位相アーベル群における総和
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 01:28 UTC 版)
任意の集合 I と位相アーベル群 X に対して、I で添字付けられた X の元の族 a: I → X を考える。F を I の有限部分集合全体の成す部分集合族とすると、F は集合の包含関係に関する半順序集合として、交わりと結びをもつ有向集合となることに注意する。このとき、族 a の和 S は極限 S = ∑ i ∈ I a i = lim { ∑ i ∈ A a i | A ∈ F } {\displaystyle S=\sum _{i\in I}a_{i}=\lim {\Big \{}\sum _{i\in A}a_{i}\,{\big |}A\in \mathbf {F} {\Bigr \}}} として定義される。このとき、和が有限確定ならば族 a は無条件総和可能 (英: unconditionally summable) であるという。「和 S が有限部分和の極限である」というのは、X における 0 の任意の近傍 V に対して I の有限部分集合 A0 をうまく選べば S − ∑ i ∈ A a i ∈ V ( ∀ A ⊃ A 0 ) {\displaystyle S-\sum _{i\in A}a_{i}\in V\quad (\forall A\supset A_{0})} となるようにできることをいう。F は全順序集合ではないから、これは「部分和の数列の極限」というのとは異なり、有向点族(ネット)の極限と考えなければならない。 位相アーベル群 X における単位元 0 の任意の近傍 W に対し、V − V ⊂ W を満たすより小さな近傍 V が存在する。このことから、無条件総和可能族 (ai)i∈I の有限部分和の全体がコーシーネットを成すことが従う。すなわち、0 の任意の近傍 W に対し、I の有限部分集合 A0 が存在して、 ∑ i ∈ A 1 a i − ∑ i ∈ A 2 a i ∈ W , ( ∀ A 1 , ∀ A 2 ⊃ A 0 ) {\displaystyle \sum _{i\in A_{1}}a_{i}-\sum _{i\in A_{2}}a_{i}\in W,\quad (\forall A_{1},\forall A_{2}\supset A_{0})} を満たす。位相アーベル群 X が完備である場合には、族 a が X において無条件総和可能であることと、後述する「コーシーネット条件」を満たすことが同値になる。また、X が完備で (ai)i∈I が X において無条件総和可能ならば、I の任意の部分集合 J に対して対応する部分族 (aj)j∈J もまた無条件総和可能である。 非負実数の族の(先の定義の意味での、値として無限大を許す)和の場合、それが有限ならば、それは位相アーベル群 X として実数全体の成す加法群 R をとったときの、ここでいう意味での和と一致する。 X の元の族 a が無条件総和可能ならば、X の単位元 0 の任意の近傍 W に対して I の有限部分集合 A0 が存在して、ai ∈ W が A0 に属さないすべての i について成り立つようにすることができる。ゆえに、X が第一可算公理を満たすならば、ai ≠ 0 となるような添字 i ∈ I 全体の成す集合は可算であることが従う。これは一般の位相アーベル群においては必ずしも成り立たない(後述)。
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