悪い星の下に (曲)
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「悪い星の下に」 | ||||||||
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アルバート・キング の シングル | ||||||||
初出アルバム『悪い星の下に』 | ||||||||
B面 | Personal Manager | |||||||
リリース | ||||||||
規格 | 7インチ・シングル | |||||||
録音 | ||||||||
ジャンル | ブルース、R&B | |||||||
時間 | ||||||||
レーベル | スタックス | |||||||
アルバート・キング シングル 年表 | ||||||||
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「悪い星の下に」(わるいほしのしたに、原題:Born Under A Bad Sign)は、アメリカ合衆国の歌手、ギタリストアルバート・キングが1967年にレコーディングし、リリースした楽曲である。「永遠のブルース定番曲」と称されたこの曲は[3]、シンクロしたベースとギターのフレーズと占星術をテーマとした歌詞を特徴とし、ブルースを超えてロック層にも強くアピールした[4]。この曲はR&Bチャート入りし、ブルースのスタンダード曲として知られるようになった。
概要
「悪い星の下に」の作詞は、スタックス・レコード所属のR&B歌手、ウィリアム・ベル、作曲はスタックスのバンドリーダーでブッカー・T&ザ・MG'sのブッカー・T・ジョーンズが行なった。ベルは以下のように述べている。「アルバート・キングのためのブルース曲が必要でした。私は心の片隅で、これを自分でやると考えていました。占星術が当時とても流行っていました。だから、もしかするとこれを入れればうまくいくかもと思ったんです[5]。」
「ワインと女性」が「不運とトラブル」を和らげると歌い、一転コーラスでは以下の言葉遊びをする:
悪い星の下に生まれ、這い始めた頃から落ち込んでいた
私にとって運なんて、不運しかない
似た歌詞はこれより古い曲でも見ることができる。ピアニストで歌手のカズン・ジョーは、サム・プライス・トリオと共に1947年に「Bad Luck Blues」をレコーディングしているが、この曲には「私にとって運なんて、不運しかない」という一節が登場する[6]。1954年にライトニン・スリムがレコーディングした「Bad Luck Blues」のスワンプ・ブルース・バージョンにはやはり同じ歌詞が歌われ、更には「這い始めた頃からずっと、哀れなライトニンのあとを不運が付いて回るんだ」とも歌われている[7]。
ジョーンズによるこの曲の編曲は、ブルースの典型である12小節形式のI-IV-V進行に沿っていない。どちらかと言えばR&Bスタイルのベースとリズム・ギターのフレーズが使われており、ベルによると彼はこれを「ギターで遊んでいるときに」思いついたという[5]。アルバート・キングは、ブッカー・T&ザ・MG'sとメンフィス・ホーンズのサポートを受け、彼の特徴的なギターフィルをボーカルの合間に入れたのを始め、ソロも披露している。
この曲はシングルでリリースされ、ビルボード誌のR&Bチャートで49位を記録した[8]。その後キングのスタックスからの同名のファースト・アルバムに収録されている。アルバム・ジャケットのデザインは、黒猫、カレンダーの13日の金曜日のページ、頭がい骨と交差した骨、スペードのエース、蛇の眼(サイコロの1のぞろ目)という不運あるいは迷信を表す内容となっている。この曲は、その後キング自身のコンピレーションを始め、様々な盤に収録されている[9]。
アルバート・キングは、プロデューサーにアラン・トゥーサンを迎えて制作した1978年のアルバム『New Orleans Heat』でもこの曲を再演している[10]。ライヴ・バージョンは『Wednesday Night in San Francisco』、『Chicago 1978』、スティーヴィー・レイ・ヴォーンとの共演『In Session』、『The Godfather of the Blues: His Last European Tour 1992』、『Talkin' Blues』などで聴くことができる。
作者のウィリアム・ベルとブッカー・T・ジョーンズはそれぞれ自身のアルバム(ベルは1969年の『Bound to Happen』、ジョーンズは1968年の『Soul Limbo』)でこの曲を取り上げている[11]。ベルは更に2016年のアルバム『This Is Where I Live』でもこの曲を再演している[12]。
カバー・バージョン
クリームのバージョン
「悪い星の下に」 | |
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クリームの楽曲 | |
収録アルバム | 『クリームの素晴らしき世界』 |
リリース | 1968年8月9日 |
録音 | 1968年 |
ジャンル | ブルースロック |
時間 | 3分9秒 |
レーベル | |
作曲者 | ブッカー・T・ジョーンズ |
作詞者 | ウィリアム・ベル |
プロデュース | フェリックス・パパラルディ |
イギリスのロック・グループ、クリームは、3枚目のアルバム『クリームの素晴らしき世界』(原題:Wheels Of Fire)でこの曲をレコーディングした。エリック・クラプトンによると、彼らのレコード会社はスタックス・レコードの配給も行なっていたことから、バンドにこの曲をやるように要請をしたのであった。クリームのバージョンはキングのものを踏襲しているが、ベーシストで歌手のジャック・ブルースが2つの歌詞を1つにまとめ「私は10歳のときから落ち込んでいた」と歌っている。また、クラプトンによる長いギター・ソロが入れられた。音楽学者のロバート・パーマーはクラプトンのプレイについて「実質的にアルバート・キングのパロディである」と説明している[4]。
クリームは1967年10月24日にBBCのためにライヴ・バージョンをレコーディングしており、2003年に『BBC Sessions』としてリリースされた[13]。2005年のクリーム再結成の際のパフォーマンスでもこの曲が演奏され、ライヴ盤『Royal Albert Hall London May 2-3-5-6, 2005』に収録された[14]。
その他の主なカバー・バージョン
年 | アーティスト名 | 収録アルバム |
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1968年 | バターフィールド・ブルース・バンド | 『The Resurrection of Pigboy Crabshaw』 |
1969年 | ザ・ゴールデン・カップス | 『スーパー・ライヴ・セッション』 |
