スミスの労働価値説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/15 03:56 UTC 版)
アダム・スミスは『国富論』で「労働こそは、すべての物にたいして支払われた最初の代価、本来の購買代金であった。世界のすべての富が最初に購買されたのは、金や銀によってではなく、労働によってである」と述べ、労働価値説を確立した。ただしスミスの見解には二つの観点が混在していた。彼は「あらゆる物の真の価格、すなわち、どんな物でも人がそれを獲得しようとするにあたって本当に費やすものは、それを獲得するための労苦と骨折りである」とし、商品の生産に投下された労働によって価値を規定した。これは投下労働価値説と呼ばれる。しかし他方において、商品の価値は「その商品でかれが購買または支配できる他人の労働の量に等しい」と述べ、支配労働価値説と呼ばれる観点も示した。 スミスにとっては、商品の価値が投下された労働によって決まるということと、商品の価値が労働の価値によって決まるということは、明瞭に区別されていなかった。そのため、彼は投下労働価値説が当てはまるのは「資本の蓄積と土地の占有にさきだつ初期未開の社会状態」だという見解を示した。労働生産物が労働者自身に帰属する場合、交換は各生産物に投下された労働の量に従って行われる。しかし資本家や地主が登場すると、労働者は賃金、資本家は利潤、地主は地代を得るようになる。商品の価格は賃金と利潤と地代によって構成されるようになる。このスミスの考え方は価値構成説と呼ばれる。
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