ティピティーナとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ティピティーナの意味・解説 

ティピティーナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/17 06:35 UTC 版)

「ティピティーナ」
プロフェッサー・ロングヘアシングル
B面 In The Night
リリース
規格 シングル
録音
ジャンル ニューオーリンズ・ブルース
時間
レーベル Atlantic 1020
作詞・作曲 [3]
プロフェッサー・ロングヘア シングル 年表
Rockin' With Fes
(1952年)
Tipitina
(1954年)
No Buts - No Maybes
(1957年)
ミュージックビデオ
"Tipitina" - YouTube
テンプレートを表示

ティピティーナ」(Tipitina)はニューオーリンズのピアニスト、シンガーのプロフェッサー・ロングヘアが作詞作曲し、最初にレコーディングした楽曲である。彼のオリジナル・バージョンは1953年にレコーディングされ、翌1954年2月、アトランティック・レコードによってリリースされた。オリジナル盤の作曲者クレジットにはプロフェッサー・ロングヘアの法的な名前である「ロイ・バード」とともにレコーディング・エンジニアの「コズィモ・マタッサ」の名前が共作者として記載されているものの、彼が実際に曲作りに関与したのかは定かではない[4]

この曲は多くの人にカバーされ、ニューオーリンズ音楽のスタンダード曲と考えられている。ニューオーリンズのライブハウス、ティピティーナスはこの曲がその名前の由来である[5]。また、ティピティーナス財団も同様にこの曲から名前が付けられた。

概要

プロフェッサー・ロングヘアの名で知られるピアニストのヘンリー・ローランド・"ロイ"・バードは、傑出したニューオーリンズのミュージシャンであった。彼はブルースラグタイムザディコルンバマンボカリプソといった音楽を取り入れたシンコペーション・リズムの音楽を演奏した。彼の歌声の特徴はしゃがれ声であると言われる。

様々なレーベルを渡り歩いた彼のキャリアは1949年にスター・タレント・レーベルからリリースされた「Mardi Gras In New Orleans」と「She's Got No Hair」によって始まった。彼のこの時のグループは「プロフェッサー・ロングヘア&ザ・シャッフリング・ハンガリアンズ」とクレジットされた。その1年後、ロイ・バード&ヒズ・ブルース・ジャンパーズ名義でマーキュリー・レコードに「She's Got No Hair」を「Bald Head」のタイトルで改めてレコーディング。これが彼の唯一の全米R&Bヒット曲となっている(最高位5位)[6]

1953年、アトランティックに「ティピティーナ」をレコーディングし[7]、これが彼の代表曲となっている[8]

詳細

曲の旋律は、チャンピオン・ジャック・デュプリーの「Junker's Blues」から引用されている[9]ローリング・ストーン誌は、この曲はルンバ・スタイルの楽曲で、典型的なニューオーリンズのスタンダートとして定着したとしている[10]。ロングヘアを1992年に殿堂入りさせたロックの殿堂は「ティピティーナの意味を持たない歌いまわしと細かいリズムを刻むピアノの左手は、いずれもニューオーリンズの音楽の象徴的で不可欠な存在だ」と評している[7]

アラン・トゥーサンはこの曲を学んだ自身の体験について成長過程で通過する儀式のようなものと表現している[11]

ニューオーリンズではリリースされた当初ヒットとなったが、全米では同様のヒットとなることはなかった[11][8]。1953年のプロフェッサー・ロングヘアのバージョン、並びに1972年のドクター・ジョンのバージョンは共に「Billboard Hot 100にチャート入りしなかった古典作品」と考えられている[12][13]

タイトルの由来

歌詞の題材であるティピティーナが何を意味するのかについてはわかっていない。地名、あるいは人名ではないかと言われている[11]。2020年のWWOZのピアノ・ナイトの放送の中で公開された ドクター・ジョンのインタビューによると、彼はティピティーナは鳥の種類あるいは名前と聞いたことがあるとのことだが、彼も以後そのような情報には再び接してはいないという。

ヒュー・ローリーは2011年にこの曲をカバーしているが、彼はその謎について次のようにコメントしている。「僕は知らない方がいいと思っているよ。その方が曲に神秘性と力が加わり、聴くことによって笑うことも泣くこともいっぺんにできるんだから」[11][注釈 1]

ロングヘア本人は、インタビューの中で、「ティピティーナという名前の火山が噴火したと聞き、この名前を付けた」と語ったことがあるが、このコメントも事実としては確認されていない内容である[14]

評価と反響

2011年、この曲はその文化的意義が認められ、全米録音資料登録簿に加えられた[15]。ロングヘアは、この曲でグラミーの殿堂賞を受賞している[16]

