広陵高校硬式野球部部員内暴力騒動とは? わかりやすく解説

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広陵高校硬式野球部部員内暴力騒動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/22 12:35 UTC 版)

広陵高校硬式野球部部員内暴力騒動(こうりょうこうこうこうしきやきゅうぶぶいんないぼうりょくそうどう)とは、広島県広陵高等学校硬式野球部の部内で2025年1月下旬に暴力行為があったとする投稿がSNS上で拡散されたことを発端として、同校やその生徒・関係者に誹謗中傷犯罪予告が相次ぎ、同部が第107回全国高等学校野球選手権大会の出場を大会途中で辞退するに至った一連の騒動である[1]

経緯

2025年1月下旬、硬式野球部1年生の男子(当時)がカップラーメン飲食を行った事を理由に、4人の2年生男子(当時)が当該部員に対して暴力行為を行った。学校側は関係者に聞き取りをしたうえで日本高等学校野球連盟に報告した[2]。報告を受けた日本高等学校野球連盟は、同年3月5日に野球部へ厳重注意を行った。

同年8月の甲子園大会には出場し、8月7日の1回戦では北北海道代表の旭川志峯高等学校に勝利。試合後の整列の際に旭川志峯の部員3人が握手をしなかったことについて、1月の事件が影響した可能性が指摘された[3][注釈 1]。同日、他の暴力行為もあった可能性も浮上。8月8日に学校は「第三者委員による調査中」と発表した。

本件がSNSで話題となり拡散されると、生徒への誹謗中傷が相次ぎ、爆破予告や部員の顔写真の拡散が行われた[4][5][1]。8月10日、同校は「生徒、教職員、地域の方々の人命を守ることを最優先する」として出場を辞退した[注釈 2]

その後

2025年8月19日、広陵高校は9月6日に予定していたオープンスクールの中止を発表した[8]。校内に不特定の人が出入りするリスクや、学校周辺で混乱が発生することを懸念しての対応である。

同年8月21日、同校硬式野球部の監督であった中井哲之が同月20日付で退任したこと及び部長(責任教師)が別の教員に交代することが発表された[9]

調査

2025年1月の事案について、学校の確認した内容と生徒側の主張に食い違いがあることから、同校は再調査の実施や第三者委員会の設置などを予定している[9]。また、硬式野球部の抜本的改革に向け、外部の学識経験者などから成る「学校改善検討委員会」も設け、学校運営に反映させるという[9]

広陵高校は辞退後、硬式野球部員の1年生及び2年生約100人に対してアンケートと聞き取り調査を実施した[9]。その結果、彼らは暴行事案等に関与しなかったとして、新チームの対外試合などの活動を実施するとした。広島県高野連もこれを了承し、同校は秋季地区大会の予選に出場した。

