ミヤマササガヤ属とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ミヤマササガヤ属の意味・解説 

ミヤマササガヤ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/06 01:43 UTC 版)

ミヤマササガヤ属
ミヤマササガヤ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: イネ目 Poales
: イネ科 Poaceae
亜科 : キビ亜科 Poaceae
: ヒメアブラススキ連 Andropogoneae
: ミヤマササガヤ属 Leptatherum
学名
Leptatherum
Nees 1841.
和名
ミヤマササガヤ属

ミヤマササガヤ属(ミヤマササガヤぞく、学名Leptatherum)は、イネ科植物の1群。小柄な草で茎の先端から小穂の並ぶ枝を小数出す。以前はアシボソ属に含まれていたものである。

特徴

小型の1年生[1]ないし多年生[2]草本[3]は基部側で這って伸び、先端側は斜めに立つ。には長い葉鞘があり、葉身は披針形で扁平、先端は鋭く尖る形になる。葉身は明るい緑色をしており、脈は白くなっている。また葉舌はない。

花序は総状で茎の先端に小数の枝を放射状に出す。小穂は2個が一組になっており、花序の軸から出る柄の先に1つ、その柄の基部に1つ、ほぼ同型のものが配置する。基部の小穂は無柄か、または短い柄がある。花軸の節部分には毛がある。小穂は2個の小花を含むが第1小花は無性で護頴のみからなり、第2小花が両性で結実する。包頴は草質から膜質で先端は尖っている。第1包頴は背面に小さな溝があり、4本の脈を持つ。第2包頴には竜骨があり、3本の脈がある。第2小花の護頴は膜質で線形、小さな溝があり、先端には長い毛状の芒がある。芒は巻きひげ状にねじれるが膝折れはしない。鱗片は2個、倒円錐形で襞があり、先端は切り落とされた形となっている。雄しべは2個あり[4]、花糸は細くて毛状となっている。雌蕊では花柱は細くて基部で融合しており、柱頭は長く柔らかな毛を持つ。

種と分布

アジア温帯域に3亜種があり、3種共に日本に分布がある[5]

分類・類似の群など

本属はイネ科の中でキビ亜科ヒメアブラススキ連に属するものとして従来はアシボソ属 Microstegium に含められていたものであるが、下記のように分子系統の検討から別属とされるようになった[6]。形態的には本属のものは小穂の並ぶ花序の枝の軸が節に毛がある以外は無毛であるのに対してアシボソ属では縁に毛が並ぶこと、またアシボソ属では雄しべが3本であるのに対して本属では2本である点などで区別できる[7]。もっとも見かけでは本属のものは花序枝が細くて繊細なので一目で見分けられる。

分子系統の情報によると本属はモロコシ属 Sorghum と姉妹群を成し、この2属の姉妹群になるのはメガルカヤ属 Themeda とのことである[8]

外見的には細い茎が基部では這い、先端では斜めに立ち、葉はあまり細長くないイネ科の草には他にも色々あり、例えばチゴザサコブナグサチヂミザサメヒシバなどが挙げられる。いずれも普通種なので道ばたで見ることも多く、穂が出るまでは判別が難しいこともあるが、穂が出れば大抵は簡単に見分けられる。穂まで似ているのはメヒシバ属 Digitaria のもので、茎の先から伸びる花茎の先端に放射状に小数の花序枝が出て、小穂は全て花序枝に密着しており、更に小穂は同型のものが2個ずつ組になってつくという特徴まで共通している。ただしメヒシバ属のものでは花序枝が丈夫で真っ直ぐに伸びているのに対して本属のものは繊細で柔らかく、またメヒシバ属のものは小穂に芒が無いのに対して本属のものは細長くくねった芒があるので混同するものではない。

経緯

本属はNees によって1841年に立てられたもので、タイプ種は L. royleanum であったが、この種はアシボソ属の M. nudum と同じものとされている[9]。そのために彼以降の研究者は本属をアシボソ属の同物異名として扱うことが多かった。ただしTzvelevは1966年に本属の名をアシボソ属の中の節として扱うことを提唱し、その特徴として総状花序が細くて無毛であること、包頴の先端が急に狭くなっていること、第1包頴の背面が凹んでいること、雄しべの数が異なることなどを挙げている。この時点でこの節に含められたのはミヤマササガヤとササガヤの2つで、ただしこの時には後者は前者の亜種とされていた。その後メンテンササガヤが別属で記載され、後にアシボソ属に移され、この節にはこの3種が含まれることになった。この節と同属の他のものとが系統を異にするものではないかと言われ始めたのは分子系統の研究がなされるようになった時のことで、Spangler が1999年、2000年に葉緑体のDNAによってヒメアブラススキ連の系統を解析した際に両群のタイプ種であるミヤマササガヤとアシボソ単系統をなさず、異なる系統に位置することを示してからである。その後の核DNAなどを使った解析でも同様な結果が出て、C. -H. Chien et al.(2009)でこれらを別属として扱い、それが認められた形である。

下位分類

上記のように現時点で本属には3種が含まれている。いずれも日本に分布があるので、それも記しておく。

  • Leptatherum ミヤマササガヤ属

出典

  1. ^ 長田(1993) p.696-698.
  2. ^ 初島(1975) p.87.
  3. ^ 以下、主として大橋他編(2016) p.87.
  4. ^ 大橋他編(2016) p.87.には3個となっているが同 p.27. の検索表では2個となっている。他の文献でも2個となっているのでこの記述が間違いと思われるが、類似の属との重要な区別点になっている特徴で間違いがあるのは大変困る。
  5. ^ 大橋他編(2016) p.88.
  6. ^ C. -H. Chien et al.(2009).
  7. ^ 大橋他編(2016) p.27.
  8. ^ C. -H. Chien et al.(2009).
  9. ^ 以下もC. -H. Chien et al.(2009).

参考文献

  • 大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科~イラクサ科』、(2016)、平凡社
  • 長田武正、『日本イネ科植物図譜(増補版)』、(1993)、(平凡社)
  • 初島住彦、『琉球植物誌』追加・訂正版、(1975)、 沖縄生物教育研究会
  • C. -H. Chien et al. 2009. Segregation of Leptatherum from Microstegium (Andropogoneae,Poaceae) confirmed by Internal Transcribed Spacer DNAsequences. Blumea 54, : 175–180 www.ingentaconnect.com/content/nhn/blumea, doi:10.3767/000651909X476120



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  ミヤマササガヤ属のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

ミヤマササガヤ属のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ミヤマササガヤ属のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのミヤマササガヤ属 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS