多項式の内容と原始多項式
(多項式の容量 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 01:08 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動代数学における多項式の内容[1](ないよう、英: content; 容量[2])は、与えられた多項式のすべての係数の最大公約数を言い、内容が 1 に等しい多項式は原始多項式(げんしたこうしき、英: primitive polynomial)であるという[3]。この場合の多項式は、整係数(あるいはより一般にUFDなど、最大公約数の定義できる整域(GCD整域))で考えるものとする。
任意の多項式は、その内容と原始多項式の積として(係数環の単元を掛ける違いを除いて)一意に表される(内容–原始成分分解)。このとき、原始多項式となる因子を、この多項式の原始成分 (primitive part) と呼ぶ。すなわち、多項式をその内容で割ったものがその多項式の原始成分であり、原始多項式の原始成分はもとの原始多項式そのものである。
多項式に関するガウスの補題は、(同じUFDを係数環とする)原始多項式の積がふたたび原始多項式となることを述べるものである。これはしたがって、多項式の積の内容および積の原始成分は、それぞれ内容の積および原始成分の積に等しいことを意味する。
係数の最大公約数を計算することは多項式の因数分解の計算よりも極めて計算量が低いから、多項式の因数分解を行うためのアルゴリズムでは一般には真っ先に内容–原始成分分解を行うべきである(これにより、多項式の因数分解問題は、内容および原始成分の分解問題に分割して帰着される)。
内容および原始多項式の概念は、有理係数(あるいはより一般にGCD整域の商体)の場合に一般化することができる。これにより、有理係数多項式の因数分解問題が整係数多項式の因数分解と整数の最大公約数の計算を行うことに本質的に同値であると知ることができる。
整数環上での記述
整係数多項式の場合、多項式の内容はそれに現れる係数すべての最大公約数またはその反数である(どちらとするかは任意であり、あるいは規約にもよるが、ふつうは原始成分の最高次係数を正とするように選ぶ)。
性質
以下、係数環 R はUFD(典型的には整数環や体上の多項式環)とする。UFDにおいて最大公約数は矛盾なく定義され、それは R の単数を掛ける違いを除いて一意である。
R-係数多項式 P の内容を c(P) と書くことにすれば、それは P のすべての係数の最大公約数として単元倍の違いを除いて一意に定まる。また P の原始成分を pp(P) と書けば、それは P を内容で割った商 P/c(P) に等しく、したがって R の単元倍の違いを除いて一意に定まる R-係数多項式である。P の内容をその単元倍に取り換えるとき、原始成分は同じ単数の逆数倍で置き換えるならば
注
注釈
- ^ つまり既約元が素元であることを言うものである。UFD、特に体上の多項式環において、既約元と素元の同値性は重要であった。
出典
参考文献
- ブルバキ, ニコラ『可換代数 4』東京図書〈数学原論〉、1972年。
- Hartley, B.; T.O. Hawkes (1970). Rings, modules and linear algebra. Chapman and Hall. ISBN 0-412-09810-5
- 服部, 昭『現代代数学』朝倉書店、1968年。
- Page 181 of Lang, Serge (1993), Algebra (Third ed.), Reading, Mass.: Addison-Wesley Pub. Co., ISBN 978-0-201-55540-0, Zbl 0848.13001
- 永尾, 汎『代数学』朝倉書店、1983年。
- Sharpe, David (1987). Rings and factorization. Cambridge University Press. pp. 68–69. ISBN 0-521-33718-6
外部リンク
- Weisstein, Eric W. "Content". MathWorld (英語). / Weisstein, Eric W. "Primitive Part". MathWorld (英語).
- content of polynomial - PlanetMath.(英語)
- Definition:Content of Polynomial at ProofWiki / Definition:Primitive Polynomial at ProofWiki
- Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), "Primitive polynomial", Encyclopaedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4。
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