この曲はロックの殿堂が1994年に作成した「ロックを形作った偉大な500曲」の中に入っている[7]。この曲はまた、オーストラリアの音楽ジャーナリスト、トビー・クレスウェルの「1001曲:歴史上の偉大な楽曲とアーテイスト、背景にある物語と秘密」(2006年)、ブルース・ポラックの「ロックンロール・インデックス:ロックンロール時代の最も重要な7500曲」(2005年)のリストにも含まれている[8][17]

全米録音資料登録簿がこの曲に関して出した発表で以下のように述べられている。「ファッツ・ドミノヒューイ・"ピアノ"・スミスジェイムズ・ブッカー、ドクター・ジョン、アラン・トゥーサンらニューオーリンズのピアニストたちに刺激と影響を与えた音楽のアイデアと性質が特徴的に集約されている楽曲である」[15]。またクレスウェルは、「ティピティーナ」はニューオーリンズのリズムを輝かしいパッケージにまとめたとコメントしている[8]

プロフェッサー・ロングヘアによる演奏

オリジナル・シングル

プロフェッサー・ロングヘアのオリジナル・バージョンは1953年11月にニューオーリンズでレコーディングされた。「プロフェッサー・ロングヘア&ヒズ・ブルース・スカラーズ(Professor Longhair & His Blues Scholars)」名義だった[18][19]。ジョン・クロズビーの著書『Professor Longhair : a bio-discography』(1983年)によると、参加ミュージシャンは[19]

しかしながら、アトランティック・レコードのディスコグラフィーではベーシストはエドガー・ブランチャード(Edgar Blanchard)となっている[20]。「Blues Discography 1943 - 1970 Later Years (2nd Edition)」もベーシストはブランチャードとしており、同書ではさらにギタリストとしてウォルター・ネルソン(Walter Nelson)が参加しているとしている[2]。 このバージョンはSP盤のシングルとして1954年にリリースとなった[10]。このバージョンは、未発表別テイクも収録した1972年の『New Orleans Piano』を含むいくつかのアルバムに収録されている[18]。その他の収録アルバムとしては、『Martin Scorsese Presents the Blues: Piano Blues』(2003年)[21]、 『Doctors, Professors, Kings & Queens』(2004年)がある[22]

再演

プロフェッサー・ロングヘア自身、この曲を複数回レコーディングしている[10]

New Orleans Piano』収録(1972年、1953年にレコーディングされたバージョンの別テイク)[23]
Rock ‘n’ Roll Gumbo』(1974年)[24] - この1974年のバージョンは1985年にCDリリースのためにリミックスされた[25]。1987年の映画『The Big Easy』のサウンドトラックに使用されたのは、このリミックス・バージョンである[26]
House Party New Orleans Style: The Lost Sessions 1971–1972』収録(1987年、1972年録音の未発表音源)[27]

主なカバー・バージョン

[28]

アーティスト名 収録アルバム
1972年 ドクター・ジョン Dr. John's Gumbo
1990年 ワイルド・マグノリアス I'm Back … At Carnival Time!
2007年 ジョー・クラウン Old Friends
2008年 ミッチ・ウッズ Jukebox Drive
2008年 ジョン・クリアリー Mo Hippa[29]
2010年 有山岸(有山じゅんじ山岸潤史 そろそろおこか〜CARELESS LOVE〜[30]
2011年 ヒュー・ローリー Let Them Talk』(デビュー作)
2012年 チャーリー・ウッド Lush Life
2012年 グレン・デイヴィッド・アンドリューズ Live at Three Muses[31]
2013年 ニューオーリンズ・サスペクツ Caught Live at The Maple Leaf
2015年 ジェイムズ・ブッカー Live from Belle Vue[32]

