九品往生に基づく印相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/23 13:37 UTC 版)
『観無量寿経』に説く九品往生(くほんおうじょう)の思想として、極楽往生の仕方には、信仰の篤い者から極悪人まで9通りの段階があるとされる。「上品上生」(じょうぼんじょうしょう)から始まって「上品中生」「上品下生」「中品上生」「中品中生」「中品下生」「下品上生」「下品中生」「下品下生」に至る。 阿弥陀如来像の結ぶ印相を9つに分類し、この九品往生と関連づける考え方が九品印であるが、『観無量寿経』には阿弥陀の印相については書かれていない。また浄瑠璃寺(平安時代末期創建)に現存する九体阿弥陀仏は、中尊が来迎印、残り脇仏8体はすべて定印であり、9種類の印相ではない。この点から古くは印相を違えて阿弥陀像を造立するという意識はなく、印相における形式の相違も重視されていなかったとの見方や、江戸時代の『仏像図彙(ぶつぞうずい)』が九品印が最初に図示されたものとする考えも存在する。そのため特に江戸時代より前に作られた阿弥陀像に対して印相だけで単純に「上品上生」などと九品往生をあてはめるのは、逆にその仏像の表すものを見誤る危険性もあり、注意すべきである。 東京都世田谷区の九品仏浄真寺(通称九品仏)には9体の阿弥陀如来像が安置され、それぞれが異なった9通りの印相を示している。浄真寺の九品仏の場合、阿弥陀如来の印相の内、定印を「上生印」、説法印を「中生印」、来迎印を「下生印」とし、親指と人差し指(中指、薬指)を接するものをそれぞれ「上品」「中品」「下品」に充てる。
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