ヤスパース哲学全体における位置づけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 14:32 UTC 版)
「枢軸時代」の記事における「ヤスパース哲学全体における位置づけ」の解説
ヤスパースによれば、歴史意識とは、本来は2つの対立する態度を含んだ緊張状態にあるものとして把握されている。つまり、われわれは歴史をひとつの全体として客体視し、それに対して向き合う対象として歴史をとらえる一方、われわれは歴史のなかの存在として主体的に自分自身が直接かかわりあう現在としてとらえる。われわれ自身のなかで、この2つの態度はたえず対立しあうが、この緊張関係が失われてしまうと、歴史意識もゆるんでしまい、その場合には歴史とはわれわれにとってどうでもよい単に空疎な知識の寄せ集めになってしまうか、さもなくば、完全に忘却の彼方に置き忘れられてしまう。理性的態度のもとで実存的に生きることを主張したヤスパースは、こうした緊張関係のもとでこそ自己本来の歴史性を自覚することが可能だと説く。 ヤスパースは、現代という時代は枢軸時代末期に類似しているとし、そこにおいて世界秩序への途上における危険を指摘して、「今日広く世界に行われている三つの傾向」として「社会主義」、「世界の統一」、「信仰」の3つを掲げ、その考察を「第2部 現在と未来 / 第3章 未来の問題」にあてている。そのなかで社会主義は、「公正な集団組織化」の問題であり、世界の統一(世界秩序)は『歴史の起原と目標』刊行当時、新生の国際連合を軸に模索されているものであるが、両者はしかし、ともに人間にとっては外的な問題だとしている。そして、ヤスパースは「問題は信仰だ」と主張し、みずからの哲学を展開し、そのなかでニヒリズムからの脱却を提唱しているのである。
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