大衆文化への広がり

脚注

出典

  1. ^ Professor Longhair - 78 RPM - Discography”. 45world. 2025年1月28日閲覧。
  2. ^ a b Fancourt, Les; McGrath, Bob (2012). Blues Discography 1943 - 1970 Later Years (2nd Edition). Eyeball Productions. p. 99 
  3. ^ Professor Longhair And His Blues Scholars – Tipitina”. Discogs. 2025年1月27日閲覧。
  4. ^ 78 RPM Record: Professor Longhair”. 45 Worlds. 2025年1月27日閲覧。
  5. ^ Berry, Jason (2022年4月28日). “New Orleans Legend Tipitina's Is Back—With Vintage Records” (英語). The Daily Beast. https://www.thedailybeast.com/new-orleans-legend-tipitinas-is-back-and-with-a-club-for-vintage-records 2025年1月27日閲覧。 
  6. ^ Joel Whitburn (1988). Top R&B Singles 1948-1988. Record Research Inc.. p. 70. ISBN 0-89820-069-5 
  7. ^ a b c Songs That Shaped Rock and Roll: Tipitina”. Rock and Roll Hall of Fame (2013年5月16日). 2025年1月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月27日閲覧。
  8. ^ a b c d Creswell, Toby (2006). 1001 Songs: The Great Songs of All Time and the Artists, Stories and Secrets Behind Them. Da Capo Press. pp. 548–49. ISBN 1-56025-915-9. https://www.amazon.com/gp/sitbv3/reader/104-6006527-1812717?ie=UTF8&p=S0O7&asin=1560259159 
  9. ^ Planer, Lindsay (2014年). “Professor Longhair: Tipitina”. Allmusic. 2014年1月11日閲覧。
  10. ^ a b c Tipitina”. Rolling Stone (2014年). 2012年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月11日閲覧。
  11. ^ a b c d Professor Longhair: Tipitina: Inside the National Recording Registry”. Studio 360. Public Radio International (PRI) (2012年1月20日). 2018年8月28日閲覧。
  12. ^ Whitburn, p. 764.
  13. ^ Whitburn, p. 286.
  14. ^ Per Oldaeus. ““Tipitina”--Professor Longhair (1953)”. Studio 360. Library of Congress. 2025年1月28日閲覧。
  15. ^ a b The National Recording Registry 2010”. Library of Congress. 2014年3月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月27日閲覧。
  16. ^ Massa, Dominic (2013年12月3日). “Louis Armstrong song inducted into Grammy Hall of Fame”. WWL-TV. 2014年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年1月13日閲覧。
  17. ^ Pollock, Bruce (2005). Rock Song Index: The 7500 Most Important Songs for the Rock and Roll Era (second ed.). Routledge. ISBN 0-415-97073-3 
  18. ^ a b Dahl, Bill (2014年). “Professor Longhair: New Orleans Piano”. Allmusic. 2014年1月11日閲覧。
  19. ^ a b Crosby, John (1983). Professor Longhair : a bio-discography : New Orleans r & b. John Crosby 
  20. ^ Ruppli, Michel (1979). Rust, Brian. ed. Atlantic Records: A Discography. 1. Greenwood Press. p. 42. ISBN 0-313-21171-X 
  21. ^ Martin Scorsese Presents The Blues: Piano Blues”. Amazon. 2014年5月1日閲覧。
  22. ^ Doctors, Professors, Kings & Queens: The Big Ol' Box of New Orleans [Box set]”. Amazon. 2014年5月1日閲覧。
  23. ^ Discogs Professor Longhair - New Orleans Piano
  24. ^ Discogs - Rock N Roll Gumbo
  25. ^ Discogs Professor Longhair - Rock N Roll Gumbo - Reissue
  26. ^ Discogs The Big Easy Soundtrack
  27. ^ Discogs Professor Longhair - House Party New Orleans Style
  28. ^ Tipitina”. SecondHandSongs. 2025年1月28日閲覧。
  29. ^ Jon Cleary & The Absolute Monster Gentlemen – Mo Hippa Live”. Discogs. 2025年1月28日閲覧。
  30. ^ そろそろおこか〜CARELESS LOVE〜 有山岸”. レコチョク. 2025年1月28日閲覧。
  31. ^ Live at Three Muses Glen David Andrews Band”. Bandcamp. 2025年1月28日閲覧。
  32. ^ Live from Belle Vue”. Amazon. 2018年6月1日閲覧。
  33. ^ The Man in the Morgue”. TV.com. 2014年5月1日閲覧。
  34. ^ Walker, Dave (2012年11月25日). “'Treme' explained: 'Tipitina'”. The Times-Picayune. NOLA.com. 2014年1月12日閲覧。
  35. ^ “IAJE What's Going On”. Jazz Education Journal (Manhattan, Kansas: International Association of Jazz Educators) 37 (5): 87. (2005年4月). ISSN 1540-2886. ProQuest 1370090. 
  36. ^ Make It Funky! (DVD) (英語). Culver City, California: Sony Pictures Home Entertainment. 2005. ISBN 9781404991583. OCLC 61207781. 11952。

注釈

  1. ^ ヒュー・ローリー – ティピティーナ(曲の背景に秘められた物語)も参照のこと

参考文献

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  ティピティーナのページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ティピティーナ」の関連用語

ティピティーナのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ティピティーナのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのティピティーナ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS