嘘の種本/米一俵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/01 10:23 UTC 版)
前後編含め、様々な人物で説話がある。ある日、吉四六の家に殿様の家来が来て、殿様がお呼びなので今から城に来るようにと命じられた。家来に連れられて吉四六が城へ行くと、殿様が吉四六に向かって、「吉四六。お前は嘘をついて人を騙すのが得意だそうだが、今からわしを騙してみせよ。うまく騙すことができたら、褒美を取らす」と告げた。すると、吉四六は困ったように、「そのような用事なら、先に言って下されば良かったものを。嘘をつくには種本が必要なのですが、そのような用事とは知らなかったので、家に置いてきました」と返す。そこで、殿様は家来を遣わし、その種本を取りに行かせる。しかし、やがて家来が戻って来て、そのような本はどこを探しても見付からなかったと殿様に知らせると、殿様は「よくもわしを騙しおったな」と吉四六に怒鳴った。そこへ吉四六がすかさず「はい、おっしゃる通り殿様を騙しましたから、約束通りご褒美を下さいませ」と返せば、流石の殿様ももう何も言い返せない。そんなわけで、殿様から褒美として米一俵をもらえることになり、家来の一人が馬を一頭牽いてきた。そして米を一俵もらうと、わざと鞍の片方にでんと積み、馬を転倒させてしまう。吉四六は「なんじゃだらしのない馬じゃ」と罵り、それならばともう反対側に廻り、同じようにでんと積むが、やはり馬は転倒してしまう。それを見かねた殿様が「それでは重心が取れず、馬が可哀想ではないか」と告げると、吉四六は「ははっ、それでしたらもう一俵もらえれば、左右の釣り合いが取れて大丈夫でございます」と告げ、結局米二俵をまんまと手に入れて、持ち帰るのだった。
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