右逆写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 14:32 UTC 版)
写像 f: X → Y に対し、f の右逆写像 (right inverse) あるいは切断もしくは断面 (section) とは f ∘ h = id Y {\displaystyle f\circ h=\operatorname {id} _{Y}} を満たす写像 h: Y → X のことをいう。つまり h は Y の各元 y に対して h ( y ) = x ⟹ f ( x ) = y {\displaystyle h(y)=x\implies f(x)=y} なる条件を満足する。したがって h(y) は f によって y へ写されるような x ならばどのようなものでもよい。写像 f が右逆写像をもつ必要十分な条件は、f が全射となることである(ただし一般には、選択公理が必要となるので、右逆写像を構成的に得ることはできない)。 (証明)写像 f: X → Y に対し、 h: Y → X を f の右逆写像とする。このとき、任意の y ∈ Y に対して x = h(y) とすれば、 f(x) = y となるので f は全射。 逆に写像 f: X → Y を全射とする。すると、任意の y ∈ Y において f の原像 f −1 ({y}) は空ではない。したがって集合族 (f −1 ({y}))y ∈ Y (これは f による X の類別でもある)に対して選択関数 φ : (f −1 ({y}))y ∈ Y → X が定義できる。このとき、 h(y) = φ(f −1 ({y})) は Y から X への写像となっており、 f(h(y)) = y となることから h は f の右逆写像である。∎ 左逆写像にも右逆写像にもなっている逆写像は一意でなければならない。同様に、g が f の左逆写像のとき、g は f の右逆写像である場合もあるし、そうでない場合もある。また h が f の右逆写像であるときも、h は必ずしも左逆写像でなくてよい。例えば f: R → [0, ∞) が R の各元 x に対してその平方を与える函数 f(x) = x2 とし、g: [0, ∞) → R を各 x ∈ [0, ∞) に対して正の平方根を与える函数 g(x) = √x とすると、[0, ∞) のどの元 x に対しても f(g(x)) = x が成り立つ。つまり、g は f の右逆函数である。しかし、例えば g(f(−1)) = 1 ≠ −1 であるから、g は f の左逆函数にはなっていない。
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