反応

  • アナウンサーの宮根誠司は、「誹謗中傷とか爆破予告っていうのは犯罪ですよ」とSNSに警鐘を鳴らした[10]
  • 弁護士の紀藤正樹は、1月の暴行事件について「この種の事案では『加害生徒』が転校させられるのが一般的で、『被害生徒』の方が転校という結果には、なぜそうなったのかの検証が必要ではないでしょうか」と疑問を呈した[11]
  • 開星中学校・高等学校硬式野球部監督の野々村直通はこの騒動に関し、SNSに書き込んでいる人間に対して「陰からものを言うのは卑怯だといつも思う。うちは匿名で手紙が来たりするけど、名を名乗れと。『我こそは出雲国の野々村であるぞ、いざ尋常に』ってね。批判をするなら出てこいと、お互いに。武士道でしょう。日本人の文化なんですよ。弱い者をいじめないとか、年寄りを大事にするとか、そこの人間性が原点でしょう」と批難した[12]
    • 青汁王子として知られる実業家の三崎優太は野々村の発言に賛同し、「広陵高校の件は社会全体の集団リンチと化してるよ。いじめは悪なのは言うまでもない、許してはいけない。でも、社会全体が同じことやってない?違うの?」と問いかけた[13]
  • 同年8月23日に行われた大会閉会式において、主催者の高野連会長の寶馨は「今回代表校が大会途中に出場辞退することになり、各方面にご迷惑とご心配をおかけしました。日本高校野球連盟としては今回の事態を大変深刻に受け止めております。このような事態に至った経緯をしっかり検証し、より適切な対応を検討してまいります」と述べた[14]。また、主催者の朝日新聞社社長の角田克は「この間いただいたさまざまご指摘を大会主催者として真摯に受け止め、甲子園大会がこれからも、全国の球児の皆さんから夢を託していただける場として、フェアプレー、フレンドシップ、ファイティングスピリット、3つの高校野球の精神が同心円で重なり合う場で有り続けるよう、絶え間ぬ改善に努めてまいります」とコメントした[15]
  • この騒動は日本のみならず、イギリス[16]韓国[17]マレーシア[18]でも報じられた。
  • 広島県高等学校野球連盟は8月21日、「加盟校の野球部活動について指導・助言を行う立場である当連盟として、改めて、すべての皆様に、深くお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした」と謝罪し、各種の対応策を発表した[19]。また、「近年、スポーツ競技大会において、大会関係者に対する誹謗中傷や差別的な言動などが、特にSNS上で拡散される事案が確認されるようになっています」と指摘し、選手や審判に対してそうした言動があった場合は「法的措置を含めて毅然とした対応をとってまいります」と発表した[20]

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 真意は不明であり、単に忘れた、悔しくて握手できなかったなどの可能性も指摘されている。
  2. ^ 不祥事関連で開幕後に出場を辞退するのは高校野球(春の選抜高等学校野球大会及び夏の全国高等学校野球選手権大会)としては初めての出来事[6][7]

