ヘンゼル持ち上げ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 16:16 UTC 版)
補題を使って、多項式 f の法pkでの根 r を法pk+1での新しい根 s にr ≡ s mod pkとなるように持ち上げることができる。(m=1 と取る。数学的帰納法により大きい m はしたがう)。 また、法pk+1での根は法pkでの根でもあるので、法pk+1での根はすべて法pkでの根の持ち上げである。 持ち上げた根 s は法 pでrと合同なので、新しい根も f ′ ( s ) ≡ f ′ ( r ) ≢ 0 mod p {\displaystyle f'(s)\equiv f'(r)\not \equiv 0{\bmod {p}}} を満たす。 したがって、最初の根rkが f ′ ( r k ) ≢ 0 mod p {\displaystyle f'(r_{k})\not \equiv 0{\bmod {p}}} を満たせば持ち上げの操作は繰り返すことができ、 f ( x ) ≡ 0 mod p k {\displaystyle f(x)\equiv 0{\bmod {p}}^{k}} の解rkからはじめて、p の高次冪に対して同じ合同式を満たす解の数列rk+1, rk+2, ...を作れる。 このことはまた、f の法pkでの根が全て単根であれば、fの法pkでの根の数は法pk+1, pk+2, ...での根の数と同じであることを示している。 r が法pで単根になっていないとき、このプロセスでは何が起きているのであろうか? これを見るために、次の状況 f ( r ) ≡ 0 mod p k and f ′ ( r ) ≡ 0 mod p {\displaystyle f(r)\equiv 0{\bmod {p}}^{k}\quad {\text{and}}\quad f'(r)\equiv 0{\bmod {p}}} を考えよう。このとき、 s ≡ r mod p k {\displaystyle s\equiv r{\bmod {p}}^{k}} は f ( s ) ≡ f ( r ) mod p k + 1 {\displaystyle f(s)\equiv f(r){\bmod {p}}^{k+1}} を意味する。つまり任意の整数 t に対して f ( r + t p k ) ≡ f ( r ) mod p k + 1 {\displaystyle f(r+tp^{k})\equiv f(r){\bmod {p}}^{k+1}} が成り立つ。それゆえ次の2つの場合がある。 f ( r ) ≢ 0 mod p k + 1 {\displaystyle f(r)\not \equiv 0{\bmod {p}}^{k+1}} なら r の法 pk+1 への f(x) の根の持ち上げは存在しない。 f ( r ) ≡ 0 mod p k + 1 {\displaystyle f(r)\equiv 0{\bmod {p}}^{k+1}} なら r の任意の法 pk+1 への持ち上げは f(x) の法 pk+1 での根である。 例:p = 2 として両方のケースを見てみよう。 f ( x ) = x 2 + 1 {\displaystyle f(x)=x^{2}+1} とし、r = 1 とする。このとき、 f ( 1 ) ≡ 0 mod 2 {\displaystyle f(1)\equiv 0{\bmod {2}}} で f ′ ( 1 ) ≡ 0 mod 2 {\displaystyle f'(1)\equiv 0{\bmod {2}}} である。 f ( 1 ) ≢ 0 mod 4 {\displaystyle f(1)\not \equiv 0{\bmod {4}}} なので、1の法4への持ち上げでf(x) の法4での根になるものは存在しない。 g ( x ) = x 2 − 17 {\displaystyle g(x)=x^{2}-17} 、r = 1 とする。すると g ( 1 ) ≡ 0 mod 2 {\displaystyle g(1)\equiv 0{\bmod {2}}} かつ g ′ ( 1 ) ≡ 0 mod 2 {\displaystyle g'(1)\equiv 0{\bmod {2}}} である。また、 g ( 1 ) ≡ 0 mod 4 {\displaystyle g(1)\equiv 0{\bmod {4}}} であるので、この解を法4へ持ち上げることができ、2つの持ち上げ(1と3)はともに解である。これらの解に対しても微分は法2でやはり0であるので、アプリオリにはこれらを法8に持ち上げられるかどうかは分からない。しかし実際にはg(1) も g(3) も法8で0と合同であるので持ち上げることができる。法8では1, 3, 5, 7が解である。これらの中でg(1) と g(7) だけが法16で0なので、1と7だけが法16に持ち上げることができ、それらは1, 7, 9, 15である。これらの中では7と9だけがg(x) = 0 mod 32なので、同様に法32での解7, 9, 23, 25が得られる。任意の整数 k ≥ 3 に対して法2でのg(x)の根1の法2kの根への持ち上げは4つ存在することがわかる。
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