悪性腫瘍における血管新生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 12:06 UTC 版)
「血管新生」の記事における「悪性腫瘍における血管新生」の解説
癌の進展はイニシエーション(第1段階、不死化)、プロモーション(第2段階、増殖)、プログレッション(第3段階、転移及び浸潤)の過程を経て行われる。これらのうち、プログレッションの段階に血管新生が関与している。癌の病巣の特徴として栄養不足、細胞外の低pHそして血流が不足することによる酸素不足(低酸素)状態が挙げられる。癌細胞はこのハードな条件化において新たに血管網を形成することにより病巣への血流を増加し低酸素状態を脱しようとする。血流の増加は転移経路の確保にもつながっている。低酸素条件化においては転写因子である低酸素誘導因子(Hypoxia Inducible Factor、HIF)-1αが働き、種々の遺伝子の転写を亢進させる。HIF-1αは正常酸素圧下でも産生はされるがタンパク質分解酵素であるプロテアソームにより分解されてしまうため機能しない(右図参照)。 HIF-1αは細胞核内へ移行するとHIF-1β(Arnt)と結合する。HIF-1αのAsp803残基はヒストンアセチル基転移酵素活性を持った分子複合体CBP/p300をDNA上のプロモーター領域である低酸素応答性領域(Hypoxia Responsive Element、HRE)へ運搬し、目的遺伝子の転写を促進する。VEGFもHIF-1αによって産生が促進される分子の一つであり、血管新生の過程に関与する。 また慢性炎症は発癌のリスク要因であり、炎症に関与する転写因子NF-κBの活性化を介してVEGFの産生を亢進させる。
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