1969年 | ビッグ・ママ・ソーントン | 『Stronger Than Dirt』 |
1971年 | リタ・クーリッジ | 『Rita Coolidge』 |
1980年 | ピーター・グリーン | 『Little Dreamer』(夢幻のギター) |
1988年 | ロベン・フォード | 『Talk To Your Daughter』 |
1988年 | RCサクセション | 『COVERS』[15] |
1993年 | ココ・テイラー・ウィズ・バディ・ガイ | 『Force Of Nature』 |
1993年 | ポール・ロジャーズ・フィーチャリング・ニール・ショーン | 『Muddy Water Blues - A Tribute to Muddy Waters』 |
1998年 | エタ・ジェイムズ | 『Life, Love & The Blues』 |
2000年 | クリス・トーマス・キング | 『Me, My Guitar And The Blues』 |
2016年 | ジョー・ボナマッサ | 『Live At The Greek Theatre』 |
評価と影響力
1988年、アルバート・キングの「悪い星の下に」はブルース・ファウンデーションが主宰するブルースの殿堂に迎え入れられた。その際ライターのジム・オニールはこの曲について以下のコメントを寄せている。「アルバート・キングの代表的なヒット曲の一つで、1967年にチタリン・サーキットから抜け出し、フィルモアのようなロックの会場に進出し始めた左利きのギタリストにクロスオーバーの支持をもたらすきっかけとなった[3]。
キングのこの曲はまた、ロックの殿堂の「ロックンロールを形作った500曲」のリストにも入れられている[17]。音楽ライターのチャールズ・シャー・マリーは次の通りコメントしている。「Crosscust Saw、Oh Pretty Woman、そして何よりも悪い星の下には素早くブルースのスタンダートとなり、ブルースの基調としたアーティストへのキングの影響力を示したのだ[18]。」
脚注
- ^ Les Fancount; Bob McGrath (2006). The Blues Discography 1943-1970: The Classic Years. Eyeball Productions. p. 342. ISBN 978-0-968-64457-7
- ^
King of the Blues Guitar (CD reissue liner notes). Albert King. New York City: Atlantic Records. 1989. p. 1. 8213-2.
{{cite AV media notes}}
: CS1メンテナンス: cite AV media (notes) のothers (カテゴリ) - ^ a b Jim O'Neal (2016年11月10日). “1988 Hall of Fame Inductees: Born Under a Bad Sign – Albert King (Stax, 1967)”. Blues.org. 2017年2月8日閲覧。
- ^ a b Robert Palmer (1982). Deep Blues. New York City: Penguin Books. p. 246. ISBN 0-14006-223-8
- ^ a b Rob Bowman (1997). Soulsville USA: The Story of Stax Records. Music Sales Group. pp. 126–127
- ^ Pleasant "Cousin Joe" Joseph; Harriet J. Ottenheimer (2012). Cousin Joe: Blues from New Orleans. Gretna, Louisiana: Pelican Publishing. pp. 96, 205. ISBN 978-1455615438
- ^ John Broven (1992). South to Louisiana: The Music of the Bayous. Gretna, Louisiana: Pelican Publishing. p. 122. ISBN 0-88289-608-3
- ^ Joel Whitburn (1988). Top R&B Singles 1942–1988. Menomonee Falls, Wisconsin: Record Research. p. 238. ISBN 0-89820-068-7
- ^ “Albert King: 'Born Under a Bad Sign' – Appears On”. AllMusic. 2025年8月27日閲覧。
- ^ Bill Dahl. “Albert King: New Orleans Heat – Review”. AllMusic. 2022年9月7日閲覧。
- ^ “'Born Under a Bad Sign' – Also Performed By”. AllMusic. 2022年9月7日閲覧。
- ^ Mark Demming. “William Bell: This Is Where I Live – Review”. AllMusic. 2022年9月7日閲覧。
- ^ Richie Unterberger. “Cream: BBC Sessions – Review”. AllMusic. 2022年9月7日閲覧。
- ^ Stephen Thomas Erlewine. “Cream: Royal Albert Hall: London May 2-3-5-6 2005 – Review”. AllMusic. 2025年8月27日閲覧。
- ^ “RCサクセションの名盤がアナログLPレコードで初の復刻!『COVERS』『コブラの悩み』3/22同時発売”. PR Times (2023年2月3日). 2025年8月28日閲覧。
- ^ “Cover versions of Born Under A Bad Sign”. SecondHandSongs. 2025年8月28日閲覧。
- ^ “500 Songs That Shaped Rock and Roll”. Rock and Roll Hall of Fame (1995年). 2007年5月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月4日閲覧。
- ^ Charles Shaar Murray (1991). Crosstown Traffic. New York City: St. Martin's Press. pp. 141–142. ISBN 0-312-06324-5
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