ニホンザル・スキトオリメ (オペラ)とは? わかりやすく解説

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ニホンザル・スキトオリメ (オペラ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/10 13:31 UTC 版)

ニホンザル・スキトオリメ』は、日本の作曲家間宮芳生木島始の同名の童話を題材として作曲した、日本語のオペラ。プロローグとエピローグを持つ全1場、8景からなる。演奏時間約80分。

作曲の経緯

木島始による大人のための童話『ニホンザル・スキトオリメ』は1957年に発表された作品で[1]、その後、NHKの委嘱を受けた間宮芳生の依頼でオペラ台本に書き直された[2]。台本では原作にない語り部として「木」と、その聞き手として「男」が加えられた。間宮は1964年のほぼ1年間をこのオペラの作曲に費やしている[3]1965年に完成したこのオペラはNHKで同年放送初演され、芸術祭奨励賞を受賞した[4]。翌1966年に舞台初演された[5]

構成とあらすじ

  • プロローグ 年輪の秘密:クスノキの木目の秘密を知ろうとする男に、木が物語始める
  • 第1景 森の肖像画コンテスト:猿の国では女王の肖像画コンテストが行われ、スキトオリメが1等賞をとる
  • 第2景 サルたちの姿とたましい:スキトオリメは旅に出て、猿であって猿でない人間を知る
  • 第3景 美しい女王ザルの望み:女王ザルは自分の美しさを永遠に伝える画を望む
  • 第4景 画カキザルの投獄:スキトオリメは会心の画を描くが、女王に木の洞穴へ投獄されてしまう
  • 第5景 奇怪な絵 ざわめく森:犬たちの攻撃に備え、女王はソノトオリメの描いた肖像画を猿たちに持たせる
  • 第6景 ホラアナの爪あと:スキトオリメは木の洞穴の壁に猿の真実の姿を描きつくしていく
  • 第7景 末期(まつご)の耳:死期の迫った女王ザルに、オトモザルは女王の美しさは永遠だと安心させる
  • 第8景 炎あれくるう:犬たちはなついた人間に森をすっかり焼き払わせる
  • エピローグ 芽生えの肌ざわり:男にはスキトオリメの描いた画が見えてくる

登場人物

  • 女王ザル:猿の国の女王
  • オトモザル:女王の従僕
  • スキトオリメ:真実を描きつくそうとする画カキザル
  • ソノトオリメ:なんでもその通りに描く画カキザル
  • 男:木の語る話の聞き手
  • 木:自らの洞穴に画が描かれているクスノキで、物語の語り部
  • サルたち(合唱):猿の国の民衆

楽器編成

標準的な三管編成のオーケストラに、オルガンバグパイプリュートリコーダー(ブロック・フレーテ)が加わる。これについて間宮は次のように述べている。「人物たちの具体的なイメージや、人物同志の関係の展開を音の中により具体的に定着するためにも、また猿たちの葛藤の場と、楠の証言の場との対比のためにも、表現手段と方法は、景ごとに多岐にわたることになった。たとえば、バグパイプや、ルネッサンス様式のアンサンブルを通常のオーケストラと対比させて扱ったり、戦争の場面にパイプオルガンを導入したりした」[6][7]。「古楽器のアンサンブルが必要に思われたのは、この物語が中世の十字軍の闘い、あるいはヨーロッパの宗教戦争のようなイメージを抱かせるからだ」[8]

初演・再演

  • 放送初演:1965年11月22日 NHK第1、第2のステレオ放送 指揮:若杉弘、管弦楽:NHK交響楽団、女王ザル(S):滝沢三重子、オトモザル(Bar):友竹正則、絵かきザル・スキトオリメ(T):金谷良三、ソノトオリメ(Bar):中村義春、木(Bar):平野忠彦、男:日下武史、合唱:東京混声合唱団[9]。 (放送初演の録音が2019年6月29日と7月6日のNHKFM「クラシックの迷宮」で2回に分けて放送された。その記録では、管弦楽が「東京フィルハーモニー交響楽団とプロコルデ室内管弦楽団」、となっている[10]
  • 舞台初演:1966年3月14日 東京文化会館 第6回NHK音楽祭 創作歌劇の夕べ 指揮:若杉弘、管弦楽:NHK交響楽団、女王ザル(S):滝沢三重子、オトモザル(Bar):友竹正則、絵かきザル・スキトオリメ(T):金谷良三、ソノトオリメ(Bar):中村義春、木(Bar):平野忠彦、男:生井健夫、サルたち:東京混声合唱団/劇団青芸[5]
  • 再演:2019年1月27日 すみだトリフォニーホール オーケストラ・ニッポニカ第34回演奏会 間宮芳生90歳記念 指揮:野平一郎、管弦楽:オーケストラ・ニッポニカ、女王ザル(S):田崎尚美、オトモザル(Bar):原田圭、絵かきザル・スキトオリメ(T):大槻孝志、ソノトオリメ(Bar):山下浩司、木(Bar):北川辰彦、男:根本泰彦、サルたち:ヴォーカル・コンソート東京/コール・ジューン[11] [12] (この公演は第17回佐川吉男音楽賞を受賞した[13])

脚注

  1. ^ 木島始『ニホンザル・スキトオリメ』新日本文学、12巻12号、1957年12月、pp.61-67。
  2. ^ 木島始作『オペラ台本 ニホンザル・スキトオリメ』20世紀文学 4:特集=ドラマ、1966年4月、pp.4‐18。
  3. ^ 布施芳一編『間宮芳生:年譜・作品表』サントリー音楽財団コンサート「作曲家の個展'87 間宮芳生」、サントリー音楽財団、1987、p.25。
  4. ^ 昭和40年度(第20回)芸術祭賞一覧(PDF)、文化庁芸術祭賞受賞一覧
  5. ^ a b 「第6回NHK音楽祭 創作歌劇の夕べ」プログラム、NHK交響楽団、1966.3.14。
  6. ^ 間宮芳生『童話の証言:オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」作曲によせて』20世紀文学 4:特集=ドラマ、1966年4月、p.20
  7. ^ 間宮芳生『童話の証言:オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」作曲によせて』(オーケストラ・ニッポニカ オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」 間宮芳生メッセージ) 2020年6月11日閲覧
  8. ^ 間宮芳生『現代音楽の冒険』岩波書店、1990、p.118
  9. ^ 木島始作『オペラ台本 ニホンザル・スキトオリメ』20世紀文学 4:特集=ドラマ、1966年4月、p.18
  10. ^ クラシックの迷宮 ▽間宮芳生 卒寿(90歳)を迎えて~NHKのアーカイブスから~2019年6月29日 2019年7月7日閲覧。
  11. ^ Orchestra Nipponica @ Sumida Triphony Hall (Japan Times) 2018年12月5日閲覧
  12. ^ アーツカウンシル東京 平成30年度東京芸術文化創造発信助成【単年助成プログラム】第2期 対象事業決定のお知らせ (PDF) 2018年12月20日閲覧
  13. ^ 関西クラシック音楽情報 2020年9月27日閲覧。

参考文献

外部リンク




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