹江署設置」(記者:伊藤隆平)
- ^ 『中日新聞』2010年5月15日朝刊愛知県内版24頁「被害者同級生らが情報提供呼び掛け 蟹江・一家殺傷事件」(記者:伊藤隆平)
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