出典

  1. ^ a b 広陵が出場辞退、誹謗中傷や寮の爆破予告に校長「生徒らの人命守ることを最優先」”. 読売新聞. 株式会社読売新聞グループ本社 (2025年8月10日). 2025年8月11日閲覧。
  2. ^ <独自>甲子園出場・広陵の暴力事案がXで拡散 高野連が厳重注意済み、学校は見解公表へ”. 産経新聞. 株式会社産経デジタル (2025年8月5日). 2025年8月10日閲覧。
  3. ^ 【甲子園】広陵高校の暴力問題に“別の事案”発覚「隠蔽する気満々」凄惨な被害内容と“後手後手”対応に猛批判”. 週刊女性PRIME. 株式会社主婦と生活社 (2025年8月16日). 2025年8月8日閲覧。
  4. ^ 時事通信 運動部 (2025年8月10日). “広陵が出場辞退 暴行事案で誹謗中傷やまず―全国高校野球”. 株式会社時事通信社. 2025年8月10日閲覧。
  5. ^ 広陵高校が夏の甲子園辞退 暴力事案がSNS拡散「重く受け止める」”. 日本経済新聞. 株式会社日本経済新聞社 (2025年8月10日). 2025年8月10日閲覧。
  6. ^ 共同通信 (2025年8月10日). “広陵が夏の甲子園出場を辞退 部内暴力などSNSで拡散”. 47NEWS. 株式会社全国新聞ネット. 2025年8月14日閲覧。
  7. ^ 西山夏奈、高橋広之 (2025年8月10日). “広陵が夏の甲子園出場辞退 大会中に不祥事発覚 SNSで中傷相次ぐ”. 毎日新聞. 株式会社毎日新聞社. 2025年8月14日閲覧。
  8. ^ 広陵高校「オープンスクール」中止を発表 「不特定多数の人が校内に入るリスク」を懸念 野球部員の暴力事案巡り”. 日テレNEWS. 株式会社日本テレビ放送網 (2025年8月19日). 2025年8月24日閲覧。
  9. ^ a b c d 広陵高校、中井哲之・野球部監督の退任を発表 部内の暴行事案受け”. 朝日新聞. 株式会社朝日新聞社 (2025年8月21日). 2025年8月24日閲覧。
  10. ^ 宮根誠司氏、広陵の甲子園出場辞退で過熱SNSに警鐘「誹謗中傷とか爆破予告っていうのは犯罪ですよ」”. スポーツ報知. 株式会社報知新聞社 (2025年8月10日). 2025年8月11日閲覧。
  11. ^ 【甲子園】広陵の暴力事案で被害生徒が転校…紀藤正樹弁護士「なぜそうなったのかの検証が必要」”. 東スポweb. 株式会社東京スポーツ新聞社 (2025年8月8日). 2025年8月11日閲覧。
  12. ^ 【甲子園】開星の野々村監督が広陵問題に言及 過熱したSNS誹謗中傷に「陰から言うのは卑怯、名を名乗れと”. スポーツ報知. 株式会社報知新聞社 (2025年8月14日). 2025年8月14日閲覧。
  13. ^ 元青汁王子 開星・野々村監督の「名を名乗れ」発言に賛同「広陵の件は社会全体の集団リンチと化してる」”. スポニチアネックス. 株式会社スポーツニッポン新聞社 (2025年8月14日). 2025年8月14日閲覧。
  14. ^ 角田直哉 (2025年8月23日). “日本高野連会長、閉会式で広陵の出場辞退に言及 夏の甲子園”. 毎日新聞. 株式会社毎日新聞社. 2025年8月24日閲覧。
  15. ^ 甲子園閉会式、大会会長も広陵の暴力問題について触れ謝罪…「大変ご迷惑、ご心配を」「絶え間ぬ改善に努めてまいります」”. 中日スポーツ・東京中日スポーツ. 株式会社中日新聞社 (2025年8月23日). 2025年8月24日閲覧。
  16. ^ McCurry, Justin (2025年8月11日). “Japan rocked by bullying scandal after team withdraws from high school baseball tournament”. The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/world/2025/aug/11/japan-baseball-bullying-koryo-high-school-tournament-ntwnfb 2025年8月24日閲覧。 
  17. ^ 広陵高校の「暴力事案」、韓国メディアが反応 「想像を絶する騒動で甲子園大会が騒然」開幕直後から混乱の極み”. J-CASTニュース. 株式会社ジェイ・キャスト (2025年8月7日). 2025年8月24日閲覧。
  18. ^ AFP (2025年8月10日). “Japan school exits hugely popular baseball event over bullying”. NST Online. New Straits Times. 2025年8月24日閲覧。
  19. ^ 広島高野連が広陵に抜本的変革を指導 問題点を整理して学校全体での組織的改革を求める 校長には毎月報告の義務 加盟校には研修会を実施”. デイリースポーツ. 株式会社神戸新聞社 (2025年8月21日). 2025年8月25日閲覧。
  20. ^ 広島県高野連、誹謗中傷には「法的措置含め毅然と対応」 県秋季大会前に異例の声明”. 産経新聞. 株式会社産経デジタル (2025年8月20日). 2025年8月25日閲覧。
  21. ^ 神戸・育英野球部員を逮捕 夏の大会への出場は認める」『asahi.com』株式会社朝日新聞社、2006年7月22日。オリジナルの2017年8月2日時点におけるアーカイブ。2025年8月13日閲覧。
  22. ^ 「育英耐えた!不祥事ヤジに笑顔なき白星…高校野球選手権・兵庫大会」『スポーツ報知』株式会社報知新聞社、2006年7月25日。
  23. ^ 青森山田「遺族に心からおわび」 野球部員急死で会見」『asahi.com』株式会社朝日新聞社、2011年12月21日。オリジナルの2011年12月22日時点におけるアーカイブ。2025年8月16日閲覧。
  24. ^ 落合一郎「部員の不祥事でも出場辞退しなかった作新学院 怒りの会社員が甲子園球場に脅迫電話」『リアルライブ』株式会社アンカード、2012年8月22日。オリジナルの2025年7月11日時点におけるアーカイブ。2025年8月13日閲覧。

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