多相睡眠とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 多相睡眠の意味・解説 

多相睡眠

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/21 07:38 UTC 版)

多相睡眠(たそうすいみん、Polyphasic sleep、分割睡眠 Segmented sleep, divided sleep)は、一に複数回の睡眠をとることである。人工照明発明以前の人類が行っていた、動物の一般的な睡眠法とされる[1]

2相睡眠(Biphasic sleep)

電気照明が発明される以前の中世近世ヨーロッパでは、人々は夜寝始めの「第1睡眠」、夜中に目が覚めて朝まで寝る「第2睡眠」の2回の睡眠を取っていた[2][3]

冬のような短い昼日光(10時間以下)の期間、ヒトは2相睡眠に適応する[4]

人工照明の無い生活をするとヒトは2相睡眠を行う[5][6][7]。これは1992年にトーマス・ウェーア英語版による研究で確かめられた[8]。ウェーアは数週間実験したところ、被験者は4時間眠り、2,3時間起き、再び4時間眠るという睡眠パターンをとった[9]

歴史

「第1睡眠」「第2睡眠」の用語は、古くはホメーロスの『オデュッセイア』、ウェルギリウスの『アエネーイス』といった、紀元前に書かれた書物にみられる[10]。中世またはそれ以後も『ドン・キホーテ』、『モヒカン族の最後』、『ジェーン・エア』、『戦争と平和』といった小説で言及があり、19世紀の1000以上の新聞でも「第1睡眠」「第2睡眠」の記述があるという[10]。しかし、この睡眠が一般的だった時代には、この睡眠方法についての調査や研究はなく、詳細についてはわかっていない[11]。ヨーロッパ以外では、ナイジェリアティヴ族がこの睡眠方法をとっていたことが1969年の調査で明らかになっている[9]

この睡眠方法は、17世紀終わりごろから、都市部を中心に徐々に一般的でなくなっていった。この原因の1つには人工照明の普及が挙げられる。人工照明によりこれまでの睡眠のリズムが変化し、人々は1度に睡眠をとるようになったと考えられている[12]

名称

中世英国ロマンス語諸語、ナイジェリアのティヴ族では、最初の眠りを「第1睡眠」、一度目が覚めてから2度目の眠りを「第2睡眠」と名付ける[13][14]

双方の睡眠の間の覚醒状態はフランス語では dorveille (睡眠と覚醒の間) と呼ばれる[15]

生活リズム

「第1睡眠」「第2睡眠」が一般的だった時代、人々は午後9時または10時頃に睡眠に入り、約3時間半後に目を覚まして1時間程度過ごし、その後再び3時間半ほど寝ていたと考えられている[10]

第1睡眠と第2睡眠の間の行動としては、執筆活動、読書、裁縫、祈り、トイレ、軽食、掃除、隣人との話などがあった[10]ベンジャミン・フランクリンはロンドンに在住していたとき、早朝に起きて裸で読書や書き物をして、その後ベッドで1,2時間睡眠をとっていたという[16]

睡眠パターンの比較

[17]

名称 合計睡眠時間 方法
単相(Monophasic) ≈8.0 h 8 時間の主睡眠、4回のレム(REM)相
2相(Biphasic) ≈6.3 h 6 時間の主睡眠、3回のレム相 と、20分の仮眠1回、1回のレム。
通常 (昼寝 2回) 5.2 h 4.5 時間の主睡眠、2回のレム相 と、20分の仮眠2回、1回のレム。  
通常 (昼寝 3回) 4 h 3 時間の主睡眠、1回のレム相 と、20分の仮眠3回、1回のレム。  
通常 (昼寝 4-5回) ≈3 h 1.5 時間の主睡眠、1回のレム相 と、20分の仮眠4-5回、1回のレム。
ダイマクション(Dymaxion)[18][19] 2 h 毎6時間(レム1回)に、30分の仮眠(計4回)
ウーベルマン(Uberman、ドイツ語:「超人」) 2 h 毎4時間(レム1回)に、20分の仮眠(計6回)

関連項目

参照

  1. ^ Capellini, I.; Nunn, C.L.; McNamara, P.; Preston, B.T.; Barton, R.A. 2008. Energetic constraints, not predation, influence the evolution of sleep patterning in mammals. Functional Ecology 22:847–853.
  2. ^ http://www.historycooperative.org/journals/ahr/106.2/ah000343.html, Sleep We Have Lost: Pre-industrial Slumber in the British Isles, The American Historical Review
  3. ^ ジェッサ・ギャンブル 「自然な睡眠周期」の講演映像 - TEDカンファレンス、2010年9月、4分1秒。
  4. ^ Wehr, T.A. (June 1992). “In short photoperiods, human sleep is biphasic”. J Sleep Res 1 (2): 103–107. doi:10.1111/j.1365-2869.1992.tb00019.x. PMID 10607034. 
  5. ^ Coturnix (16 October 2006). “What is a 'natural' sleep pattern?”. A Blog Around the Clock (ScienceBlogs). http://scienceblogs.com/clock/2006/10/what_is_a_natural_sleep_patter.php 2007年12月29日閲覧. "Includes image: the original data from Wehr's experiment." 
  6. ^ A. Roger Ekirch (2005), At Day's Close: Night In Times Past, pp. 308-310,311-323 ISBN 0-393-05089-0
  7. ^ Frances Quarles (London 1644), Enchirdion ch. 54
  8. ^ ラミレズ 2021, p. 40.
  9. ^ a b イーカーチ 2015, p. 436.
  10. ^ a b c d ラミレズ 2021, p. 21.
  11. ^ イーカーチ 2015, pp. 431–432.
  12. ^ イーカーチ 2015, p. 479.
  13. ^ A. Roger Ekirch (2005), At Day's Close: Night In Times Past, pp. 301-302 ISBN 0-393-05089-0
  14. ^ イーカーチ 2015, pp. 432, 436.
  15. ^ イーカーチ 2015, p. 446.
  16. ^ イーカーチ 2015, p. 440.
  17. ^ Lejuwaan, Jordan. http://www.highexistence.com/alternate-sleep-cycles/
  18. ^ バックミンスター・フラー、6時間毎に30分の睡眠をとる生活を2年間継続 “Dymaxion Sleep”. Time Magazine. (1943-10-11). http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,774680,00.html 2008年1月12日閲覧。. 
  19. ^ "Dymaxion," polyphasicsleep.info Retrieved on 2009-07-25

参考文献

外部リンク

  • Polyphasic Sleep: Facts and Myths – Dr. Piotr Wozniak – January 2005 – This article compares polyphasic sleep to regular monophasic sleep, biphasic sleep, as well as to the concept of free-running sleep.
  • PolyphasicSleep.info – Informational wiki on intentional polyphasic sleep
  • Miles to Go Before I Sleep at Outside.com, April 2005.
  • Poly-phasers – an online polyphasic community with an active IRC channel, blogs, videos and articles
  • TryPolyphasic.com – an active online polyphasic community, includes a map of world wide polyphasers


このページでは「ウィキペディア」から多相睡眠を検索した結果を表示しています。
Weblioに収録されているすべての辞書から多相睡眠を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
 全ての辞書から多相睡眠 を検索

英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「多相睡眠」の関連用語

多相睡眠のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



多相睡眠のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの多相睡眠 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS