古ウイグル文字_(Unicodeのブロック)とは? わかりやすく解説

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古ウイグル文字 (Unicodeのブロック)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/27 09:49 UTC 版)

古ウイグル文字 (Unicodeのブロック)
Old Uyghur
範囲 U+10F70..U+10FAF
(64 個の符号位置)
追加多言語面
用字 古ウイグル文字
主な言語・文字体系
割当済 26 個の符号位置
未使用 38 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
14.0 26 (+26)
公式ページ
コード表 ∣ ウェブページ
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古ウイグル文字(こウイグルもじ、英語: Old Uyghur)は、Unicodeブロックの一つ。

解説

8世紀から17世紀ごろ[1]にかけて、現在の中華人民共和国新疆ウイグル自治区にあたる地域に存在していた天山ウイグル王国をはじめとした中央アジア全域[1]で話されていた、テュルク語族シベリア・テュルク語群に属する古ウイグル語(回鶻語)や、周辺で話されるテュルク諸語、中国語モンゴル語ソグド語チベット語において宗教、文学、行政文書の記録を表記するための古ウイグル文字を収録している。モンゴル文字の祖先にあたる文字体系である。

この文字には、楷書体(square)と草書体(cursive)の2つの主要な書体が存在する[1]が、Unicode上ではこれらを同一の文字体系として統合している。

古ウイグル文字はソグド文字から派生した文字体系であり、音素文字のうち基本的に母音を表記せず、子音字のみで綴られるアブジャドに分類される。書字方向には横書きと縦書き両方が存在し、横書きの場合はアラビア文字ヘブライ文字などと同様に右から左への横書き(右横書き)であり、縦書きの場合はグリフが反時計回りに 90 度回転し、モンゴル文字のように左から右へと行を送る縦書き(左縦書き)である。Unicode上では右横書き用の文字として定義されている[2]。一般的には縦書きで書かれる[1]

アラビア文字のように単語内での位置(独立・語頭・語中・語末)によって字形が変化し、単語毎に分かち書きをする。なお、文字の語内位置による字形変化を説明する場合はゼロ幅接合子(U+200D; ZWJ)を用いることで、その字形を表現することができる。例えば字母aleph(U+10F70 𐽰)の語中形は‍𐽰‍U+200D U+10F70 U+200Dの形で表すことができる。

符号位置の順序はおおむね伝統的な古ウイグル文字の順序に従っている。

Unicodeのバージョン14.0において初めて追加された。

収録文字

コード 文字

(独立形)

文字名(英語) 語頭形 語中形 語末形 用例・説明 ラテン文字転写
字母
U+10F70 𐽰 OLD UYGHUR LETTER ALEPH 𐽰‍ ‍𐽰‍ ‍𐽰 子音[ʔ]を表す。 ʾ
U+10F71 𐽱 OLD UYGHUR LETTER BETH 𐽱‍ ‍𐽱‍ ‍𐽱 子音[b]を表す。 b
U+10F72 𐽲 OLD UYGHUR LETTER GIMEL-HETH 𐽲‍ ‍𐽲‍ ‍𐽲 子音[ɡ]或いは[ħ]を表す。 g/ḥ
U+10F73 𐽳 OLD UYGHUR LETTER WAW 𐽳‍ ‍𐽳‍ ‍𐽳 子音[w]を表す。 w
U+10F74 𐽴 OLD UYGHUR LETTER ZAYIN 𐽴‍ ‍𐽴‍ ‍𐽴 子音[z]を表す。 z
U+10F75 𐽵 OLD UYGHUR LETTER FINAL HETH 𐽵‍ ‍𐽵‍ ‍𐽵 子音[ħ]を表す。語末でのみ用いられる。
U+10F76 𐽶 OLD UYGHUR LETTER YODH 𐽶‍ ‍𐽶‍ ‍𐽶 子音[j]を表す。 y
U+10F77 𐽷 OLD UYGHUR LETTER KAPH 𐽷‍ ‍𐽷‍ ‍𐽷 子音[k]を表す。 k
U+10F78 𐽸 OLD UYGHUR LETTER LAMEDH 𐽸‍ ‍𐽸‍ ‍𐽸 子音[l]を表す。 l
U+10F79 𐽹 OLD UYGHUR LETTER MEM 𐽹‍ ‍𐽹‍ ‍𐽹 子音[m]を表す。 m
U+10F7A 𐽺 OLD UYGHUR LETTER NUN 𐽺‍ ‍𐽺‍ ‍𐽺 子音[n]を表す。 n
U+10F7B 𐽻 OLD UYGHUR LETTER SAMEKH 𐽻‍ ‍𐽻‍ ‍𐽻 子音[s]を表す。 s
U+10F7C 𐽼 OLD UYGHUR LETTER PE 𐽼‍ ‍𐽼‍ ‍𐽼 子音[p]を表す。 p
U+10F7D 𐽽 OLD UYGHUR LETTER SADHE 𐽽‍ ‍𐽽‍ ‍𐽽 子音[sˤ]を表す。
U+10F7E 𐽾 OLD UYGHUR LETTER RESH 𐽾‍ ‍𐽾‍ ‍𐽾 子音[r]を表す。 r
U+10F7F 𐽿 OLD UYGHUR LETTER SHIN 𐽿‍ ‍𐽿‍ ‍𐽿 子音[ʃ]を表す。 š
U+10F80 𐾀 OLD UYGHUR LETTER TAW 𐾀‍ ‍𐾀‍ ‍𐾀 子音[t]を表す。 t
U+10F81 𐾁 OLD UYGHUR LETTER LESH 𐾁‍ ‍𐾁‍ ‍𐾁 子音[l]を表す。 l
結合記号
U+10F82 𐾂 OLD UYGHUR COMBINING DOT ABOVE
U+10F83 𐾃 OLD UYGHUR COMBINING DOT BELOW 特定の書体において形状が類似する文字を区別したり、書体中に固有の文字が存在しない音を示すために用いられる[1] ̣
U+10F84 𐾄 OLD UYGHUR COMBINING TWO DOTS ABOVE
U+10F85 𐾅 OLD UYGHUR COMBINING TWO DOTS BELOW 特定の書体において形状が類似する文字を区別したり、書体中に固有の文字が存在しない音を示すために用いられる[1] ̤
約物
U+10F86 𐾆 OLD UYGHUR PUNCTUATION BAR 短いセグメントを区切る句読点[1]
U+10F87 𐾇 OLD UYGHUR PUNCTUATION TWO BARS 長いセクションを区切る句読点[1]

コンマ(,)やセミコロン(;)としてふるまうこともある[1]

U+10F88 𐾈 OLD UYGHUR PUNCTUATION TWO DOTS テキストの大部分の終了を表す[1]
U+10F89 𐾉 OLD UYGHUR PUNCTUATION FOUR DOTS セクションの終了またはテキストの終了を表す[1]

小分類

このブロックの小分類は「字母」(Letters)、「結合記号」(Combining signs)、「約物」(Punctuation)の3つとなっている[3]

字母(Letters

この小分類には古ウイグル文字のうち、基本的な字母が収録されている。

結合記号(Combining signs

この小分類には古ウイグル文字のうち、他の字母に結合する、文字幅を持たない結合記号ダイアクリティカルマーク)が収録されている。

約物(Punctuation

この小分類には古ウイグル文字で用いられる句読点などの約物類が収録されている。

文字コード

古ウイグル文字(Old Uyghur)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+10F7x 𐽰 𐽱 𐽲 𐽳 𐽴 𐽵 𐽶 𐽷 𐽸 𐽹 𐽺 𐽻 𐽼 𐽽 𐽾 𐽿
U+10F8x 𐾀 𐾁 𐾂 𐾃 𐾄 𐾅 𐾆 𐾇 𐾈 𐾉
U+10F9x
U+10FAx
注釈
1.^バージョン16.0時点


履歴

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン コードポイント[a] 文字数 L2 ID ドキュメント
14.0 U+10F70..10F89 26 L2/18-126 Anshuman Pandey (30 April 2018), Preliminary proposal to encode Old Uyghur (英語)
L2/18-333 Anshuman Pandey (30 November 2018), Proposal to encode Old Uyghur in Unicode (replaces L2/18-126) (英語)
L2/18-335 Dai Matsui (3 December 2018), Comments on the preliminary proposal to encode Old Uyghur in Unicode (L2/18-126) (英語)
L2/19-016 Anshuman Pandey (11 January 2019), Revised proposal to encode Old Uyghur (replaces L2/18-126) (英語)
L2/20-003 Anshuman Pandey (24 February 2020), Revised proposal to encode Old Uyghur (replaces L2/19-016) (英語)
L2/20-191 Anshuman Pandey (22 December 2020), Final proposal to encode Old Uyghur (英語)
L2/20-199 Nicholas Kontovas (30 July 2020), Endorsement of the Old Uyghur encoding proposal L2/20-191 (英語)
  1. ^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k Anshuman Pandey (2020年2月24日). “Revised proposal to encode Old Uyghur (replaces L2/19-016)” (英語). Unicode. 2025年5月27日閲覧。
  2. ^ Roadmap to the SMP”. www.unicode.org. 2025年5月27日閲覧。
  3. ^ "The Unicode Standard, Version 15.1 - U10F70.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年5月27日閲覧

関連項目




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